VPP シェル子会社ゾンネンが日本で始動

昨年7月に一度取り上げましたVPP(バーチャル・パワープラント)。やはりロイヤル・ダッチ・シェルの子会社、独ゾンネンが日本で次世代電力サービスを2021年にも開始すると発表しました。2/25付の日本経済新聞、1面トップの記事です。

VPPのおさらい

コミュニティメンバー(参加する各家庭)が太陽光発電と蓄電システムを自宅に設置します。これらの世帯をネットワーク化し、メンバー同士で過剰な電力を持つ世帯から、電力が不足している世帯へ融通するというものです。初期投資で200万円くらいかかるものの、その後は電気料金ゼロで電気を使えます。

コミュニティ全体で電力が不足すれば、通常の電力網から電力を取り入れます。逆に余れば電力網に放電することもあります。このように、コミュニティの中での電力の融通や外部の電力網との電力のやりとりを、瞬時で行う技術というのが、ゾンネンのウリなんですね。

東芝エネルギーシステムズ

日経でも少しだけ触れていましたが、昨年1月から東芝エネルギーシステムズも東京電力エナジーパートナーと組んでVPPの事業を始めています。偶然だと思いますが、同じ日の日刊工業新聞は、この東芝エネルギーシステムズの事業について報じていました。

こちらはVPPを実現するための機能を選んで利用できるサービスを開始するという内容です。例えば蓄電池の制御という機能をVPPの事業者にサブスクで提供するというサービスです。ゾンネンのような企業に対して、VPPを実現するための様々な技術を提供するプラットフォームのような感じでしょうか。

日経では電力の需給調整の技術的な難しさや制度設計の遅れが指摘されていましたが、東芝エネルギーシステムズには何とか海外勢に負けずに頑張ってほしいものです。VPPを実現する事業者としてなのか、プラットフォーマーとしてなのか、どちらが正解なのかよく分かりませんが、とにかく頑張ってほしい。残念なことに、同じ再生エネ関連の風力発電では日立が関連事業を手放してしまいましたしね。

再生エネルギー 地熱発電 増感型熱利用発電 新型熱電発電素子

「すべての電力を再生可能エネルギーで供給する鍵は地中にあり」というレポートを読みました。ここでいう地中とは、地熱エネルギーを指しています。「地熱発電で米国の電力の20%を賄えるという試算が環境系シンクタンクによって発表された」と伝えています。

シンクタンク「ClearPath」

クリーンエネルギーの推進を目指す保守系シンクタンク「ClearPath」が5月に作成した報告書だそうです。これまで米国で地熱発電が注目されなかったのは、推進のための優遇措置が取られてこなかったからだとも言ってます。風力発電や太陽光発電では30%の税額控除があるが地熱は10%だそうです。

他にも、地熱エネルギーを得るための掘削に必要となる環境関連の相当面倒な承認プロセスも、普及を妨げてきた理由の一つとしてあげられています。他にも、水圧破砕法という方法での掘削には、地震が発生するリスクもあるとか。実際に韓国で起きてるようです。ただし、報告書は何の障害もなく得られるクリーンエネルギーなど存在しない、と言ってますけどね。

「増感型熱利用発電」の開発に成功

そんなこともあって調べものをしていたら、「増感型熱利用発電の開発に成功」というニュースを見付けました。「太陽電池では光エネルギーにより生成した電子を利用するが、この電池では熱エネルギーにより生成した電子を利用する」と説明されています。この発電装置を熱源に埋めて、回路のスイッチをオンオフするだけで、熱エネルギーで直接発電が可能とのこと。この熱源というのが50℃でいいというのが、これまた凄いところです。

地熱発電では地下水を水蒸気化し、タービンを回して発電します。今回開発された増感型熱利用発電では、熱源に埋め込むだけでその新型熱電発電素子から電流が取り出せるという優れものです。地熱発電にも使えますし、工場等から排出される排熱の有効利用にも使えそうです。

この研究は東京工業大学と三櫻工業(6584)によるもので、プレスリリースを出した7/18から3日間で、三桜工業の株価は36.8%上昇しています。その後、元の株価水準に戻ってしまいましたが、この技術が実用化できるかどうか、、、期待したいと思います。

ユーラスエナジーホールディングス 発電所内にデータセンター運営

7/30付け日本経済新聞の記事です。国内風力発電最大手のユーラスエナジーホールディングスは、風力発電所内にサーバーを設置し、データセンターの運営事業に乗り出すと発表した、というニュースです。京セラが北海道に再生エネ100%で稼働するデータセンターを作ってますが、発電所の中にというのは聞いたことがありません。

(株)ユーラスエナジーホールディングス

kuniは初めて聞いた名前の会社でした。豊田通商が60%、東京電力HDが40%出資して2001年に設立された資本金181億円の会社です。事業内容は「風力および太陽光発電事業」となっています。従業員は366名になってますね。社名のユーラス(Eurus)はギリシャ神話に登場する「東の風の神(エウロス)」に由来するものだそうです。

エネルギー供給と環境負荷低減を両立するという社会ニーズに対応するため、日本、米国、欧州の3地域を中心に、数多くの風力発電事業を展開している会社です。2008年からは太陽光発電事業にも参画しています。

CGレンダリングサービス実証事業を開始

ユーラスが実証事業を開始するのは、同社がテキサス州に持つブル・クリーク風力発電所内に、コンテナ型サーバーセンターを設け、クラウドベースのCGレンダリングサービスの提供を行うというもの。サービス開始は2020年1月を予定しています。

CGレンダリングが必要とする膨大なコンピューティングパワーを、再生エネルギーにより給電しようということですね。同社のホームページも見ましたが、コンテナ型って、本当に一般貨物輸送や海上輸送に使われるコンテナなんです。コンテナを増やすことで柔軟な拡張も可能とのこと。

再生エネの地産地消

クラウドコンピューティングサービスでCGレンダリング機能を提供する。つまり、膨大な電力はサーバーが置いてある発電所で作られるわけで、まさに再生エネの地産地消が実現します。ユーザーは僅かな電力と一般的なパソコンで良いわけですから助かります。

日本における再生エネのネックになっているのが、送電線の確保です。洋上風力発電等で発電したとしても、その電力を人口密集地に送る送電線が足りないんですね。パソコン等のインターネットに接続して使用される端末が消費する電力は、このクラウドコンピューティングサービスで送電不要にすることが可能ということです。

今回はCGレンダリングで実証するわけですが、企業の基幹システムなんかもクラウドに移行していってる時代です。可用性やセキュリティなど課題はあると思いますが、これらも再生エネ電力発電所内データセンターへ、、、という時代が来るかもしれません。そうなるとその需要は膨大ですよ。