スルガ銀行 預金流出 預金支援 りそなHD

1/14 金融庁銀行第2課が地銀に対してスルガ銀行への預金支援を依頼していたことが報道されました。2018年度上期で預金が6,800憶円(全預金の16%に相当)流出してしまったとのこと。いろいろと疑問の残るこの預金支援ですが、その後のスルガ銀行についてみてみましょう。

2/2 ゆうちょ銀行で住宅ローン媒介32件不正

スルガ銀行との提携による住宅ローンの媒介業務に関する社内調査で、32件の偽装や不正の疑いが見付かったという発表。審査業務は全てスルガ銀行が担当。ゆうちょ銀行側の不正関与はなかった。

2/14 無担保ローンの不正の有無調査

スルガ銀行は個人向けの無担保ローンについて不正の有無に関する調査に乗り出したことを明らかにしたという報道。無担保ローンの融資の過程で、審査書類に改ざんなどがあったと疑われているため。と、報道されているのはこの程度ですが、これがデート商法に関与する内容だということらしいです。

共同通信の伝えたニュースでは「スルガ銀行の行員がデート商法詐欺まがいの行為に関与し、個人向けローンを融資していた疑いがある」となっていました。婚活サイトを利用した不動産業者とつるんでいたという内容らしく、この件について弁護士と被害者がスルガ銀行を訪ねるといった内容がテレビでも放映されたとか。いやいや、なんぼでも出てきますわ、この銀行の悪事。

しかし、考えてみれば至極当然の話かもしれません。何が何でも収益を上げさせるパワハラ下での営業。当時ドル箱だったアパートローンと個人向けローンで何とかしようと考えるでしょう。そんな銀行員の取り巻きは、何にでも食いついてくるスルガ銀行の行員に対していろいろと怪しいお話を持ち込んだはずです。

そしてこの後は

金融庁が他行に依頼して集めたとされる預金支援。聞くところによると2,000憶円以上突っ込まれているとか。この後どうするつもりなんでしょう。どこかの銀行の傘下に入れて再建するため、既に相手を見付けているんでしょうか。

2/4付の金融財政事情では「りそなHDが台風の目」と伝えていました。国内リテールビジネスの強化を図りたいりそなの思惑と、創業家支配から完全に離脱したいスルガの思惑。となるとそれなりの体力と資本が必要であり、地銀ではなくりそなHDが有力という見立てのようでした。

それとも、一時的な取り付け騒ぎを回避するのが目的であり、落ち着いたところを見計らって自主廃業させるのか。いずれにしても、預金支援だけで終われるもんではないと思われます。支援した預金に何かが起きてしまったりすると、支援した銀行が大変なことになります。株主は黙っていません。いや、何も起こらなくても問題になる可能性すらありますよね。

かといって、支援した預金を引き出すこともできないでしょうし、そのアクション自体がスルガの息の根を止めることにもなりかねません。さぁ、この後金融庁どうするんでしょう。スルガ銀行は3月末までに臨時株主総会を開催する予定だとか。そろそろ結論が出てきそうな感じですね。

スルガ銀行 TATERU レオパレス21 サブリースショック 地銀

レオパレス21の界壁問題がまた新たに報道されています。昨年は必要な「界壁がない」という施工不正でしたが、今年2/7に新たに1,324棟で施工不正が見付かったと公表されたのは、界壁や外壁の中に充填している素材が問題になっています。

ということは、昨年来調査してきて、界壁が施工されているとして不備なしとしてきた建物についても、その充填素材に問題が見付かっているということになりますね。まず、天井の耐火性に問題があるとみられる641棟に住む7,782人に転居を要請するそうです。遮音性を満たさない物件などの入居者を含めると、引っ越しを促す総数は約1万4000人。住宅建設を巡る不正では異例の規模のようです。

とにかくまぁ、よろしくない噂や係争だらけのこの会社、今回はさすがにアウトっぽいですね。株式市場ではストップ安比例配分となったようですが、株主もよくここまで持っていたなぁというのが素直な感想です。もっとも、現保有者ってのは、既に切った張ったの投機家たちなんでしょうけど。

サブリースショック

サブリースショックが現実味を増してきました。スルガ銀行、TATERU、レオパレス21、、、とサブリースに関して不正を行ってきた上場企業の揃い踏み。レオパレス21の顧客(アパートのオーナー)は実に7割がリピーターだとか。これまでの報道でも明らかになってきていますが、本来貸せる相手ではない顧客への過剰な融資が、ここまでアパート投資を拡大させてきた最大の要因です。

サブリースという顧客のすそ野を拡大する枠組みに、貸出先に困っていた地銀が過剰な融資で資金を供給。不動産業界と金融界のニーズが一致する、20世紀末のバブルと同じメンツです。今回もここにちょっとしたバブルが膨らんできました。レオパレスの件がトリガーとなって弾けてしまうのかもしれません。

時を同じくして、2/9付け日本経済新聞では、とても小さな記事でしたが、「銀行のカードローンの融資残高が、2018年末時点で前年末比0.8%減の5兆6995億円と8年ぶりに減少した」と日銀が公表したことを伝えています。こちらも利用者の返済能力を上回る過剰融資が問題視されていた件です。

また、1面トップでは「銀行融資 危うい復調 20年ぶり500兆円」という記事もありました。「日銀の分析によると地銀105行のうち過去3年間に貸出量を増やした銀行は、増やさなかった銀行よりも収益力が落ちていた。」という内容です。地銀の貸出先がかなりやばいことになっているわけです。

地銀の抱えるリスク(おさらい)

以前の記事で書いた、地銀の抱えるリスクを再掲しておきます。③と④について、大きな変化が出てきました。⑥の保険の販売についても販売態勢(説明態勢)の見直しが4月頃に行われるようです。

①従来よりもリスクの高い顧客層への貸し出し
②大都市等、他の地域へ進出した貸し出し(主に住宅ローン)の拡大
③アパートローン(サブリース問題も含む)への過剰貸し出し
④個人向けカードローンへの過剰貸し出し
⑤有価証券運用(投資信託と外債への投資が中心)
⑥投資信託や保険等の金融商品販売

大学と地銀に共通する衰退していく側の論理

週刊東洋経済のコラムで面白い話を読みました。コラムのタイトルをそのまま使わせてもらってます。筆者があるパーティーに参加した際のお話で、「国立大学の学長と地方銀行の頭取が、あいさつでまるで同じことを言っていたので、思わず苦笑してしまった」との書き出し。

大学と地銀、一見全く関係のなさそうな業種ですが、この書き出しを読むだけで、その場の様子が想像できませんか。政策によって推進され、一時はかなりステイタスの高い企業、組織になっていたと思われます。別に業界の中に熾烈な競争があったわけではなさそうで、気が付いたら、「近所のご同業と統合されたらいかがですか」と肩をたたかれている。そんな共通点が思い浮かびます。

また、筆者は二人の話の共通点について、「守りの姿勢」と「行政の介入を拒む姿勢の強さ」もあげていました。地域特性があるから、公的な役割があるから、自分たちは潰れるはずがないと思っていたことだ、とも言っています。なかなか本質を突いたご意見でした。

武田薬品 シャイアー社買収の臨時株主総会

上記のコラムを読んだ直後、kuniにも面白い展開が訪れました。武田薬品のシャイアー買収に向けた臨時株主総会のニュースに触れたのです。12月5日に開催され、株主の2/3以上の賛成を得て承認されました。来年1月には買収が完了するということです。

非常に対照的ですよね。製薬業界も特に創薬の分野では生き残りをかけた競争が激しいと聞きます。日本企業によるM&Aとしては最大級といわれる買収劇です。kuniにはこの買収が成功するのかどうか分かりませんが、彼らは衰退していく側にはならない決定をしたわけです。

この業界には新薬の特許が切れてしまうと、途端にその分の収益が見込めなくなるという特殊なルールが存在します。当然その時期に向けて新たな収益源を探す必要があります。有望な新薬が出てこないのならM&Aでということにもなるんだと思います。が、しかしそこには社運を賭けた決断があるわけです。

今月ソフトバンクが新規公開することで話題になっていますが、ソフトバンクグループも同様です。過去にとてつもないM&Aを繰り返して、ここまで成長してきました。彼らのM&Aを支える財務戦略は凄いです。あれだけの借金をしながら、普通に企業経営ができる孫さんが凄いんですね。

冒頭の地銀や大学。後半の武田薬品やソフトバンク。あまりに対照的ですよね。で、どちらも日本を代表する企業、組織として、今注目を集めています。

スルガ銀行社長に株主代表訴訟へ

11/14 日本経済新聞電子版の記事です。正確には13日の20時過ぎの記事ですが、紙面には載ってなかったような。なんで?

シェアハウス所有者の弁護団が表明

弁護団は有国三知男社長に対して株主代表訴訟を起こす方針を固めたそうです。先に報道されている、スルガ銀行が取締役等9人に対して起こした35億円の損害請求訴訟について、有国社長を対象に含んでおらず、責任追及が不十分だと判断した。ということらしいです。この点についてはkuniが指摘していたのと同じですね。弁護団は「内容が不当で損害賠償請求の金額が少なすぎる」とも言っているようで、彼らの請求額はもともと717億円となっていました。なんとこの乖離。

有国氏だけがなぜ対象になっていないのか

たしかに第三者委員会の調査報告書では、個別の違法行為を知り得た証拠が見当たらないとされています。取締役に就任してからは監査部管掌兼CRO(最高リスク管理責任者)なんですが、約1年間の在任期間で、かつ同社のレベルの低い監査部機能では、今回発覚したような各種不正のリスクを認識することは、困難だったのではないかといった調子です。

第三者委員会のインタビューに対する有国氏の回答までリアルに載っていますが、正直何もできなかったのね。って感じで、情けない回答ばかりです。同氏に関する記述は「明らかに善管注意義務違反に該当するとまでは認められない」と括られています。

監査役の責任は?

もうひとつ違和感が残っているのが、スルガ銀行が9人の取締役等を提訴した際、監査役の責任については問わなかった点です。弁護団の方も、この点については今のところ指摘していないのでしょうか、記事では触れられていません。

監査役二人について、第三者委員会の報告書は、シェアハウス関連の問題を知ることは可能でありながら調査をしなかったとして、「監査役としての善管注意義務に違反するものと思料する」としています。また、監査役会や社外監査役に適切な報告をしていないことについても、同様の判断をしており、合計4か所で「監査役としての善管注意義務に違反するものと思料する」という記述があります。

ここまで第三者委員会が善管注意義務を問うているにもかかわらず、スルガ銀行は訴えていません。

アパート等のサブリースに関する注意喚起について

別件で金融庁のホームページをチェックしていて見つけた、報道発表資料のタイトルです。10/26に掲載されてます。今年3月に公表していた注意喚起分のアップデート版のようです。

サブリースとは

サブリース契約というのは、サブリース業者がアパート等の賃貸住宅をオーナーから一括して借り上げ、物件の管理を行い、一定の賃料収入を保証する契約のことです。おそらく名前くらいは聞いたことのある契約だと思います。

この契約を一番有名にしたのが、スマートデイズの女性専用のシェアハウス「かぼちゃの馬車」の事件でしょう。そう、スルガ銀行がこれに不適切な融資をつけていたというヤツです。スマートデイズのシェアハウスはビジネスモデル自体に問題があり、破綻したわけですが、サブリース契約そのものは、全国的にアパートローン等で使われています。

ここ数年、相続税の節税対策としてアパートローンは急激に残高を増やしてきましたが、その裏では「家賃が保証されたアパート経営」というサブリース契約が原動力になっていたということですね。

アパート等のサブリース契約を検討されている方は、契約後のトラブルにご注意ください

これが金融庁の注意喚起、添付ファイルのタイトルです。さきほど「家賃が保証された」と書きましたが、これは当初のお話であり、その物件の価値が変化することなどにより、保証される家賃が減額されることもあります。で、実際に賃料減額をめぐるトラブルが発生してるので、契約内容や賃料減額などのリスクを十分理解してくださいよ、という注意喚起です。

要するにサブリース業者が説明責任を果たすことなく、あたかも30年間家賃が保証されるかのような説明で、契約を締結させているということですね。

サブリース住宅に入居する方は、オーナーとサブリース業者の契約内容を確認しましょう

続いて二つ目の添付ファイルのタイトルです。サブリース住宅の入居者は、オーナーとサブリース業者の契約終了等による不利益を受ける場合があるので、入居に当たっては、オーナーとサブリース業者の地位の継承に関する契約内容などを確認するようにしましょう。という注意喚起です。

どのような不利益があるのかは、実際にこの注意喚起をご覧いただくとして、こんなもん読んだら入居するのためらいますよね。「地位の継承に関する原賃貸借契約の内容」ってなんだ?と思いますし、正直、サブリース住宅は今後敬遠されていくと思います。そうなると物件の価値が下がっていくわけで、そのことでまた賃料減額に拍車がかかりそう。負のスパイラルです。

サブリースショック

サブリースショックみたいな社会現象までは起きないかな、って思ってました。しかし、なぜ金融庁が畑違いのサブリースに注意喚起を出したか。サブリース業者とつるんで、かなり過剰な融資を行っている地銀等の実態が見えてきたのかもしれませんね。今後、当局の指導により地銀等は融資をさらに絞り始めるでしょう。そこから始まるサブリース業者の破綻は、サブリースショックの引き金になるのかもしれません。