日本取引所CEO処分 内規違反

またまた証券取引所の不始末です。清田瞭(きよた あきら)氏は日本取引所グループの最高経営責任者であり、3年前までは東京証券取引所の社長でもあった人物。で、もともとは大和証券の副社長までやられた人で、現在も大和証券グループ本社の名誉会長なのかな?

日本取引所グループの内規に違反

上場インフラファンドの取引で同社の内規に違反したと発表。なんとこのCEOの取引、投資金額は約1億5000万円。2つのインフラファンドへの投資で、分配金を含め約2000万円の利益を得たが、全額を日本赤十字社に寄付するんだそうな。

このCEO、インサイダー取引に関しては非常に厳しい管理を要求されている証券会社出身であり、現在はこうした上場商品に関する開示情報を一手に握っている、胴元である取引所のトップですよ。普通に考えればウォールの中にいる人物です。こんな取引ありえないでしょ。証券界ではウォールの中の人たちは証券取引全てを禁止されるものです。

「内規ではETFは認められているが、インフラファンドは認められていない」と説明しているみたいですが、これは内規ではなく、法令で定められていることです。平成26年からインサイダー取引規制の対象商品である特定有価証券等になったはず。REITと同じですね。内規だから大したことではない、ということではありません。常に自らを正当化しようとするこのバイアス。気に入りませんね。

やっぱり大和証券が注文受注したの?

インサイダー取引を疑われても仕方がない取引ですが、やっぱりこの取引注文を受注したのは大和証券さんですかね?取引所の役員ともなれば、内部者に準じた取り扱いはしているものと思われますが、大和さんの受注には問題はなかったんですかね。しれーっと別の証券会社に発注していたら、これはこれで面白いんですが。

反対売買して利益をどこかに寄付、社内処分したのでこれでおしまい?監視委員会はこの件どう見てるんでしょう。インサイダー情報がなかったかどうか、受注した証券会社の受注態勢に問題はなかったのか。一応、特別調査課あたりで調べておいた方が良いのでは?

一連の不始末をメモ

今年2月には、上場を許していた欠陥商品VIXインバースで、投資家が大きな被害を受けました。また、10月には東証システム障害で半日から一日、主に大手証券から注文が取り次げなくなりました。そして今回のCEOによるインサイダー取引もどきの発生。やっぱりこの会社おかしくなってきてると思いますよ。

日立化成が調査報告書を公表

日産自動車カルロス・ゴーン氏のニュース、やはり凄いことになってますね。ルノー、三菱自動車まではまぁ当然のことながら、フランス政府までを含めた国際問題に発展しそうな勢いです。こうした加熱する日産報道に隠れて、11月22日、日立化成が特別調査委員会の調査報告書を公表し、併せて役員の処分等についても発表しています。

441ページの調査報告書から見えてくるもの

30年以上にわたり不正が行われ、不正発覚後も不正を継続したり、隠蔽したりと、やりたい放題。データ改ざん等の不正は全7事業所で行われ、不正の対象製品は全127製品中42製品。出荷先は2,000社を超えるとか。今回公表された不正が行われていた期間や、事業所ごとの不正の状況は酷すぎます。関与した従業員数も加味するとスルガ銀行級と言えるんじゃないでしょうか。

2008年に不正を発見した際のことを報告書では2008年問題と名付けています。その際、製品の品質に問題があったことを発見しながらも、顧客にその事実を伝えようとしなかったことが、その後に大きな影響を与えたようです。「顧客から苦情等が来ていないから、顧客には迷惑をかけていない」という発想で済ませてるんですね。

昨年以来、企業の不正・不祥事が多発しましたが、そうした他の企業が、納入先顧客の開示や、製品の交換といった顧客対応を優先しているのを見て、やっと自分たちの誠意のなさに気が付き始め、経営に報告が上がることになったのではないかと感じました。

何かとタイミングの良過ぎる日立化成

日立化成経営陣が最初に不正の報告を受けたのは、6月13日だそうです。しかしながら6月19日の株主総会では報告せず、総会が終了した後に有価証券報告書で開示しています。この開示の在り方についてはどうなんだかなぁって感じですし、不正の公表に伴う世間からの批判をできるだけ受けないようにという意図も感じてしまいます。

そして今回の特別調査委員会の報告書公表と役員の処分。通常であればもっと大騒ぎになっていそうなもんですが、ほとんどのメディアがゴーン氏を追いかけてるんでしょう。紙面等での取り扱いが非常に少なかったですね。なんか日立化成タイミング良過ぎなんですよね。ニュースにするにも鉛蓄電池や粉末冶金製品なんかより、数十億円の所得隠し(有価証券報告書への未記載)の方がバリューがあるってことでしょうけど。

kuniもまだ報告書全部読めてないんですが、内部通報に関しては面白いお話がありました。次回はこれを取り上げようと思います。

日産自動車 スルガ銀行 RIZAP

このところ、ほぼ毎週のように新たな企業の不正・不祥事が伝えられ、ニュースの主役が交代しています。今週は日産自動車がほぼ独占状態でしょうか。日産自動車に関しては、その後も新たな不正がぞろぞろ出てきてるみたいですし、まだまだ目が離せません。

カルロス・ゴーン氏、 岡野 光喜氏、 瀬戸 健氏

それぞれの企業を成長させてきたトップです。まず共通しているのは、非常に有能であり、推進力、リーダーシップのある経営者であるということでしょう。と同時に、コンプライアンスやガバナンスといった方面には、ほとんど興味を示さなかった人たちのようです。報道された事案や不祥事の形態は違いますが、基本的には三者とも同根だと思っています。

もう一つ共通しているのは、残念なことに、トップに対してけん制を効かせることができない状態。企業の権限がトップに集中しすぎていたということもあげられると思います。そのため、他の取締役や監査役が牽制を効かせることができない。で、暴走を許してしまった。まぁ、急成長する企業ってこういう傾向は強いと思いますけどね。

成長期におけるガバナンスの重要性

共通点の3つ目は、大きく成長した(成功した)直後におかしくなってしまったことです。コンプライアンスやガバナンスの効いていない企業が大きく成長する(成功する)とき、そのプロセスにおいて既に不正・不祥事が(失敗が)生まれていることが少なくありません。大きく成長するときって、多くのリスクを取りにいってるわけですから、当然と言えば当然かもしれません。

みなさんは昆虫や爬虫類とかの脱皮ってご存知でしょうか。セミの抜け殻だったら見たことあるでしょう。これらの生き物は体が大きくなったり、外形を変える時など、それまで来ていた皮を脱ぎ、成長します。企業もこれと同じだと思うんです。

企業が大きく成長する際、ちゃんとその成長したサイズや、変化した外形に適した、新たな外皮を身に着ける必要があります。この時に必要になる外皮こそがガバナンスなんです。適切なタイミングでガバナンスを一段階上のレベルに引き上げることができたかどうか。日産自動車とスルガ銀行はその機会を逸してしまったということです。RIZAPはまさに今、ガバナンスを見直そうとしているようですが、やや遅れた感はありますね。

こうやって失敗を後から評価するのは簡単です。現実にはトップの暴走を許さない、取ってはならないリスクを取らせないために、何が必要になるのか。その辺りの現場の話は次回にでも。

スルガ銀行 社外取締役の法的責任

当ブログでも以前取り上げた、金融庁と日本取引所グループが作成したコーポレートガバナンス・コード。上場企業に対して求めたガバナンスの教科書みたいなものです。そのなかでは、取締役や取締役会、監査役などに求められる役割等が示されていますが、社外取締役に求められる役割・責務についても触れられています。

いたるところで「社外取締役を含む取締役は」という主語が使われていることに加え、原則4ー7では、社外取締役に求める役割や責務として次のようなことが書かれています。

  1. 経営の方針や経営改善について、自らの知見に基づき、会社の持続的な成長を促し中長期的な企業価値の向上を図る、との観点からの助言を行うこと
  2. 経営陣幹部の選解任その他の取締役会の重要な意思決定を通じ、経営の監督を行うこと
  3. 会社と経営陣・支配株主等との間の利益相反を監督すること
  4. 経営陣・支配株主から独立した立場で、少数株主をはじめとするステークホルダーの意見を取締役会に適切に反映させること

社外取締役にはこれほどの役割・責務が求められているわけです。ところが、今回のスルガ銀行の「第三者委員会の報告書」では社外取締役の責任を問うていません。これにkuniは非常に違和感を持っています。

第三者委員会報告書での指摘

  • 社外取締役は個別の違法行為等を知り、または知り得た証拠は見当たらない
  • 知り得た情報は社外取締役側から主体的に収集活動をして得られたものではない
  • 本質的な問題を具体的に知り又は知り得たにもかかわらず、これを放置したといった事情も見当たらない

以上3点を抜粋してみました。唯一の情報収集機会である取締役会の席では、個別の違法行為等を知り得ることはできず、知っていたのに何もしていないということではないので、法的責任は問わないと言っているわけです。加えて、社外取締役が主体的に情報収集したという事実もないと言っています。

違法行為等の情報を知ってしまうと責任を問われる可能性があるんだとしたら、だれが進んで調査、情報収集します?なにもせず、我関せずを貫いた方が得じゃないですか。こうなると何のために社外取締役を置いているのか分かりません。先に見たコーポレートガバナンス・コードが要求する役割・責務と、第三者委員会報告書の温度差、違和感あるでしょ。

「社外取締役として主体的に情報収集した証跡は十分認められるものの、取締役以下社内の協力を得られることなく、違法行為等を知るにはいたっていない。したがって、社外取締役に法的責任は認められないと思料する。」という実態であれば納得するんですけどね。

日産自動車 カルロス・ゴーン会長逮捕

日産自動車のカルロス・ゴーン会長が逮捕されました。羽田空港に降り立ったところを逮捕されたようですね。世界を驚かせるニュースが日本発で・・・。しかしまた何で?と思いませんか。報酬を過少に申告したとか、オランダに投資した高級住宅を無償で使用していたとか。

内部通報から司法取引へ

以前の記事でも紹介したように、内部通報による発見と、司法取引を利用した企業としてのリスクマネジメント戦略を見事にやってのけたという感じですね。まさにこれからのガバナンスや企業法務のお手本になる事件と言えそうです。あっ、もちろん司法取引については、まだ実際に確認されているわけではありませんし、法人としての日産自動車の処罰がどうなるか、現時点では不明です。

日本版司法取引が行われたということであれば、2例目ということになりますか。第1号は三菱日立パワーシステムズの不正競争防止法違反の事件だと言われています。内部通報により社内にある犯罪を一早く発見し、当局の捜査に協力する見返りに企業としてのレピュテーショナルリスクを最小化する。この事例では法人としては立件されなかったと思います。

フランス政府も交えた事件の背景・真相

ルノーの大株主であるフランス政府、特にマクロン大統領との不仲説や、マクロン大統領がゴーン氏を介して、ルノーに日産自動車と三菱自動車を統合させ、手に入れようとしている。などといった話は以前から何度も出ていました。今回の事件に関しても、こうした背景も取りざたされるでしょうし、地検の動きとかを考えると国際政治も絡んでいそうな感じです。事件の真相をめぐって、マスコミは大はしゃぎでしょうね。

若い人にはピンと来ないかもしれませんが、20年ほど前に日産が傾いたとき、大手の自動車メーカーから見放され、ルノーの傘下に入るしかなかったんです。その時は誰もが、「何でルノーなんかに」と思ったもんです。それくらいまずいことになっていたんです。

そこからゴーン氏の手腕により業績がV字回復したのも事実で、日本では珍しいと言っていいほど、受け入れられてきた外国人経営者でした。しかし、ここまで回復してくると、日産自動車がルノーなんかの傘下にいること自体、不快に思う経営陣もいたはず。記者会見で出ていた質問「クーデターではないのか?」という面も確かに気になりますね。

これから次第に事件の真相がわかってくると思いますが、やっぱり一番おいしいのはマスコミですかね。間違いなく餅代は稼げるでしょう。