スルガ銀行 社長、専務も辞任

8/30 日本経済新聞一面の記事。スルガ銀行はシェアハウスを含む投資用不動産向けの不適切な融資が横行していた問題の責任を取り、3人いる全ての代表取締役が辞任する人事を固めた。らしいです。

何だかなぁ、この記事

「3人いる全ての代表取締役が辞任」とか「全員辞めるのは異例のこと」とか。いかにも取締役が全員辞めるかのような見え方がして良くないです。取締役はここまで出てきた3人以外にあと4人居るでしょ。社外取締役も4人。日経、記事書きにくい理由でもあるのかな。

企業文化・ガバナンス改革委員会(委員長=木下潮音弁護士・東工大副学長)

これもよく分かりませんね。委員長は過去にも名前を聞いたことある弁護士だけど、あまり評判良くないのかな?ネットではネガティブな話が結構あるみたいだけど。

で、この弁護士、調べてみたら少なくとも2016年6月~今年の5月までスルガ銀行の社外監査役やってんのね。取締役の職務の執行を監査しなければならない立場にありながら、このような執行状況を看過してきた責任はどうなった?そして、この6月から社外取締役って、どうよ、これ。

他にも超有名人がこの6月に社外取締役退任してたりとか、ツッコミどころ満載。マスメディアって、こういうところにツッコんでいくんじゃないの。

また出た スルガ銀行

ここまでの振り返り

前年度までは地銀の中の優等生として、メディアや金融庁からも高い評価を得ていた当行でしたが、今年度に入って評価は急変。5月にはスマートデイズへのシェアハウス関連融資における審査書類の改竄や偽造など、不適切な融資の実体が表面化しました。

その後スマートデイズ社の破綻もあり、外部の弁護士で構成する第三者委員会を設置して、夏までに不正行為などの実体を調査するとしていました。

第三者委員会による調査結果 1兆円

その第三者委員会の調査の概要が21日分かったと、日本経済新聞が報じたわけです。概要としていることから、委員会の正式な発表ではないようですね。リーク?

同行の融資総額は3兆1500億円、そのうちの1兆円が審査書類の改竄など不適切な行為に基づく融資だったとのこと。はぁ?1/3が「不適切」って、ハンパない。

不適切、という表現で報じられていますが、法令違反のレベルの融資も相当量ありそうです。不適切な営業や審査に関与した行員は全体の2割以上にのぼるそうです。

普通、この2割の営業員で収益の過半を稼ぎ出すというのが、パレートの法則ですよね。前期あたりの稼ぎはほぼ不適切な融資ということでしょう。

カードローンの融資資金を預金に

記事には他にもいろいろ書かれてますが、「カードローンの融資資金を預金に」というのもありましたね。

そもそもカードローン自体がサラ金を銀行の看板のもとで行っており、自己破産が増加に転じてきたと批判されている中、その融資した資金を預金させているということのようです。先日どこやらの銀行が批判を浴びた歩積み両建てってやつですか。それを個人向けカードローンでですと。

明らかに組織として行ってきた不正と言っていいでしょう。取締役の責任は徹底的に追及されるべきですし、執行部隊の幹部も同様です。いやいや、不適切営業行為のデパート状態ですね。酷すぎます。

フィデューシャリー・デューティー(FD)やら顧客本位の業務運営とやらで、金融庁との間でモニタリング対応(アンケートへの回答や直接金融庁に足を運んでの説明など)とかしながら、さぞ美麗なご報告をしてたんでしょうね。

その裏にはこんな業務実体があったとは。これって、行政の責任問うのかなぁ。

地域金融機関 環境と経営動向に関する整理

地域金融機関を取り巻く環境

金融庁が公表している金融レポートを参考に、地域金融機関を取り巻く環境を整理してみると以下のような感じでしょうか。

  1. 日銀の低金利政策継続により、長短金利差が縮小し、収益性が低下
  2. 比較的金利の高かった既存貸し出しや保有債券が返済、償還し、新規貸し出しや債券に置き換わることで全体の運用利回りが低下
  3. 生産年齢人口の減少により、借り入れ需要が低下し貸出残高が減少
  4. 高齢者が亡くなり、地域外に居住する次世代に相続が発生することによる預かり資産の流出

その環境下での経営の動向

このような環境下で収益を確保していくために、各金融機関は当然何かしらのリスクを取って、収益が期待できる事業分野に傾注して行くことになります。その事業分野としては主に以下のようなものがあげられます。

  1. 従来よりもリスクの高い顧客層への貸し出し(信用)
  2. 大都市等、他の地域へ進出した貸し出し(主に住宅ローン)の拡大(信用・コンプラ)
  3. アパートローン(サブリース問題も含む)(コンプラ)
  4. 個人向けカードローン(コンプラ)
  5. 有価証券運用(投資信託と外債への投資が中心)(金利・価格変動・為替)
  6. 投資信託や保険等の金融商品販売(価格変動・為替)

各項目の後ろに付けた( )内は金融機関が負う主なリスクを入れてみました。

今後何が起きるのか

地域金融機関を取り巻く環境と、その中で彼らが取り組む事業の動向を整理してみましたが、いかがでしょう。「環境」については頭の隅に入れておいてください。「経営動向」については、このあと個別に触れて記事にしてみようと思います。今後マーケット環境等が変化するのにあわせ、どのリスクが顕在化し、事業や運用にどのような影響が出てくるのかも見ていきたいと思います

既に、アパートローンやカードローン、不適切な貸付など、一部の銀行で問題が発覚していますし、その他の銀行でもこうした問題が出てくるものと思われます。

金融機関って程度の差こそあれ、基本的にどこも同じようなことをやってますからね。

東日本銀行 銀行の不祥事が止まりません

地銀に相次ぐ不祥事

7月13日に関東財務局から行政処分を受けた東日本銀行。融資した顧客から不適切な手数料を徴求していたということですが、これがいまいちよく分かりません。完全な法令違反でもなさそうで、歩積両建預金と地方公共団体の制度融資先を食い物にしていたことについては言及されていましたが、その他の不適切とされる手数料については詳細の説明がありませんでした。

公表されている行政処分の文面から見えてくることは、これらの不適切な行為は基本的に外部からの紹介により行った融資ということ。第一に、地方公共団体が制度融資として持ち込んだ(指定した)案件、第二に特定のグループ(これって何でしょう)から紹介された案件、そして当行OBを通じて紹介された案件。

特定のグループって気になりますよね。当行OBとこの特定のグループの関係は?なんていろいろ考えていくと、まだ背景に何かありそうな気がしますね。事情をご存知の方がいらっしゃいましたら教えてください。

業務改善計画

この不祥事について、東日本銀行は8月10に業務改善計画を金融庁に提出しました。改善計画の中身もどうだかなぁって感じですが、この時の頭取の会見内容がまたイケてません(ちなみに会長が責任とって退任、頭取は居残るようです)。「日銀のマイナス金利政策が規模拡大にアクセルを踏ませた。前経営陣は株主への意識が強く、ドライブがかかり過ぎた」

って、おいおい。収益偏重で顧客にとんでもない不利益与えておいて、日銀と株主悪者にしてお仕舞いかい? 東日本銀行のご当地の皆さんには申し訳ありませんが、大丈夫ですかね、この銀行。

他の地銀は大丈夫?

これって東日本銀行だけのお話なんでしょうか。いやいや、そこらへんの銀行で同じようなことあるんじゃないですかね。個人ローンの過度な貸付、アパートローン、サブリース問題にこの不適切な手数料。金融の世界に居た人間としての肌感覚としては、どこでも似たような事がありそうな気がします。いや、あくまでそんな気がするだけですけどね。