9/19付け日本経済新聞に、「温暖化と生物(3)海水温上昇でオスだけに?」という記事がありました。海水温の上昇で、遺伝上はメスになるはずの稚魚の約50%がオスに変わる現象を、東京海洋大学の山本洋嗣准教授らが見つけたとのこと。
環境⽔温による遺伝型性の上書き
⽣物の性別は、受精時の性染⾊体の組み合わせによって遺伝的に決まる。と学校では習いましたよね。しかし、⿂類では、孵化前後の性分化時期に経験した⽔温の影響で、遺伝的な性(例︓XX、XY)と表現型の性(卵巣、精巣)が⼀致しない、いわゆる性転換個体が出現してしまう種があるそうです。
このような現象を、「環境⽔温による遺伝型性の上書き」というんだそうで、従来は飼育環境下での報告例はあったものの、野⽣環境下では証明されていなかったとのこと。山本准教授たちが初めて、東京湾に⽣息するトウゴロウイワシの仲間であるギンイソイワシで、これを証明したという事です。
ギンイソイワシ以外でも
近年、世界規模の問題となっている地球温暖化は、この様な性決定が⽔温の影響を受けやすい⿂種の「種の存続」そのものを脅かしかねません。いきなり不謹慎な言い方ですが、人間の食糧確保の観点からも脅威です。
ちなみに、飼育環境下では、孵化前後の仔稚⿂を⾼⽔温に晒すと、遺伝的なオス(XY)はそのままオスに分化しますが、遺伝的なメス(XX)がオス(精巣を持つ)に性転換してしまう事例が多くの⿂種で報告されているそうです。
そう、今後野生環境下でも多くの魚種で同様に、海水温上昇による遺伝型性の上書きが確認される可能性があるということですよね。かなり怖いお話です。