2007年の判例。モリテックス株主総会における株主に対するクオカードの贈呈は、「株式会社は何人に対しても、株主の権利の行使に関し、財産上の利益の供与をしてはならない」とする利益供与の禁止(会社法第120条第1項)に抵触していると判断されました。
当時はサプライズ
従来は、株主による議決権の行使を促進するための粗品の進呈については、適法との考え方が多数派だったようです。より多数の株主が総会に参加する、意思表示することを促進する効果が期待でき、株主全体の利益に資するからという考え方です。
そのため、当時はサプライズだったようです。裁判所が示した判断は、利益供与は許されないという原則を確認したうえで、次の3要件を満たす場合は例外として許容されるという考え方です。
例外的に許容
① その利益が株主の権利行使に影響を及ぼす恐れのない正当な理由に基づいている
② その額が社会通念上許容される範囲のもの
③ 利益供与により会社の財産的基礎に影響を与えるものではない
クオカードの額は2000円とか3000円が相場のようですので、②③については大丈夫そうです。問題は①。会社側提案と株主提案が競合する場合(通常はそうですよね)、開催者側は自身の提案を支持してほしいわけですから、①を巡って利益供与に該当するかどうかが判断されます。
モリテックスの場合は、クオカードの贈呈を表明したハガキに「重要」と記載して、「是非とも、会社提案にご賛同の上、議決権を行使していただきたく・・・」などと記載していたことでアウト判定になったらしいです。「クレアHDがアンケートと称して」贈呈するのは、この辺りを考慮しているのかと。
基本的には利益供与という判断になりそうな構造のように思えます。プラコーもクレアも、一旦総会で決議されたとしても、後にこの伝家の宝刀でバッサリということもありそうです。