フィンテックに規制の壁 「給与前払い」

9/5 日本経済新聞に、給与前払いサービスが急拡大しているという記事。これに対して現行の法律が追い付いていないという指摘がされています。

「給与前払い」という言葉を見たとき、「前借り」だろうよ、と思わずつぶやいてしまいました。また銀行が抵抗感のない言い回しに置き換えて、ヤバい商売やってんのか、と受け止めてしまったわけですね。

「前払い」と「前借り」の違い

気になってこの給与前払いサービスなるもの、調べてみました。このサービスにおける「前払い」とは、従業員が既に労働した分の給与を給与支払日よりも前に支払うことであり、「前借り(会社から見れば前貸し)」とは、従業員がこれから働いて得られる給与を、翌月以降の給与を担保としてお金を借りること。どうやらそういうことらしいです。

何でもやっぱりちゃんと調べてみるもんですね。このサービスの位置づけは、あくまで会社の福利厚生の一環として導入する制度であり、従業員が会社からお金を借りる制度ではありません。と、叱られているかのようなくだりまで。

また、多くのアルバイト情報サイトには、「給与前払いOK」というチェック項目が既にあるんだそうです。

会社側にもメリット

利用者にとってのメリットについては、記事を参考にしてもらうとして、会社側にも相当メリットがあるようなので、以下に整理してみます。

  1. 求人応募者の増加
  2. 定着率の向上(離職率の低下)
  3. 採用コストの削減
  4. 社員等の金銭問題の解決に役立つ

こんな感じ、らしいです。

特に最後のスタッフ社員等の金銭問題の解決って、良いかもしれませんね。社員が下手に借金してくるくらいなら、このサービス使ってもらった方が良い。借金のトラブルって意外に多いんですよ。

と、ここまで調べてみて、最初に記事を読んだときとは、全く見え方が変わりました。物事きちんと理解してから意見しなきゃ、という自己反省文でした。

最後に、借金には当たらないというものの、現行の法律では記事が指摘するように、問題になることがありそうです。また、このサービス、既にかなり乱立模様ですので、怪しいスキームも混じっているかもしれません。

利用されるのは主に若い人たちだと思いますが、サービスの内容、しっかり理解して使ってください。

オープンAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェイス)

本日の日経新聞にも出てましたが、最近ちょくちょくこの「API」という言葉を目にします。ある程度どんなものか知ってた方がいいと思いますので、私kuniが説明できる範囲で書いてみようと思います。

オープンAPIとは何か

みなさんの身近なところでは、あるお店や会社のホームページで、その所在を示すページをクリックすると、グーグルマップが埋め込まれている仕掛けって、見たことありますよね。Aという会社だとすると、開いているサイトはA社のサイトなのに、全く関係ないグーグルのアプリケーションであるグーグルマップが使えるようになっている訳です。これがAPIの基本的な仕掛けです。言葉で表現すると、「グーグルが外部企業に、APIを通じて、自社サービスの機能を提供しています」となります。

今年改正された銀行法はAPI提供を銀行の努力義務に

改正銀行法は銀行や信用金庫に対して、オープンAPI提供の努力義務を課しました。銀行システムに接続する企業は登録制になるものの、これまでアクセスすることが難しかった銀行がAPIを通じて外部と容易につながることになります。

どのようなサービスが提供されるのか

これに関してはまだ勉強不足です。というかそのようなアイデアがkuniにはありませんので。銀行が本来持っている機能、たとえば決済機能に、外部から接続しようとする企業が、どのような機能を組み合わせていくのかがキモということです。

ネットで商品を販売するポータルであれば、商品選択後、その同じポータル上から銀行を選択、自分の銀行口座で決済するイメージ、これが基本です。先ほどのグーグルの例で言うと、「銀行が外部企業に、APIを通じて、自社サービスの機能を提供する」わけです。

ここにどのような機能を新たに付加することが出来るか。銀行が盛んにスタートアップ企業と連携していますが、彼らによって持ち込まれるアイデア次第で、これまでになかった新しいビジネスが創造されそうだ、ということですね。

なぜ、スタートアップ企業なのか。斬新なアイデアは既存のサービスと競合したり摩擦を起こします(リープフロッグ現象の記事でも書きましたね)。だから、銀行が考えるべきではなく、しがらみのないスタートアップ企業が必要なんです。

「オープンAPI」、、、何となくイメージ湧きましたでしょうか?

キャッシュレス決済 第4回

第3回までのお話をちょっとまとめてみると

第2回で、キャッシュレス推進により、さまざまなメリットがあると書きました。たとえば「実店舗等の無人化や省力化」という期待メリットがあるということは、現状ここに膨大なコストが掛かっているということです。報告書では主にモノを売る小売店舗をイメージしていますが、銀行店舗やATMに関しても同じことが言えます。

一方で、第3回では、日本でキャッシュレスが進まない理由として、「ATMの利便性が高く、現金の入手が容易」をあげています。「銀行」を主語にして頭を整理しなおしてみると、話が繋がってきそうです。

まずは大幅なコストダウンの実現

キャッシュレス決済の推進によるフィンテックへの取り組みというと、まだまだそれでどれだけ儲かるのっていうゴールイメージは想像しにくいと思いますが、少なくとも大幅なコスト削減までは目途が立ちそうですよね。

昨年の秋口以降、メガバンクが一斉に大幅な人員削減、店舗の整理やATMの廃止を公表し始めました。銀行としては、キャッシュレス決済は他業種からの参入もあり、避けて通れない。であれば、スタートアップ企業と連携して自らキャッシュレス決済に本気で取り組み、少なくとも従業員、店舗、ATMの大幅な削減については実現できそうだ、と踏んだのではないかと思われます。

メガバンクの取締役会で、フィンテックへの取り組みについてプレゼンする場面をイメージしてください。フィンテックを薔薇色に語ってもいまいち全容が想像できない、理解できない。会議参加者から合意を取り付けるのはかなり難しいと思います。しかしながら、キャッシュレス決済の導入により、店舗が、ATMが、こんなに削減可能で、そのコストダウン総額は・・・。このシナリオは合意が得やすいんじゃないかと。あくまでkuniの想像ですよ。

国民にとっての便利なインフラ=銀行にとっての負の遺産 ⇒ キャッシュレス決済による利便性の提供=従業員、店舗、ATMの廃止による大幅なコスト削減。この関係を理解したうえで、銀行等のキャッシュレス決済が、今後どんなふうに展開していくのか、見ていきましょう。

(第4回 終わり)

キャッシュレス決済 第3回

日本でキャッシュレス決済が普及しにくい理由

前回軽く触れましたが、普及しにくい理由を再掲。

  1. 盗難の少なさや、現金を落としても返ってくると言われる「治安の良さ」
  2. きれいな紙幣と偽札の流通が少なく、「現金に対する高い信頼」
  3. 店舗等の「POS(レジ)の処理が高速かつ正確」であり、店頭での現金取扱いの煩雑さが少ない
  4. ATMの利便性が高く「現金の入手が容易」

実店舗側としての導入しない理由

店舗側はなぜキャッシュレス支払い(クレジットカード)を導入しないのか、というアンケートの結果を見ると、以下の理由がベスト5になってます。

  1. 手数料が高い(その分店舗側の利益が小さくなる)
  2. 導入によるメリットが感じられない
  3. 現場スタッフによる対応が困難
  4. クレジットカード決済を要望する声が少ない
  5. 導入費用が高い

こうしてみると、今まさに頻繁に報道されている「QRコードを使ったスマホによる決済」サービスは、この5つの理由にきちんと対処しているように見えますね。手数料は何年間は無料にする、スマホはほぼ誰でも持っているからメリットありそう、導入費用はタブレット端末のみ・・・。という感じで、店舗側の導入しない理由については克服できそうな感じです。ただ、「現場スタッフによる対応が困難」についてはビミョーですね。現場スタッフが若い人なら大丈夫だと思われますが。

消費者側の利用しない理由

  • キャッシュレスに対応していない店舗の存在
  • 使いすぎてしまう不安
  • セキュリティに対する不安
  • 購買履歴等を知られてしまう不安
  • 年輩層の不安(使いこなせるか)

このように、消費者側にもキャッシュレス決済を利用してこなかった理由がありました。店舗側と同様、これらの消費者側の理由についても対処していかなければなりません。中には店舗側、消費者側に共通した理由(課題)として、「年輩層が使いこなせるか」がありそうです。スマホ(消費者)とタブレット(店舗側)をどこまで簡単な操作にしてくれるのか、これは重要です。

今後、ニュースや記事に触れる際は、どの理由(課題)を克服するためのサービス、技術なのかも考えながら読んでみましょう。

(第3回 終わり)

キャッシュレス決済 第2回

キャッシュレス決済により何を実現するのか

報告書では、我が国の置かれる状況として、少子高齢化や人口減少に伴う労働者人口減少による生産性の低下をあげ、キャッシュレス推進により次のようなメリットが期待できるとしています。

  1. 実店舗等の無人化や省力化
  2. 不透明な現金資産の見える化、流動性向上
  3. 不透明な現金流通の抑止による税収向上
  4. 支払いデータの利活用による消費の利便性向上や消費の活性化

また、キャッシュレス化の実現プロセスで、既存の業界スキームとは異なる形態のビジネスモデルが現れることについても言及しています。これこそが既存の金融機関に大きな影響を与える、場合によっては全てぶっ壊してしまう怪物なわけです。

1番~4番のメリットについては、多くの場合4番の支払いデータの利活用がクローズアップされてますよね。ただ一方で、2番や3番って、実は国にとってかなり重要なメリットです。ちょっと他人には知られたくない買い物ってありますよね。お金持ちの場合だと、他人には知られたくないお金とかもあるでしょう。特に税務署とか。そういうのが全部デジタルに記録されていくのは非常に怖いことでもあります。(脱線しました)

第1回で書けなかったことの追記

韓国がキャッシュレス比率第1位と書きましたが、これは政府によるクレジットカード利用促進策によるものだそうです。具体的には次の3つが紹介されています。

  • 年間クレジットカード利用額の20%所得控除(上限30万円)
  • 宝くじの権利付与
  • 店舗に対してクレジットカード取り扱い義務付け

いろいろ考えるもんですね。宝くじは、1000円以上利用で毎月行われる当選金1億8000万円の宝くじ参加権ですって。

ついでに、中国。みなさんもうご存じだと思いますが、アリペイが既に5億人のユーザーを囲い込んでいて、世界200以上の都市と国、18の通貨に対応しているそうです。いわゆるプラットフォーマーとして、決済のみならず、各種サービスを提供していると紹介されています。

日本でキャッシュレス決済が普及しなかった理由

日本でも、クレジットカード普及に向けた取り組みや、電子マネー導入への取り組みが、他国と比較して遜色ない程度に行われてきたことを紹介しつつ、日本の特殊性を2つあげています。「治安の良さ」、「綺麗な紙幣と偽札の流通が少ない現金に対する信頼の高さ」これがキャッシュレスが普及しなかった理由です。これ納得感ありますね。

(第2回終わり)