スルガ銀行 貸出債権放棄へ 見切り千両

スルガ銀行が、シェアハウス所有者向けの貸出債権を事実上、放棄する方向を打ち出してきました。土地・建物の返却を条件に借金を帳消しにするという異例の対応です。この約1か月間で、シェアハウスの問題と創業家の問題、一気に解決したことになります。

見事な決断

創業家がファミリー企業経由で保有している同行の全株式を、ノジマが取得すると発表したのが10/26でした。そして11/20にはシェアハウス問題にメスを入れ、一連の不祥事に伴う「負の遺産」の処理にメドをつけることになります。これはなかなかできない決断だと思いますね。特に銀行にはできない判断のように思います。

わずか1か月間で見切りをつけたこの判断。相場の世界では「見切り千両」などと言いますが、お見事だと思います。今年6月、外部から副社長に就任した嵯峨行介氏(元はリクルートコスモスでしたか)の手腕によるものでしょうか。創業家排除に協力した、野島廣司社長の力もあったかもしれません。

損得勘定

借り手の借金を帳消しにして、シェアハウスという資産を抱えることになりますが、これがかなり傷んでしまった資産なわけです。そのため、速やかにシェアハウス向けの債権を第三者に売却するための入札手続きを始めたと伝えられています。

19年3月期に多額の貸倒引当金を計上していますので、おそらくこれ以上の損失が追加されることはないんでしょう。現時点での評価損を引きずることなく、すべて処理してしまうわけですね。

投資や事業に失敗した場面、当事者たちはついつい判断を先送りしてしまいます。そのことが命取りになる事例を何度も見てきました。今回のスルガ銀行の決断、棄損したブランドや信用をここで一回リセットできるという意味で、同行の将来にとって非常に大きなメリットがあると思われます。

ノジマ スルガ銀行筆頭株主へ その目的

ノジマは10/30、経営再建中のスルガ銀行の筆頭株主になりました。スルガ銀行の持つクレジットカード事業が狙いではないかと言われていますが、今のところその辺りははっきりしません。11/1付の日本経済新聞で、日経がノジマ社長にインタビューをしていましたが、けむに巻かれていました。

野島社長

なんだか面白そうな人ですね。横浜ベイスターズの買収を試みたり、ITXやニフティを子会社化してきた人です。この人がM&A等で興味を示してきた企業、決してその企業の最盛期にある状況でもなさそうです。企業の持つポテンシャルに比べ、その時点での評価が低すぎる企業。そんな見方で捉えてらっしゃるんでしょう。まぁ、これが本来のM&Aのあるべき姿なんですが。

創業家の保有株式を取得

10/29付で、創業家とファミリー企業の保有する3129万株(議決権比率13.52%)を取得しています。取得金額は140億8千万円となっていますので、1株450円で取得したということですね。ノジマが筆頭株主に、、、と伝えられた直後に、スルガ銀行株は506円まで買われましたが、その後じわじわと下げてきており、この450円に収れんしつつある、そんな感じです。

ノジマは昨年中にもスルガ銀行を市場買い付けしており、こちらは1156万株(議決権比率4.99%)です。今回の取得と併せて4285万株(議決権比率18.52%)で筆頭株主になったというわけです。

純投資?

昨年、市場でスルガ銀行株を買い付けていた当時は、純投資が目的だったと言っていました。実は今でも野島社長の中では純投資に限りなく近い感覚なのかもしれませんね。

PBR0.5倍を割れた水準で取得。地銀としての収益力はかなり高い方。おまけにこの会社の最も重い病巣を全摘出(創業家との絶縁)する手術に成功したというわけです。そこにクレジットカード事業がおまけで付いてきた。そんな感じなんですかね。