投信手数料?、一段と低下 個人の資産形成に追い風

6/16付け日本経済新聞の記事です。実は記事のタイトルはもっと長くて、「投信手数料、一段と低下 個人の資産形成に追い風 日本、初の0.1%割れ 米国、料率マイナス」と続きます。本当に最近は見出しが長すぎます。

投信手数料?

この記事の気になるところは、用語を正しく使わないことです。「投信手数料」って、なんでしょう。記事は投資信託の運用手数料のことを指して、投信手数料と呼んでいるようですが、普通こういう使い方はしないと思います。事実、記事の中では「運用手数料」という表現が使われていて、「投信手数料」という言葉は本文では一度も使われていません。

整理しておくと、投資信託を買い付ける際に販売会社(証券会社や銀行)に支払う手数料のことを「購入時手数料」といいます。販売する業者たちはこれを販売手数料などという言い方をすることが多いんですが、目論見書ではあくまで「購入時手数料」と書かれています。

一方で、運用会社に対して、投資信託の運用に対する報酬として、運用資産から間接的に支払われる費用のことを、運用管理費用(信託報酬)と言います。販売する業者たちは「信託報酬」という用語を多用しますかね。他にも、費用としては監査報酬だとか、信託財産留保額などありますが、ここでは触れません。

話を戻しますが、記事が言うところの運用手数料とは、おそらくこの運用管理費用(信託報酬)を指しているのだと思われます。「運用期間が長期になればなるほど運用手数料が収益に与える影響は大きくなる」と説明していますので、おそらくそういうことでしょう。

販売・運用手数料

記事は一貫して信託報酬の低下を伝えているのですが、最後の段落でなぜか「販売・運用手数料」なる言葉が使われています。記事では「日本でも投信の販売・運用手数料に収益を頼ってきた準大手・中堅証券が19年3月期決算に相次ぎ赤字・減益になるなど逆風が吹いている」と展開し、最後には「日本ではこれまで証券会社や銀行は、手数料が高めの投信を積極的に販売する傾向があった」という批判になっていきます。

最後は、いつのまにか購入時手数料が高いという話になっているわけですね。海外で信託報酬の低下が進んでいる、という記事が日本の購入時手数料(販売手数料)が高すぎるという話に・・・。おまけに信託報酬は0.1%のレベルで伝えておきながら、2%、3%の購入時手数料(販売手数料)の話に結び付けて、、、、いったい何を伝えたかったんでしょう。

三井住友アセットマネジメント 三菱UFJ国際投信 直販に

2/5 日本経済新聞に「投信、個人に直接販売 若者開拓へ購入手数料ゼロ」という記事が掲載されました。三井住友アセットマネジメント、三菱UFJ国際投信が自社が運用するテーマ型投信を手数料ゼロで顧客に直接販売するという内容です。

運用会社による顧客への直接販売(直販)

これまでネットを通じて投信の直販を行うのは独立系の運用会社ぐらい。もともと銀行や証券会社の子会社として設立され、その銀行や証券会社に投資信託商品を提供してきた銀行系、証券系運用会社は直販に踏み切れませんでした。

銀行や証券会社の営業力で販売してきてもらった(残高を積み上げてもらった)経緯がありますので、彼らの営業体に脅威となるノーロード投信(販売手数料が無料の投信)を直販することは避けたかったわけです。忖度してきたんですね。

三井住友アセットマネジメントは銀行系では珍しく、4年前から直販を行ってきた運用会社です。ただし、三井住友銀行やSMBC日興証券が販売している主力商品の中には三井住友アセットマネジメントの商品はそれほどないようです。だからこそ踏み切れたのかもしれません。

一方の三菱UFJ国際投信はインデックス型を中心に直販を開始するようです。インデックス型投信については、銀行も証券会社もネットチャネルで販売手数料ゼロの商品扱ってますので、今のところそれほどニュース性はなさそうです。

証券系投資信託運用会社が追随するか

「投資信託の保有期間が短すぎる」、「毎月分配型投信はいかがなものか」、「販売手数料が高すぎる」。ここ数年金融庁が求めてきた投信に関する改革の主なものです。顧客本位の業務運営ですね。三井住友アセットマネジメントが直販に関して小さいながらも風穴を開けていったとして、問題は今後証券系運用会社がこれに追随するかどうかです。

証券会社が対面で販売して3%の手数料をいただく。一方で類似した投信を、系列運用会社がネットで手数料無料で直販する。たぶん、なさそうな気がします。それでも、ネット直販は若年層向けのチャネルとして、証券対面はシニア富裕層向けという棲み分けはあるかもしれません。

若年層は自身で調べてネットで、、、手数料なし。シニア富裕層は証券会社営業員が投資環境やら商品選定までを総合的にサポートしていくので、手数料はいただきます。という棲み分けですね。