金融庁と仮想通貨

このところ仮想通貨の動きは小康状態というか、大きな変動はないみたいですね。仮想通貨の流出・消失や、これに伴う金融庁による立ち入り検査、行政処分は断続的に発生しています。仮想通貨ってこれからどうなるんでしょうか。

金融庁のここまでの姿勢

これまで金融庁は、仮想通貨に対してかなり前向きに取り組んできました。前向きにというのは、一方的に否定するわけでもなく、という意味で。その分、交換業者の管理態勢不備による事故が後を絶たず、後手後手となった金融庁の対応に対する批判が噴出しているところです。

法律が規制できる対象ではなかったというのもあると思います。これはFXの初期の段階でもありました。それでも実質的に決済が行われており、送金(資金移動)が行われたりと、実質的な決済機能や有価証券の機能という面から、規制のやりようはあったと思われます。つまり、基本的には寛容であり、受け入れてきたわけです。

このことを森前長官の失点と見る向きは多いですが、kuniは前向きに評価しています。むしろ、BitcoinやEthereumは認めないが、その基盤であるブロックチェーンやスマートコントラクトの技術は素晴らしいとして、現行の金融の枠組みに取り込もうとしている金融機関たちの立ち位置の方に違和感を覚えるのです。

今なぜ仮想通貨なのか

ブロックチェーンやスマートコントラクトは、様々な金融機関やシンクタンクが研究に取り組んでいます。これまでの金融におけるインフラを大きく進化させる可能性があるから(もっとストレートに言うとコストダウンできるから)ですね。一方で、その仕組みが支える仮想通貨に対して否定的なのはなぜでしょう。

金融機関にとって最も大きな不都合な真実は、自分たち既存の金融機関を必要としなくなること。であり、中央銀行も必要なくなるということでしょう。中央銀行を国家と置き換えても良いと思います。国家の信用に基づく必要がない、新しい価値の流通手段であり、保存手段が生み出されたということです。

日本では国家の信用のもと、日銀が管理する「円」で生活することにそれほど大きな不便はありません。っていうか、最も安全で便利な国だと思います。しかし、ベネズエラのように一年間で通貨の価値が1万分の1になってしまうような国もあります。そういう国の国民には、国の信用に関係なく、もう少し安定した、世界中どこでも使用できる通貨があるとありがたいですよね。トルコやアルゼンチンでも一緒です。

現在の金融資本主義はかなり末期症状を見せつつあります。例に挙げたように、その症状はいまのところ限られた国々でしか見られませんが、確実に拡大していると思われます。国境のない通貨や金融の枠組みに対するニーズが、確実に拡大してきています。現在の通貨制度に対して、仮想通貨がどのように取って代わろうとするのか、非常に興味深いと思いませんか?

このお話、まだまだ続きます、、、の予定です。

 

金融庁 足元の動向

スルガ銀行一部業務停止

金融庁は今週中にもスルガ銀行に対して、投資用不動産向け融資の業務停止命令を出す方針を固めたらしいです。併せて法令遵守や経営管理体制の見直しを含む抜本的な再発防止を求める業務改善命令も出すとのことで、業務停止の期間は数ヶ月の見通しだそうです。

まったく目新しさのない報道ですね。日本経済新聞で読みましたが、他紙も同様の報道となっています。複数の関係者によると、とかいう書きぶりの新聞もありましたが、こんな記事1週間前でも書けただろって内容です。業務停止期間が数ヶ月というところだけがニュースですかね。

どういうふうに記者に伝わっているのか知りませんが、公表する予定の事実がこうしてメディアに事前に流れてしまう金融庁の体質はいただけませんね。内容によっては株価へのインパクトもあるわけで、インサイダーを所管している官庁として失格でしょ。

それでなくても、役人に対する世間の目は非常に厳しい今日この頃ですよ。こういう感覚が庶民には理解できないわけです。本人たちにしてみれば、何か起きたときのために、メディアに恩を売ってるつもりでしょうかね。つまらん内容の記事を、ありがたそうに1面で報道する新聞社もイケてません。

金融取材メモ「金融庁」地銀の競争は激しい

金融庁が行政方針の中で言っていた、「銀行の顧客である融資先企業へのアンケート」の結果のようです。企業アンケートの調査結果を活用して、事業性評価に基づく融資や、本業支援等の組織的・継続的な取り組みについて、優良な取り組みを実践している金融機関の表彰・公表を行う。ってやつですか。また間違って第二のスルガ銀行を表彰しないようにね。

記事を読む限り、アンケート調査して、出てきた内容ってこんなもん?っていうのが正直な感想です。いかにも金融庁が聞き取り、もしくは書面でアンケートやモニタリングした結果のように見えますが、実はこれ帝国データバンクに依頼した調査の結果なんですね。

金融庁ホームページの 公表物→委託調査・研究等→「企業アンケート調査の結果」で出てきます。スルガの件は公表前の報道でしたが、こちらの調査結果は9月26日付けで公表されています。まだ詳しく見てないんですが、目新しい内容がありましたらまた投稿する予定です。

金融庁 NISA

金融庁ついででもう一つ。金融庁のお墨付きのNISA、投資にかかるコストが低いことでお勧めのETFと並んで、一押しですね。しかし、ちょっと警鐘を鳴らしておきたいのが積み立てNISAです。実はETFにも金融庁の大失態があったんですが、これはまた後日書く予定です。

忌まわしい記憶しかない制度商品

積み立てNISAは毎月同額を同一銘柄に投資していく手法と、非課税が売り物で、それなりに残高は増加しているようです。ただ、取り扱う金融機関にとっては収益性も低く、真剣に取り組んでいる大手金融機関は皆無と思われます。

金融機関では、この手のお上主導で導入される商品のことを制度商品と呼びます。古くは株累投やミニ株など、毎月積み立てで買い付けていく商品がありましたが、これには証券会社は手を焼きました。もの凄いコストが掛かってしまう割りに収益はほとんどなし。やっとこの制度商品を廃止できたと思ったらNISAが登場したわけです。

積み立てNISAは儲かるのか

毎月同額を買い付けるというのは、投資における買いのタイミングを分散させ、平均的な買い付け単価にしてくれるというメリットがあります。また、積み立てNISAの場合は買い付け時手数料がかからない(かなり安い)、信託報酬も非常に少なくてすむというメリットもあります。金融庁もそこを最大限アピールしていますね。

しかし、一方で認識しておかなければならないのは、20年にわたる投資期間には非常に高いリスクがあるということです。戦後の高度成長期やバブルがはじけた以降のマーケットは基本的に長期に投資していれば勝つことができました。

実はkuniが業界に入った頃に始めた持ち株会(これも毎月同額を買い付けていく商品です)は、30年たっても報われませんでした。要するにその長期間、それなりに成長してくれる投資対象を選ばなければ意味がないわけです。今の日本、全産業が20年間確実に成長していくとは思えません。投資信託の銘柄選定はとても難しいと思います。

加えて、現在の株価水準は相当高いところにありますし、日銀が一生懸命ETFを買い付けることで、株式市場は下駄を履かされている状態です。いずれ何かしらの形でバブルがはじけ、長期投資のメリットを帳消しにしてしまうでしょう。

マーケットが一旦壊れてからのスタート

日銀のETF買い付けやNISA、積み立てNISAの積極推奨により、現在は相応に高い水準と考えてください。20年間というリスクを抱え続けるよりは、最初の5年間を捨てたつもりで、暴落場面を待って投資を開始するのがよろしいかと。

実体経済の50倍もあると言われる金融経済。まさに、犬の尻尾が胴体を振り回すのが当たり前になっている世の中ですから、バブルは必ず来ます。必ず大きく下げる場面があります。長期投資はそこからスタートでも遅くはないと思います。もちろん、自己責任ですよ。

金融庁長官 遠藤俊英氏 

金融行政のあり方を大きく変化させた森長官のあとを引き継ぎ、7月、遠藤俊英氏が長官に就任しました。「金融財政事情」にインタビュー記事がありましたので、感想やら何やら。

前任の森信親長官が残したもの

史上最強といわれ、これほどまでに金融機関が振り回された長官は過去に居なかったと思われます。地銀の再編に注力し、フィデューシャリー・デューティー(顧客本位の業務運営)を金融機関に求め続けました。金融機関との対話にも力を入れ、従来の金融機関に対する検査を、大きく変えたのも彼の考え方によるものと言われます。

しかしながら、長期政権といわれた3年間、何もかも成し遂げることなく、後任に残したままの退任となりました。中でも「仮想通過」と「スルガ銀行」に対する甘い読みは、後に大きな傷跡を残すことに。森長官自身が仮想通貨に対して相当柔軟な姿勢で対応したことや、スルガ銀行のビジネスモデルを「地銀のお手本」と称賛してきたことは有名な話です。

第10代長官 遠藤俊英氏

検査局長や監督局長を歴任し、金融行政に精通していると言われる遠藤氏。インタビュー記事では「金融庁では広範な行政テーマや課題を設定してきたが、」と前置きし、前長官が理想に燃えて拡げてしまったテーマや、失策により炎上させてしまった課題に対し、「具体的に実行していくステージ」と表現しています。

確かに気の毒ではあります。本人の言葉としても「(前長官時代に)金融行政のあり方を大きく見直した。様々な議論を重ねた結果、金融行政としてかなりウィングの広い枠組みとなっている」と説明しています。

「顧客本位の業務運営」、「金融機関に対するモニタリング」などについて答えているのですが、いずれも前長官時代に聞かされてきた話で、目新しいものはありません。唯一、この人が色を出せるとしたら、金融機関トップとの対話(記事のタイトルにもなってます)でしょうか。地域金融機関トップとの対話には、こちらもトップが出て行かないと、相手も真剣に議論する気にならないだろうと言ってます。

それでも踏み込みが甘いスルガ銀行

スルガ銀行の件については、「個人的には忸怩たる思いがある」と言ってますが、「現場に一番近い内部監査や経営陣が問題を十分把握していない段階で、監督当局である自分たちがそれを察知するのは難しい」という逃げ口上。

金融庁が作成した資料でも、スルガ銀行の収益性は他行を大きく引き離しており、違和感があったはず。少なくとも民間の金融関係者はそう思ってました。金融庁の方針の中に「ベストプラクティスの共有化」なんてワードが何度も踊ってましたし、そうしようと思ったらスルガ銀行のビジネスモデル調べるでしょ。長官が手放しで称賛しちゃったりする前に。その権限こそが金融庁が持つ金融機関への検査権限でしょ。

就任のタイミングの悪さには同情するものの、これからの金融庁もあまり期待できそうじゃないなぁ、って感じでした。

金融庁 銀行カードローンの実態調査結果を公表

上限は年収半分、設定が5割超 銀行カードローン

日本経済新聞が標記の件を7面で報じています。金融庁が22日「銀行カードローンの実態調査結果について」を公表したという記事。紙面ではかなり小さな取り扱いです。スルガ銀行のニュースもあり、銀行の不祥事に注目が集まりそうなこの場面、もう少しまじめに取り上げるべきですね。多くの読者がこの話題もセットで理解するべきです。

公表の内容

金融庁の公表内容、総括というページの主な記述を抜粋してみました。

  • 全体として、「申し合わせ」や「中間とりまとめ」を踏まえた融資審査態勢の見直しや広告宣伝の見直し等、業務運営の改善に向けた取組みが進んでいる。
  • 融資実行後の途上管理については、年収証明書の再取得等の動きが見られるが、取組みの進んでいない銀行が多く、進展を注視していく必要がある。
  • 今回の調査で取組みが不十分と認められた点については、ベストプラクティスの収集・共有や対話等を通じて具体的な改善を促し、業界全体の業務運営水準の引き
    上げに向けた取組みにつなげていく。

押さえておくべきポイント

基本的には、ここまでの金融庁のモニタリングや指導の結果、これだけ改善している。といった内容になっていますが、それとは逆に、なおこれだけの銀行が課題を抱えているという視点が必要でしょう。

カードローンの問題点。そもそもは80年代後半から急成長した消費者金融、いわゆるサラ金ですね。既存金融界のパイを食い散らかし、自己破産を大量に発生させたツケで、規制でがんじがらめに。立ち行かなくなった業者はメガバンク等の銀行傘下に取り込まれていきました。

そのときの規制がいわゆる貸金業法の「総量規制」というやつです。一定の金額を超える貸付をするには源泉徴収票等の提出を受けること、年収等の3分の1を超える貸付を禁止する、などの過剰な貸付を抑制するための法改正でした。

ところが、この総量規制、貸金業者ではない銀行には適用されないのです。

消費者金融はダメだけど銀行はやって良い?

で、このところ一気に貸し出しを増やしてきた銀行のカードローン、銀行にとっては濡れ手に粟の美味しい商売。消費者金融は規制したけど、銀行は同じことをやっても規制を受けない。ここが変ということです。

このカードローンの貸出残高の増加にあわせて、これまで減少し続けてきた自己破産の申し立て数が反転、増加してきました。。高金利で多額のお金をカードローンで借りて、破産して人生が壊れていく人達の事例が、既にたくさん報告されています。

従来のビジネスでは立ち行かなくなった銀行が、高収益のビジネスに活路を見いだそうとした、という点でアパートローンと全く同じなのです。

金融庁の公表した報告書とは

金融庁は、以前から消費者金融と違って銀行は高いガバナンスがあり、規制で縛らなくとも節度ある対応ができる。という見解のようです。

しかしながら、ガバナンスが効いているとは、とうてい思えない銀行のニュースが、毎日のように報じられています。そろそろ金融庁も立ち位置変えないと。銀行さんとグルに見えてきましたよ。。。