スルガ銀行 社外取締役の法的責任

当ブログでも以前取り上げた、金融庁と日本取引所グループが作成したコーポレートガバナンス・コード。上場企業に対して求めたガバナンスの教科書みたいなものです。そのなかでは、取締役や取締役会、監査役などに求められる役割等が示されていますが、社外取締役に求められる役割・責務についても触れられています。

いたるところで「社外取締役を含む取締役は」という主語が使われていることに加え、原則4ー7では、社外取締役に求める役割や責務として次のようなことが書かれています。

  1. 経営の方針や経営改善について、自らの知見に基づき、会社の持続的な成長を促し中長期的な企業価値の向上を図る、との観点からの助言を行うこと
  2. 経営陣幹部の選解任その他の取締役会の重要な意思決定を通じ、経営の監督を行うこと
  3. 会社と経営陣・支配株主等との間の利益相反を監督すること
  4. 経営陣・支配株主から独立した立場で、少数株主をはじめとするステークホルダーの意見を取締役会に適切に反映させること

社外取締役にはこれほどの役割・責務が求められているわけです。ところが、今回のスルガ銀行の「第三者委員会の報告書」では社外取締役の責任を問うていません。これにkuniは非常に違和感を持っています。

第三者委員会報告書での指摘

  • 社外取締役は個別の違法行為等を知り、または知り得た証拠は見当たらない
  • 知り得た情報は社外取締役側から主体的に収集活動をして得られたものではない
  • 本質的な問題を具体的に知り又は知り得たにもかかわらず、これを放置したといった事情も見当たらない

以上3点を抜粋してみました。唯一の情報収集機会である取締役会の席では、個別の違法行為等を知り得ることはできず、知っていたのに何もしていないということではないので、法的責任は問わないと言っているわけです。加えて、社外取締役が主体的に情報収集したという事実もないと言っています。

違法行為等の情報を知ってしまうと責任を問われる可能性があるんだとしたら、だれが進んで調査、情報収集します?なにもせず、我関せずを貫いた方が得じゃないですか。こうなると何のために社外取締役を置いているのか分かりません。先に見たコーポレートガバナンス・コードが要求する役割・責務と、第三者委員会報告書の温度差、違和感あるでしょ。

「社外取締役として主体的に情報収集した証跡は十分認められるものの、取締役以下社内の協力を得られることなく、違法行為等を知るにはいたっていない。したがって、社外取締役に法的責任は認められないと思料する。」という実態であれば納得するんですけどね。