新型コロナ 訴訟リスク

米国では新型コロナウイルスに対する企業の対応姿勢に関して、訴訟が起き始めてるようです。ウォルマートの店舗に勤務していた従業員が、新型コロナウイルスに感染して死亡。これに関して同社が適切な対応を取っていなかったとして遺族が、提訴したということです。

必要なリスク管理

ウォルマートに限らず、アマゾンや、ニューヨーク州と州内の2病院などが既に提訴されているようです(アマゾンは提訴には至ってない?)。新型コロナ感染症のような症状が確認されているにもかかわらず、隔離するとかそのことを従業員に知らせるなどの適切な対応がとられていなかったこと。これを故意の不正行為であり、過失に当たるとしているようです。

訴訟社会の米国だから?いやいや、これって日本でも同じことが起こりうると思います。皆さんの勤める会社では、それなりの対応がとられてるでしょうか。もちろん、亡くなった従業員がどこで感染したかなんてそう簡単に証明できるものではありません。

が、しかし、国が要請するガイドライン等に従った対応を会社が取っていなかったら、当然コロナ犠牲者の遺族は黙っていないでしょう。日本ではまだ、高齢者を除くと死亡に至る事例が少なく、企業としてのリスク認識は進んでいません。しかし、企業にとっての訴訟リスクは確実に拡大していると考えるべきですね。

就業に関するリスク

昨年辺りは企業の抱える対従業員リスクとしては、パワハラ、セクハラが代表格でした。もちろんこれらも続くでしょうが、新型コロナに関するリスクは新たな脅威としてしっかり認識しておく必要がありそうです。

訴訟リスクだけではありません。自社がこの脅威に対してどれだけ本気で取り組んでいるか。その甘さは従業員の退職の理由にもつながる時代だと肝に銘じるべきですね。企業のリスクは時代とともに変化します。そういう変化するリスクへの感度って、重要ですよ。

ガバナンス 最も優先して対応すべきリスク

デロイトトーマツさんのホームページで、「企業のリスクマネジメントおよびクライシスマネジメント実態調査(2018年版)」という調査結果資料が公表されています。2018年10月~11月にかけて、日本の上場企業約3,500社に郵送でアンケートを実施し、430社から有効な回答を得た結果だそうです。

最優先リスクは自然災害のリスク

日本国内で優先して着手が必要と考えられているリスクは「地震・風水害等、災害の発生」で、41.9%(前年は35.9%)となっています。昨年は大阪北部地震に西日本豪雨、北海道地震など、数々の自然災害がありましたからね。

特に、大阪では台風の影響で関空が機能停止し、北海道ではブラックアウト、社会インフラがマヒすることで企業活動が甚大な被害を受けることを体験しました。あんなことが自社の周辺で発生したら、、、と身構える企業の感覚よく分かります。

2位以下については以下の通りです。自然災害同様、最近の世相をよく表しています。
① 地震・風水害等、災害の発生(41.9%←35.9%)
② 人材流出、人材獲得の困難による人材不足(28.3%←23.6%)
③ 法令順守違反(24.6%←29.3%)
④ 製品/サービスの品質チェック体制の不備(20.5%←18.7%)
⑤ 情報漏えい(19.1%←21.6%)

2位の「人材不足」についても、前年の23.6%から28.3%へと上昇しています。4位の「品質チェック体制の不備」、ここでは全産業を対象としているためあまり目立ちませんが、製造業だけで見るとやはり大きく上昇していました。

クライシス経験企業が答えた成功要因

このアンケートでは、クライシスを経験した企業に、対処が上手くいった要因を聞いていますが、一番多い回答は「トップのリーダーシップ、トップダウンでの迅速な意思決定がなされたから」となっています。これもなるほど、って感じです。

危機管理を担当する部署でどれだけBCPとか作っていても、いざと言うときに重要なのはトップの判断ですよね。トップがどこまで腹をくくれるか、これ一番重要です。どの程度までの損失を覚悟するかで復旧対策のターゲットは決まります。トップが決められないとどうにも動けませんし、損失をとにかく出したくない、なんて発想しかできないトップは結果的に対処ステージを長引かせてしまいます。

一方で、クライシスを経験したことのない企業に、「対処を成功させるための要因は何か」との問いもあるんですが、トップのリーダーシップは3位にとどまっています。意外にトップには期待してないみたいですね。このアンケート、海外子会社に関する質問等もありますので、気になる方はデロイトトーマツさんのHPへ。念のため、kuniはデロイトトーマツさんとは関係ありません。