株式会社オルツ ストップ安売り気配

当ブログで一昨日取り上げた株式会社オルツ。連休明けの本日、朝から売りが殺到しストップ安売り気配となっています。やはり、投資家(株主)にとってかなりのインパクトのある材料として認識されたようですね。

売り気配

この記事を書いている時点で、337円のストップ安売り気配となっており、朝から一度も値を付けられません(前週末の株価は417円ですから80円安のストップ安)。1100万株の売り長(買いはわずか3万株ほど)という状況が事の大きさを表しています。

監査法人 幹事証券 東証

昨日も一言だけ書きましたが、この会社、上場の際に既に不正が行われていた可能性が高いと思われます。だとすると、上場審査がどのように行われていたのかが問われることになります。ちなみに監査法人はシドーという会社で、IPO時の幹事証券(上場に向けた支援等を行う証券会社)は大和証券のようです。

幹事証券では通常、公開引受部とか、公開審査部という部署があり、公開予定企業が公開させて良い企業(公開に値する)かどうかを、長い時間かけて審査していきます。その結果をもとに幹事証券の経営判断として取引所に上場申請をさせるわけです。それを受けて東証でも同様の審査が行われます。

監査法人→幹事証券→東証、という順に会計処理の妥当性をチェックし、上場するに値するかどうかを審査していくため、上場前から粉飾決算が行われていたとすると、彼らの責任は当然追及されることになります。(この記事はあくまで粉飾上場だったとすると、という前提で書いています。)

株式会社オルツ 粉飾決算か 第三者委員会を設置

株式会社オルツは4/25、「第三者委員会設置及び 2025年 12⽉期 第1四半期決算短信の開⽰が四半期末後 45⽇を超えることに関するお知らせ」を公表しました。売上が過⼤に計上されている可能性が認められたためとしています。

株式会社オルツ

オルツは、個人の行動やパターンを学習してカスタマイズされたAI(人工知能)であるパーソナルAI(PAI)や、膨大なテキストデータを学習して自然言語処理を実行する大規模言語モデル(LLM)の開発などを手がける東証グロース上場企業です。昨年10月に上場したばかりです。

粉飾決算

同社の「 AI GIJIROKU 」の有料アカウントに関し、⼀部の販売パートナーから受注し計上した売上について、有料アカウントが実際には利⽤されていないなど、売上が過⼤に計上されている可能性が認められたとのこと。

過去の業績を見ても、毎期売上はかなりの勢いで伸びていますが、利益はマイナスが拡大しています。確かに違和感のある状況。現状では粉飾決算が確定しているわけではありませんが、その可能性は高そうです。売り上げの過大計上だけで済むのか、架空循環取引などが出てくるのか。「今⽉初旬より、証券取引等監視委員会の調査を受けており、これが端緒となった」というのも気になります。

そして何より問題は上場して半年しか経っていないこと。いわゆる粉飾上場の可能性も高いわけです。投資家はたまったものではありません。ここでも東証の上場審査はどうなってるんだというお話に(幹事証券もだけど)。当事案、かなり大きな問題に発展しそうです。

株式会社創建エース 特別調査委員会を設置

少し前の話題になりますが、株式会社創建エースは3/19、「特別調査委員会設置に関するお知らせ」を公表しました。昨年から証券取引等監視委員会開示検査課から開示検査を受けており、今回3/7に、外部専門家による調査を行うよう要請があったということです。3/19付けで特別調査委員会を設置済みです。

株式会社創建エース

株式会社創建エースは各種施設の設計・建設などを行う建設事業が中核。昨年7月、クリニックの会計事務などを受託するメディカルサポートを子会社化した東証スタンダード上場企業です。これまでかなり激しく社名変更を繰り返してます。96年、キーイングホームに、2010年、クレアホールディングスに、さらに、2021年、中小企業ホールディングスに、2023年、創建エースに商号変更といった具合。

調査要請の概要

同社子会社における、2021年9月から2023年6月末日までの取引の実在性、および取引先に対する債権の資産性について疑義がある、というのが監視委員会の指摘。会社側は現経営陣が就任する前の問題(中小企業ホールディングス時代の事案)であるとはしていますが。

監視委員会がここまでやるということは、ほぼ答えは出ているようなものかと。同社の直近の株価はただの22円。100円割れの株価は昔はよく倒産株価などといわれました。いわゆる箱企業なんて言われる、過去の経営陣が食い散らかしてきた企業のようですね。架空取引や不正な会計処理などがこの後出てくるものと思われます。

サイバーエージェント 子会社サイバーアウルで不適切な会計処理が発覚

サイバーエージェントは3/26、「社内調査委員会の設置に関するお知らせ」を公表しました。100%子会社である株式会社CyberOwl(サイバーアウル)において、不適切な会計処理が判明したとのこと。この事案の解明等を目的に、外部の専門家を含む社内調査委員会を設置するとしています。

サイバーエージェント

サイバーエージェントは独立系のインターネット広告代理店。インターネット広告の制作・運用のほか、スマートフォンゲームの開発・運営や、スマートフォンなどからも視聴できるインターネットTV「ABEMA」なども手掛ける東証プライム上場企業です。

事案の概要

今回開示されたのは冒頭に書いた、「不適切な会計処理が判明した」という事実のみ。どのような内容なのかは全く示されていません。同日、「サイバーエージェントのある事業をサイバーアウルに承継することを中止する」なども開示されていることから、当該事業継承の手続きを進める中で発覚したものと思われます。

このての子会社で不適切会計処理が見つかるケースでは、買収した子会社が買収以前に行っていた不正会計等が今になって出てきました、みたいなパターンが多いですよね。しかし、このサイバーアウルはもともとサイバーエージェントが設立した会社のようで、役員も全員サイバーエージェント出身者。買収した企業だからという言い訳はできません。

高圧ガス工業株式会社 株式売出しを中止

高圧ガス工業は3/4、「株式売出しの中止に関するお知らせ」を公表しました。2/21に既存株主(デンカや金融機関など)の持ち株を売り出すとしていたんですが、これを中止するとのこと。連結子会社において、財務情報に関連して確認すべき事項が発生したためとしています。

高圧ガス工業

高圧ガス工業は、鉄鋼製品の溶接・溶断に用いられる溶解アセチレンを主力とする産業用ガスメーカー。溶解アセチレンのシェアは国内トップクラスで、このほか、接着剤や塗料などの化成品を手掛ける東証プライム上場企業です。

中止の理由は

売り出し人はデンカや三菱UFJ銀行、三洋化成など、政策保有株の売却ということでしょうかね。この公表を受けて、短期的な株式需給の悪化リスクを警戒した売りが膨らみ株価は850円処から100円ほど下げていました。今回の中止の知らせで株価は急騰し、ほぼ元の水準まで戻っています。

売り出し中止の理由は、「連結子会社の財務情報に関連して確認すべき事項が発生したため」とだけ説明されており、「当該確認に時間を要するも のと判断した」ということです。先日、JEH(Japan Eyewear Holdings)が売り出しを中止したのは、役員のインサイダー取引が原因でしたね。

プライム市場へ上場市場区分を変更するに際して「未公開情報を知りながら買い」、でしたが、今回は「連結子会社の財務情報に関連して確認すべき事項」としていますので、インサイダーではなさそうです。会計不正でも出てくるんでしょうか。