堺化学工業 役員報酬の減額

5/11の湯本工場の爆発・火災事故を受け、6/11には亜鉛末事業からの撤退を表明していた堺化学。6/25には、「役員報酬の減額に関するお知らせ」を公表しました。前期決算において、特別損失として固定資産の減損損失7,002百万円を計上。また湯本工場において爆発・火災事故を発生させことに対するものだそうです。

役員報酬の減額

代表取締役社長:月額固定報酬の 20.0%
専務取締役:月額固定報酬の 17.5%
常務取締役:月額固定報酬の 15.0%
取締役:月額固定報酬の 10.0%(社外取締役を除く)

報酬の減額についてはこんな感じです。不正行為や不法行為があったわけではありませんので、こんなもんかなと思いました。ところが、報酬の減額期間が凄いんです。なんと向こう12か月にわたって役員報酬を上記のように減額するとのこと。

このところ不祥事の責任を取って役員報酬の減額を表明する企業のほとんどが、2~3割の減額、3カ月間というのが相場です。なんかこの会社凄いですね。

ちょっと気に入りました

気になって株価等を調べてみました。6/28の株価は1,898円。PERはわずか7.3倍。PBRはなんと0.42倍です。驚きの割安株ですね。配当利回りも2.14%の予想となっています。もちろん、これらの指標だけで株を買えるわけではありませんが、、、。

あともう一つ、6/21に調査機関が投資判断を最上位で継続し、かつ目標株価を引き上げた銘柄群の中に同社も入ってました。最上位に格付けしたのはいちよし証券で、目標株価は3,100円→3,300円に引き上げられています。ほぉ、評価高そうですね。

ただし、株式投資は自己責任原則でお願いしますね。

役員報酬1億円以上 三菱UFJFGで10人

三菱UFJフィナンシャル・グループの2020年3月期通期の有価証券報告書。「役員ごとの連結報酬額等の総額等」の項目を見ると、なんと総額が1億円以上の方が10名も。1億円以上の人だけが記載されるんですね。カルロスゴーン氏が虚偽記載していた、アレです。

三菱UFJFG

三菱は皆さんたくさん貰ってるんですね。トップはもちろん社長だった(4月から副会長)三毛氏で2億1500万円。二番手は1億9000万円、三番手で1億8000万円と並びます。三菱UFJ銀行から7名、三菱UFJ信託銀行から2名、三菱UFJ証券から2名となっています(1名は証券と銀行を兼務)。いやぁ、凄いですね。

三井住友FG

気になって他のメガバンクも調べてみました。三井住友フィナンシャルグループの2020年3月期通期の有価証券報告書です。こちらも3名お名前がありますね。トップは銀行頭取の高島氏で1億5000万円。二番手が1億3800万円、三番手が1億3700万円と続きます。

2020年3月期は三井住友FGが、トップを守ってきた三菱UFJFGを純利益で逆転してメガのトップになりました。三菱が海外の銀行の減損処理で多額の損失を計上したのが原因かもしれませんが、トップになったという結果は事実です。にもかかわらず役員報酬のこの差はちょっと気の毒。

みずほFG

「提出会社の役員ごとの連結報酬等の総額等」の欄には、「連結報酬等の総額が1億円以上である者がおりませんので、記載しておりません。」と書かれてます。みずほFGにはいないんですね。ほぼ全員が9980万円頭打ちみたいな感じでしょうか。

今回はメガバンク3行の役員報酬を見てみましたが、公表の仕方に各銀行の色が出ていて面白いですね。しかし、世間の相場とは大違い。やっぱり出世しなきゃダメですね。

SAR(ストック・アプリシエーション・ライト) 日産自動車 西川社長(その2)

前回は株主総会に諮られた日産のSARの概要について、全文を引用しました。概要を株主総会で承認してもらい、その詳細については取締役会に一任するという形です。そのため、取締役会の議事録でも手に入れない限り、条件等の詳細は分かりません。

文藝春秋7月号

グレッグ・ケリー前代表取締役の証言を、文藝春秋が伝えました。西川社長がケリー氏に対して、自身のSARについて問い合わせたうえで、秘書室に行使日の変更をさせたという証言です。また、そうして4700万円が上乗せされ、支給された約1億5000万円で渋谷にマンションを購入したのでは?といった推測も。この記事がきっかけになって社内調査が始まったみたいです。

一方で西川社長は、「SARについてはグレッグ・ケリー氏ら事務局に一任しており、適切に行われていると認識していた。事務局の運用の仕方に問題があった。」と言ってます。ケリー氏の証言(文藝春秋の記事)とは食い違っているわけです。

日産の社内調査報告

日産の社内調査報告が9日、開示されました。今後の司法手続きへの影響を考慮し、概要だけを公表しています。その中で西川社長のSAR行使に関する記述が、少々理解不能なことに。

西川社長が役員報酬の増額の検討を申し入れたが、ケリー氏はこれに応じなかった。ところが、SARの権利行使日を一週間ずらすことで、SAR行使による報酬を約4700万円不正に増額して支給したという表現になっています。是非皆さんもニュースリリースをご覧になってください。

ケリー氏の証言と社内調査報告のビミョーな食い違い。役員報酬の増額を相談したのは事実だが、それは断られた。役員報酬の増額に代えて、SARの権利行使で報酬を増額したのはケリー氏が勝手にやったこと。という理解で良いんですかね。え~っ‼ なんじゃそりゃ?

SAR(ストック・アプリシエーション・ライト) 日産自動車 西川社長

日産自動車の西川広人社長兼最高経営責任者(CEO)を含む複数の役員経験者が、報酬をかさ上げして受け取っていた疑いが持たれています。問題になっっているのは「ストック・アプリシエーション・ライト」(SAR)という株価連動型の報酬です。

今回の悪事(もういい加減にせ~よ)

役員がいったん自社株を取得したとみなし、事前に定めた期日に株価が上がっていれば、その差額を金銭で受け取る仕組み。この期日を株価がさらに上がった日まで後ろにずらすことで、西川氏は数千万円を上乗せして報酬を得たといいます。

平成27年 第116回 株主総会招集通知 第4号議案

4年前の日産の株主総会招集通知、第4号議案に「取締役に対し株価連動型インセンティブ受領権を付与する件」というのがあります。今問題になっているSARを株主総会で承認した場面ですね。以下全文引用します。日産が採用したSARがどんなものか、理解できると思います。

<株価連動型インセンティブ受領権の要領>
(1)権利の内容
権利行使日の前普通取引日における当社普通株式 1 株当たりの市場終値が下記行使価額 を上回っている場合に、その差額を受領する権利
(2)年間付与総数
適用期間内の各事業年度(4 月 1 日から翌年 3 月 31 日まで)について、6 万個(当社普 通株式 6 百万株相当数)を上限とする。  
(3)行使価額
当初の行使価額は、取締役会が定める条件に従って適用期間内における各事業年度(4 月 1 日から翌年 3 月 31 日まで)毎に決定される日の、㈱東京証券取引所における当社普通 株式 1 株の普通取引の終値(当日に終値がない場合は、それに先立つ直近の取引日の終値) とする。
(4)権利行使可能期間
各権利付与日から 10 年を経過する日までの範囲内で、取締役会が定めるものとする。
(5)行使条件
権利付与対象者の権利行使の条件は、取締役会が定めるものとする。
(※) 取締役が株価連動型インセンティブ受領権を実際に行使できる数は、被付与者に 付与された権利の数を上限として、被付与者毎に設定される業績目標の達成度等 の条件に応じて変動します。
(6)適用期間及び権利付与日
適用期間は、平成 30 年度末までとし、権利付与日は、取締役会が定める条件に従って適用期間内における各事業年度(4 月 1 日から翌年 3 月 31 日まで)毎に決定される日とする。

RS(リストリクテッド・ストック) 譲渡制限付き株式報酬

6/13付け日本経済新聞、「変わる総会(3)役員報酬業績連動型の導入進む」という記事の中で紹介されていました。RS(リストリクテッド・ストック) 譲渡制限付き株式報酬を役員報酬として導入する企業が増加しているという内容です。記事では、トヨタや京セラが今月開催される株主総会で謀ろうとしていることを伝えてました。

役員への報酬制度については、コーポレートガバナンス・コードが「客観性・透明性ある手続きで報酬制度を設計し具体的に決定する」ことを求めています。譲渡制限付き株式報酬を導入する企業の多くが、「自社の企業価値の持続的な向上を図るインセンティブとなること」や「株主価値を共有できること」を導入の理由として表明しています。

ストック・オプションとの違い

kuniが若い頃は、役員報酬や従業員へのインセンティブという意味では、ストック・オプションが幅を利かせてました。なにせデリバティブ全盛期ですからね。全盛期=マーケットの絶頂期でもあったわけで、ストック・オプションで大儲けしたという先例の話はよく聞いたものの、国内ではあまり儲かった人はいないんじゃないでしょうか。

ストック・オプションは株価が権利行使価格を上回った場合だけ、経済的な価値があります。株価が下がってしまうと、価値がゼロなんですね。株価が恒常的に上昇する場面では非常に魅力があるんですが、最近のマーケットのように先が読めない時代には向きませんし、インセンティブにもならないことも考えられるのです。

これに対して、譲渡制限付き株式報酬は、割り当てられるのはあくまで普通株式ですので、報酬としていただいた後に株価が下げようが、その時点での 時価×数量 の経済価値があるわけです。もちろん譲渡制限が外れた時点で、株価が上がっている方が儲かりますし、儲けたいから役員は企業価値を向上させるべく、頑張るわけです。

時代を反映した選択

役員報酬の客観性や透明性がますます求められるという時代。とはいえ、株式市場(特に自社の株価)が右肩上がりで上昇するかどうか自信が持てない時代。そんな時代を反映した選択かと思われます。

おまけです。「譲渡制限付き株式報酬」でググってみたところ、自己株式の処分に関するお知らせがたくさん出てきます。自己株式を役員に割り当てるということですね。スキームの説明を読んでみると、どこの会社も、「譲渡制限期間中は野村證券株式会社に開設した専用口座で管理される」と書かれています。野村さんこういうところは強いですね。