キャッシュレス決済の利用率 20代が最も低い?

8/14 日本経済新聞の連載記事「ゼロ金利世代は今(2)」で、「キャッシュレス決済を利用していると答えた20代の割合は全世代で最も低い49.5%と、全体平均から9%も低かった」という調査結果を伝えていました。インターネット接続事業者大手のビッグローブが3月に実施した調査結果だそうです。

キャッシュレスに関する意識調査

ビッグローブのプレスリリースを見てきました。というのも、この調査結果に違和感を覚えたからです。20代から60代までの各世代の男女200人、合計1000人を調査対象としています。で、予想通り「インターネットを利用する方のうち、スマホを所有する人」を対象に「インターネット調査」で行っています。

結果は60代が一番利用率が高く(70.5%)、若くなるほど利用率が下がっていき、20代が最低という結果です。皆さんはこの結果をどう感じられたでしょうか。

デジタルリテラシー効果

調査対象者が問題です。スマホを使いこなし、ネットで回答できることを前提条件としていることから、調査対象者のデジタルリテラシーが相応に高いことが伺えます。20代の若者はほとんどの人が対象者になりうるわけですが、60代になるとスマホ・ネット操作ができる人の割合は小さくなると思われます。

つまり、20代はフィルターが掛かっていないが、60代はデジタルリテラシーの高い母集団になっている可能性が高いということ。選ばれし60代であるがゆえに、キャッシュレスに関する意識も高めの人たちから回答を得ているということではないでしょうか。

あくまでkuniが立てた仮説です。決してビッグローブは悪くありません。調査の対象者や方法を開示しているので、結果を見る人はkuniのようにいろいろと考えることが可能です。しかし、日経の記事はいかがなもんでしょう。20代は現金派が多いという記事に誘導するため、この調査結果だけを使ってます。今回のこの指摘が的を射ているかどうかは分かりませんが、新聞を読む際にはこういうところも気を付けたいですね。

キャッシュレス QRコード決済乱立

キャッシュレス決済が次第に拡大してきてます。以前書いたように、kuniもPASMOの使用率が格段に上がって、利用回数ベースでは8割程度になってきました。ただ、残念なことに一番近いスーパーがキャッシュなので、金額ベースでは5割くらいですかね。ここだけのせいで相変らず1円玉地獄が続いています。

Suica PASMO

いわゆる交通系カードのSuica PASMOがキャッシュレス決済において一番便利だし、本命ではないかと以前書きましたが、世の中的にはやはりQRコード決済が幅を利かせているようです。というか、派手な還元キャンペーンの話題でここが目立っているだけのような気がしますが。

交通系カードの強みは、何といっても手間と時間がかからないことです。QRコードはスマホでアプリを立ち上げて、コードを読み取って、というアクションが必要で、手間も時間も交通系カードにはかなり劣っています。おまけにこの乱立状態。そのお店でどの決済が使えるのかという選択の手間みたいなものもあります。

非接触型カードと分類される交通系カードは、レジや改札でピッと決済するときに、カード上のICに充電までしてくれるんだそうです。なかなか優れものなんですね。

店舗側には別の事情

と、ここまではユーザー側の理屈です。一方の店舗側には別の理屈があります。交通系カードに対応するためには、非接触型カードの読み取り機を導入するコストがかかります。加えて、決済ごとに店舗側が手数料を負担することになります。このあたりの仕組みはクレジットカードと同じで、手数料は決済代金の3%~7%だそうです。

100%交通系カードでキャッシュレス決済になった場合のお店側の利益を考えてみましょう。売り上げの90%がコストだとしたら、利益は10%残るわけですが、そのうち、3%~7%を失う計算になります。売り上げが1000万円だとすると、100万円あがるはずの利益が30万円~70万円減少するということです。

交通系カード決済で手数料をゼロに

店舗側が嫌がる気持ちもわかりますよね。では、交通系カードが手数料をゼロにすればいいわけです。現実社会の決済データをマーケティングに利用して、ネットデータを利用したグーグルやアマゾンと同様に利益を上げようとしているのが、QRコード推進チームです。ならば、交通系カードの運用会社が共同で新会社を設立し、決済データの利活用で儲けることを目標、前提として、手数料ゼロを実現すればいいわけです。

ということで、結局kuniにとってありがたいシナリオを描いてしまいました。が、しかし、そういう構想ってないんですかね。英国でここ数年劇的にキャッシュレスを進めたのは、主要銀行が共通の非接触型デビットカードを発行し、地下鉄などの交通系カードと融合させたことだと聞きます。QRコードはほとんど普及してないそうです。日本も英国型でいいんじゃないかなぁ。楽天とSuicaの提携が節目になるかもしれません。

タンス預金は増加中?

先日、「1万円札 高額紙幣廃止 キャッシュレス決済推進」という記事を書いたところですが、週刊東洋経済でこれに関連した面白い記事を見付けました。信用金庫にお勤めの方曰く、高齢化が進む日本の地方では、タンス預金が増えてきているというのです。

マイナンバー 低金利の長期化 相続税対策

同記事によると、マイナンバーの普及や低金利の長期化、そして相続税対策といった理由から、高齢者が銀行から預金を引き揚げて、現金で家に置く、いわゆるタンス預金が増えているということです。推測ではなく、実際に預金から引き出されていく場面をとらえていますので、信憑性は高そうです。

マイナンバーについては、2021年に預貯金のマイナンバー登録が義務化される可能性が高いとか。相続税対策もそうですが、持ってる人はどんだけ持ってるかを知られるのが嫌みたいですね。お金持ちにしかわからない事情です。

記事ではさらに、「それがオレオレ詐欺のグループに狙われるんですよ」とも。最近の流行である「アポ電詐欺」の連中からしてみると、まさに絶好の高齢者ですよね。自宅に大金があるわけですから。先日流れていたニュースでも、アポ電詐欺の被害額が、たしか260万円とか言ってました。あります?普通。そんな大金が自宅に。。。ところがあるんですね。上記の理由で。

中国ではキャッシュレス決済の普及で

いずれにせよ、こういう状況はなくさないと。ということで東洋経済の記事に戻ると、中国は最近スマホ決済が一気に普及しました。すると、今では強盗がほとんどなくなったそうです。現金の消えていく中国は、犯罪者にとってまさに冬の時代ということです。

キャッシュレス決済の普及で、高齢者宅への強盗(上の話ではアポ電詐欺も含む)は抑制できそうだというわけです。オレオレ詐欺は銀行まで出かけて送金させちゃうので、キャッシュレス決済だけでは防止できそうにないですけどね。

先日書いたように、高額紙幣の廃止はキャッシュレス決済を推進するでしょうし、現金の使い勝手を悪くする作用もあります。特に保管についてはスペースの問題が出てきます。自宅に260万円、千円札で保管しようとは思わないでしょう。

新札だと100枚が約1センチになります。260万円は千円札で2600枚。約26センチになります。これだけ現金引き出してくるのも面倒くさいと思うんですが。。。それでも現金好きなお金持ちは26センチの束眺めて楽しむんですかね。

QRコードの規格統一

3/18 日本経済新聞で「QRコード統一規格、月内にも公表 コスト懸念も」という報道がありました。経済産業省と産学官が立ち上げたキャッシュレス推進協議会が29日にもQRコード決済の統一規格を発表するとのこと。時間かかりましたねぇ。やっとですか。

今回の決め事は、利用者を識別する番号の割り振り方法を定め、複数の事業者が異なる利用者に同じ番号を発行するのを避けることなんだそうです。クレジットカード並みの仕様を求めているため、セキュリティーの向上が期待できるものの、加盟店や利用者にコストが跳ね返る懸念があるとも。

キャッシュレス決済、乱立模様ですが、やっぱり最後は加盟店や利用者へのコストのところで揉めてます。QRコードに関するキャッシュレス推進協議会のここまで、いかにも日本らしい展開ですね。QRコードが先に普及した中国では不正利用が頻発。最終的にはクレジットカードなど既存の決済事業者の意見が採用されて、高コストながらセキュリティーを重視する仕組みとなった。ことも書いています。お国柄というか、まさに実装の国であることがよく分かります。まず実際にやってみて、上手くいかなかったら修正すればいいという国民性ですね。

実際の使い勝手ってどうなんでしょう

kuniはこのところ少額決済はほぼPASMOを使ってます。毎日通勤で使用するカードだから、お金のチャージには困りませんし、コンビニ等での決済はメチャ簡単・スピーディ。たまに多少お高い買い物するときはクレジットカード。クレジットカードが使えないお店に出くわしたことないですね、今のところ。

こうしてみるとスマホのQRコード決済って本当に普及するんかなぁ。というのが最近の正直な感想です。お店側の導入コストやレジでの処理スキルなどに配慮すればするほど、ユーザー側に手間が増加します。ペイペイの支払い場面の説明動画を見ましたが、店のQRコード読み込んで、支払額を入力して、お店の人に確認して、やっと送信。みたいなやりとりですね。PASMOなら、「PASMOで」って言って、カードリーダーにピッとかざしておしまい。

日本のスタンダードとkuniの個人的希望

日本では大都市に人口が集中しています。そこには世界に誇る交通網が張り巡らされていて、通勤する人、通学する人のほとんどがSUICAやPASMOといった交通系カードを持っています。てな具合に考えていくと、日本における少額決済では交通系カードを軸にして発展させていくのが正解のような気がしますね。

kuniの希望はPASMOのチャージ上限を引き上げてもらって、かつ改札機での自動チャージに使用するクレジットカードに、普通のクレジットカードが使えるようにしてもらうことです。そうなるととても便利になるんですが。

キャッシュレス決済の持つ可能性

GAFAのビジネスモデル

米国の巨人たち、いわゆるプラットフォーマーが迷走し始めています。ECサイトの購買履歴やSNSの個人の情報を利用した彼らのビジネスモデルが行き詰ってきているということのようです。最も大きな要因は、個人の情報を無料で手に入れ続けてきたことと、世界各国から価値ある情報を吸い上げておいて、各国への見返り(要するに納税)がないことです。

ネットを利用した、あまりにも画期的かつ斬新なビジネスモデルであったが故、上記の要因に気づいていなかった人や国家が今頃になって寄ってたかってケチをつけているわけですね。

ネットとリアルの規模感

経済産業省の電子商取引に関する市場調査によると、2017年の国内電子商取引は16.5兆円だそうです。EC化率は5.8%ということですから、全体では284兆円になります。ということは、残りの94.2%、267兆円がリアル世界での商取引ということになります。

GAFA等が牛耳っているデータは、実はこの16.5兆円の日本であり、267兆円の日本は手付かずということですね。日本政府が目指しているように、このうち40%がキャッシュレス決済になるとすると、約107兆円規模の購買履歴等の個人データ市場が手に入るということになります。キャッシュレス決済を制する企業はGAFAの6.5倍のデータを手にするわけです。

こう考えていくと、日本におけるキャッシュレス決済って魅力的です。ソフトバンクグループが100憶円キャンペーンで仕掛けるのも理解できるというものです。

最初に創造する米国と後から改良して稼ぐ日本

自動車や家電製品を創造したのは紛れもなく米国でした。それでも日本は後から追い付き、高い技術力で改良を重ね、世界一のブランドになったわけです。今はちょっと残念なことになってますが。。。

この辺りは多くの説明は不要でしょう。ネットの世界で想像されたプラットフォームをリアルの世界で再現しようとしている今の日本って、何だか自動車や家電業界の黎明期に似てきたような気がするのはkuniだけでしょうか。

改良されたリアル世界での仕掛け

ネットの世界でGAFAがやってきたことはもう十分に研究されています。これをリアル世界で実現していく。追い掛ける側にはメリットもたくさんあります。消費者も既にそのビジネスモデルを理解していますし、ポイント還元という形でちゃんと対価も払っています。そして情報銀行も並行して整備される、情報の管理態勢は確立することでしょう。

今GAFAが苦しんでいる課題をあらかじめきちっと抑えながら、リアル世界のプラットフォームを構築できるわけです。「みずほFGが地銀60行と組んでスマホ決済に参入」というニュースがありましたが、銀行というお堅いイメージで情報銀行を兼営できることは一つの強みですね。