金融庁 銀行カードローンの実態調査結果を公表

上限は年収半分、設定が5割超 銀行カードローン

日本経済新聞が標記の件を7面で報じています。金融庁が22日「銀行カードローンの実態調査結果について」を公表したという記事。紙面ではかなり小さな取り扱いです。スルガ銀行のニュースもあり、銀行の不祥事に注目が集まりそうなこの場面、もう少しまじめに取り上げるべきですね。多くの読者がこの話題もセットで理解するべきです。

公表の内容

金融庁の公表内容、総括というページの主な記述を抜粋してみました。

  • 全体として、「申し合わせ」や「中間とりまとめ」を踏まえた融資審査態勢の見直しや広告宣伝の見直し等、業務運営の改善に向けた取組みが進んでいる。
  • 融資実行後の途上管理については、年収証明書の再取得等の動きが見られるが、取組みの進んでいない銀行が多く、進展を注視していく必要がある。
  • 今回の調査で取組みが不十分と認められた点については、ベストプラクティスの収集・共有や対話等を通じて具体的な改善を促し、業界全体の業務運営水準の引き
    上げに向けた取組みにつなげていく。

押さえておくべきポイント

基本的には、ここまでの金融庁のモニタリングや指導の結果、これだけ改善している。といった内容になっていますが、それとは逆に、なおこれだけの銀行が課題を抱えているという視点が必要でしょう。

カードローンの問題点。そもそもは80年代後半から急成長した消費者金融、いわゆるサラ金ですね。既存金融界のパイを食い散らかし、自己破産を大量に発生させたツケで、規制でがんじがらめに。立ち行かなくなった業者はメガバンク等の銀行傘下に取り込まれていきました。

そのときの規制がいわゆる貸金業法の「総量規制」というやつです。一定の金額を超える貸付をするには源泉徴収票等の提出を受けること、年収等の3分の1を超える貸付を禁止する、などの過剰な貸付を抑制するための法改正でした。

ところが、この総量規制、貸金業者ではない銀行には適用されないのです。

消費者金融はダメだけど銀行はやって良い?

で、このところ一気に貸し出しを増やしてきた銀行のカードローン、銀行にとっては濡れ手に粟の美味しい商売。消費者金融は規制したけど、銀行は同じことをやっても規制を受けない。ここが変ということです。

このカードローンの貸出残高の増加にあわせて、これまで減少し続けてきた自己破産の申し立て数が反転、増加してきました。。高金利で多額のお金をカードローンで借りて、破産して人生が壊れていく人達の事例が、既にたくさん報告されています。

従来のビジネスでは立ち行かなくなった銀行が、高収益のビジネスに活路を見いだそうとした、という点でアパートローンと全く同じなのです。

金融庁の公表した報告書とは

金融庁は、以前から消費者金融と違って銀行は高いガバナンスがあり、規制で縛らなくとも節度ある対応ができる。という見解のようです。

しかしながら、ガバナンスが効いているとは、とうてい思えない銀行のニュースが、毎日のように報じられています。そろそろ金融庁も立ち位置変えないと。銀行さんとグルに見えてきましたよ。。。

また出た スルガ銀行

ここまでの振り返り

前年度までは地銀の中の優等生として、メディアや金融庁からも高い評価を得ていた当行でしたが、今年度に入って評価は急変。5月にはスマートデイズへのシェアハウス関連融資における審査書類の改竄や偽造など、不適切な融資の実体が表面化しました。

その後スマートデイズ社の破綻もあり、外部の弁護士で構成する第三者委員会を設置して、夏までに不正行為などの実体を調査するとしていました。

第三者委員会による調査結果 1兆円

その第三者委員会の調査の概要が21日分かったと、日本経済新聞が報じたわけです。概要としていることから、委員会の正式な発表ではないようですね。リーク?

同行の融資総額は3兆1500億円、そのうちの1兆円が審査書類の改竄など不適切な行為に基づく融資だったとのこと。はぁ?1/3が「不適切」って、ハンパない。

不適切、という表現で報じられていますが、法令違反のレベルの融資も相当量ありそうです。不適切な営業や審査に関与した行員は全体の2割以上にのぼるそうです。

普通、この2割の営業員で収益の過半を稼ぎ出すというのが、パレートの法則ですよね。前期あたりの稼ぎはほぼ不適切な融資ということでしょう。

カードローンの融資資金を預金に

記事には他にもいろいろ書かれてますが、「カードローンの融資資金を預金に」というのもありましたね。

そもそもカードローン自体がサラ金を銀行の看板のもとで行っており、自己破産が増加に転じてきたと批判されている中、その融資した資金を預金させているということのようです。先日どこやらの銀行が批判を浴びた歩積み両建てってやつですか。それを個人向けカードローンでですと。

明らかに組織として行ってきた不正と言っていいでしょう。取締役の責任は徹底的に追及されるべきですし、執行部隊の幹部も同様です。いやいや、不適切営業行為のデパート状態ですね。酷すぎます。

フィデューシャリー・デューティー(FD)やら顧客本位の業務運営とやらで、金融庁との間でモニタリング対応(アンケートへの回答や直接金融庁に足を運んでの説明など)とかしながら、さぞ美麗なご報告をしてたんでしょうね。

その裏にはこんな業務実体があったとは。これって、行政の責任問うのかなぁ。

ガバナンス改革、次は監査役会  金融庁、開示ルール拡充へ

金融庁が情報開示ルールを拡充

金融庁は上場企業の監査役会の情報開示ルールを拡充する。会計不正など相次ぐ企業不祥事を踏まえ、経営をチェックする監査役会の活動をガラス張りにしてコーポレートガバナンス(企業統治)強化につなげる。

8月20日(月)日本経済新聞に掲載された記事です。金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループが6月に公表した報告書で、監査役会の開催頻度や各監査役の出席状況、議論の内容などの開示を求めていた。これを受けての金融庁の次のアクションということのようですが。

金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループの報告書を読んでみた

そこでその報告書を読んでみましたが、決して監査役会のことだけを言っているわけではなく、企業情報の開示の包括的な検討結果になっていました。この報告書を参考に、金融庁はまず監査役会の機能に注目し、上場企業のガバナンス情報を充実させる目的で、監査役会の活動状況を可能な限り具体的にに開示させようと考えているということのようです。

報告書が示す監査役会に関する開示すべき事項

審議会の報告書で指摘されている、開示すべき主な項目は以下の通りです。

  • 会計監査人との連携において議論されたこと、監査人の指摘に対してどう対応したかなど(会計監査に関する情報の充実)
  • 監査役会等による監査人の選任・再任の方針および理由ならびに監査人監査の評価
  • 監査役会等が監査報酬額に同意した理由
  • 監査役会等の活動の実効性の判断のために必要とされる、監査役会等の活動状況(監査役会等の開催頻度・主な検討事項、個々の監査役等の出席状況、常勤監査役の活動等)

四半期開示についても触れてたよ

審議会の報告書では四半期開示に関しても触れられていました。賛成・反対の意見が両論併記されており、結果、現時点での四半期開示制度の見直しは行わず、引き続きそのあり方を検討としています。

知らなかった。英国、フランスではそれぞれ2014年、2015年に四半期開示制度を廃止してるんですね。最近では米国トランプ大統領が廃止について検討を指示したというニュースがありました。今回のトランプの指示は決してムチャな指示ではなかったようです

次から次へと後を絶たない企業不祥事。それを受けて求められるガバナンスの強化。止まりませんね当分。

銀行の人材紹介業務

地方銀行に人材紹介のノウハウを指南

8月19日付け日本経済新聞に「地方企業に人材供給」という記事がありました。ある人材紹介会社が地方銀行に人材データベースを提供するほか、社員を派遣し、人材紹介のノウハウを指南する。らしいです。どうやら銀行による人材紹介業務、具体的に動き始めたみたいです。

このところの銀行の経営戦略、「取引先への人材紹介や事業承継、販路開拓、M&Aなどのコンサルティングで、総合的な取引を展開して収益につなげていく」といったものをよく見ます。本業だけではやっていけないわけです。

3月の監督指針改正により解禁

他の業種に比べて、公共性が極めて高い銀行業は、その経営の健全性を確保するために、取り扱うことのできる業務が法律により制限されています。そのような法規制の下でも、一部の業務が解禁されており(銀行界ではこれらの業務を付随業務といい、銀行固有業務と切り分けています)、先ほど紹介した、コンサルティング業務、ビジネスマッチング業務、M&Aなどを以前から取り扱ってきました。

記事の中でも軽く紹介されてましたが、金融庁は今年3月、「主要行等向けの総合的な監督指針」および「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」を一部改正しました。主な改正点が「銀行や銀行の子会社における取引先企業に対する人材紹介業務の取扱いが可能であることを明確化した」というものです。

この監督指針の改正を見たとき、行間に「自行の行員を取引先に紹介することで計画的に人員削減を進めなさい」というメッセージを読んでしまい、思わず吹いてしまった記憶があります。しかし、銀行界は本当に純粋な業務として人材紹介業務を推進していくんですね。けど、自行の行員を取引先に紹介することもできるんですよね。今度、銀行の人に聞いてみるつもりです。

エドテック。。。

次代担う人材育成を「エドテック」で

8月18日付け日本経済新聞の社説です。「エドテック」ってご存知でしたか?

Edtech = Education(教育)とTechnology(技術)を組み合わせた造語なんですね。いわゆるバズワードといっていいでしょうか。バズワードというのは「日本語での意味は、もっともらしいけれど実際には定義や意味があいまいな用語のことで、英語では、特定の期間や分野の中でとても人気となった言葉のことである(ウィキペディア)。

前置きが長くなりましたが、要するに従来型の教育がITの力を借りて進化していくということ。金融の世界ではフィンテックが注目されていますが、これと同じってことですね。こういうのを「X-テック」と総称するそうで、他にも、AdTech(広告)、AgriTech(農業)、GovTech(政府)、InsurTech(保険)、MedTech(医療)、RETech(不動産)などがあるらしいです。いや、おそらく各業種にすべてこういうワードがあるんでしょう。

X-テックをイメージする

これらX-テックの共通点は「 特定 の 事業者 が 独占 し て い た 一般 消費者 との 接点( チャネル) を 主 に インターネット 関連 技術 によって 広げ、 さらに インターネット を通じて 得 られ た データ を 活用 する こと で、 新た な ビジネス モデル や サービス を 実現 し て いる、 という もの です。(増島雅和; 堀天子; 石川貴教; 白根央; 飯島隆博. FinTechの法律 日経BP社より引用)」だそうです。

例えば、エドテックと、多くの企業で既に一般的になっているE-ラーニングとの違いは、インターネットをプラットフォームにして、そこに集まるビッグデータを活用することで新たなビジネスモデルを生み出している。ここにあるようです。

どうでしょう。エドテックやX-テック、イメージできましたでしょうか。50歳過ぎると、新しいテクノロジーについていくのは大変です。とはいうものの、仕事2.0はこういう分野にヒントがありそうな気がします。自分自身の勉強にもなるので、この手の話題、今後も積極的に取り上げていきたいと思います。