気候変動ではなく気候危機へ

9/26付け日本経済新聞では、IPCC(国連の気候変動に関する政府間パネル)の報告書に関する記事が伝えられています。2100年には従来の想定を超える温暖化が進み、海面水位の上昇や、これによる沿岸部の消失、海水温の上昇による漁獲量の減少といった、かなりショッキングな内容です。原文を読みたかったんですが、環境省のHPにはまだサマリーしか出ていないようです。

私見卓見 「気候危機」の認識が必要

IPCCの報告書が伝えられた同じ日の日経に、「気候危機」の認識が必要だ、、というコラムも。例の読者の投稿を紹介するコラムです。筆者は世界自然保護基金(WWF)の小西氏です。kuni的にはこちらのお話の方がインパクト強かったですね。

日本のメディアでは、地球の温暖化とその影響を指して、「気候変動」という言葉が使われているわけですが、海外では「気候変動」という言葉は使われなくなっているというお話。いくつかの例が示されています。

国連の事務総長は昨年9月に「気候危機」という言葉を使って、対策の加速を訴えている。英国メディアのガーディアン紙は今年5月、気候変動をめぐる用語集を一新した。英国BBCも昨年9月、「報道内容に気候変動懐疑派の意見を入れてバランスを取る必要はない」と通達した。、、、と、こんな感じです。「気候危機」と呼ぶのがスタンダードになってきているということです。

各方面への配慮をしている場合じゃない

日本のメディアでも「気候危機」の表現が見られるようになってきたと筆者は書いてますが、この日の日経の大見出し、小見出し全部検索しても、危機という言葉は日韓関係で使われているだけでした。冒頭で紹介したIPCC報告書の記事もすべて「気候変動」で統一されています。

海外では既に〇〇なふうになっているというのに、日本ではメディアが関係各方面へ配慮してそのことが伝えられていない。。。よくある話ですね。しかし、こういうことには敏感でいなければいけません。全国紙ともなると各方面への配慮が大変なのは分かりますが、、、日経さんから最初に「気候危機」に切り替えましょうや。

水素閣僚会議(H2EM2019) FCV1000万台へ

9/23の日本経済新聞の記事『燃料電池車など「1000万台に」』より。水素の利用拡大をめざす主要国などが集まり、25日に水素閣僚会議(H2EM2019)を都内で開催するとのこと。今回は2回目の開催。経済産業相が議長声明として、水素燃料電池を使った車両や航空機を計1千万台に増やす目標を掲げるようです。

FCV(燃料電池自動車) 世界で1万台→1000万台

燃料電池自動車(FCV)は世界で現在約1万台にとどまっていますが、これを10年間で1000万台まで拡大しようという試み。燃料を供給する水素ステーションを10年間で1万カ所にする目標も掲げています。

FCVは車内で水素と酸素を化学反応させて作り出した電気を使って、モーターで走ります。FCVもEVも電気で走る自動車という点では同じですが、一般的にEVが構造上簡単な一方、FCVは水素から電気を発電するために構造が複雑になり、技術力も必要になります。

ちなみに、記事でも紹介されていたトヨタのFCV量産車ですが、名前は「MIRAI(ミライ)」。お値段の方はなんと723万円です。水素ステーションが現在100カ所しかないことや、車両の高価格もあってなかなか普及しません。2014年からの累計販売台数も5000台程度だそうです。

水素ステーション

水素ステーションの1基当たりの建設コスト、こちらも半端なく、4億~5億円だそうです。国内の水素ステーション数は計画中も含めて100カ所にとどまります。EVの急速充電器が7000カ所以上あるのに対してその差は大きいですね。

ボトルネックになっている水素ステーションの整備。昨年3月、トヨタなど11社が新会社「日本水素ステーションネットワーク(JHyM:ジェイハイム)」を設立しています。国の後押しも受けながら、FCV普及に向けた水素ステーション整備を加速しているところです。

この11社。自動車メーカー3社以外には、豊田通商(8015)や岩谷産業(8088)などの名前もあります。株式投資先としても期待できそうですね。

ミレニアル世代 Z世代とな?

9/12付け日本経済新聞に「若い世代『環境』で企業選別」という記事がありました。ミレニアル世代は、企業が達成すべきこととして27%が「環境の改善と保護」を選んだとのこと。同じ回答を選んだ企業は12%にとどまっており、企業とミレニアル世代の優先事項がずれていると指摘していました。

また、「倫理に関する行動」を理由に、企業との関係を止めたり、減らしたりしたことがある人は、世界が37%で、日本は22%。日本のミレニアルはまだESGに対する意識が高くないということのようです。それでもこれから大きく変化してくると思います。

デロイトトーマツ 2019年デロイトミレニアル年次調査

日経の記事は、デロイトトーマツ 2019年デロイトミレニアル年次調査の結果を引用しています。この調査、デロイトのHPでサマリが公開されています。いくつか紹介しましょう。

日本のミレニアル世代の2年以内の離職意向は49%にのぼり、グローバルと同程度になってます。Z世代にいたっては、64%とさらに高く、若い世代の方が離職意向がより強くなっています。グローバルは61%。

また、5年以上同じ企業に留まる意向については、日本のZ世代が10%と、グローバルの同世代の19%を大きく下回る結果に。この辺りは結構ショッキングですね。kuniの会社でもこの世代の退職に頭を痛めています。

ところで、このZ世代ってなんや?と思われた方。kuniも知りませんでした。Z世代は、1995年から2002年までに生まれた世代だそうで、生まれた時からネットやスマホなどが当たり前に存在しているデジタルネイティブ世代らしいです。ちなみに、ミレニアル世代は1983年から1994年までに生まれた世代で、デジタルパイオニア世代だそうです。

ミレニアル世代はまさにkuniの息子たちの世代にあたりますが、それでも理解不能な世代です。Z世代ともなるともう、、、読者にこれらの世代の方がいらっしゃったらゴメンなさい。

台風15号の教訓 老朽インフラ

台風15号による大規模停電、当初の想定よりもかなり厳しい現実となってしまいました。今なお電気のない生活を強いられている千葉県の皆さんには、心からお見舞い申し上げます。見込みが甘かったと、また東電が批判されてますが、そんなことより今皆に何ができるかという前向きな議論にしてほしいものです。

露呈した老朽インフラ

日経も取り上げていましたが、日本の電力や道路、都市ガス、水道などのインフラは高度成長期に構築されたもの。その老朽化は以前から折に触れ問題視されてきました。公共投資で一気に更新していくのは難しいでしょうが、新しい発想、新しい技術で、できるだけお金をかけずに対応していきたいものです。

遠くの田舎で発電した電力を送電線で都心に届ける、といった発想はもうやめ。再生エネと蓄電池によるVPP(バーチャル・パワー・プラント)と小型の燃料電池による発電所を組み合わせた地域ごとの自立した給電システムを構築する。そんな発想をすれば、巨大な鉄塔で送電網を作る必要はないでしょう。

洋上風力発電なんかもそう。関東近辺では千葉県沖が設置候補としてあがっており、一部プロジェクトもスタートしていると思います。東電が原発を失った直後から、この洋上風力発電に取り組んでいたら、今回倒れた送電線の鉄塔の影響はもっと小さくて済んだかもしれません。

取り戻すよ、数十年

公共インフラでは約50年間、待ったなしの更新時期が来ています。同じよう企業の基幹システム等も約30年間。こちらも更新時期です。さらに企業の工場設備、製造ラインなどもそうですね。バブル後の委縮した経済、経営姿勢もあり、更新需要がそこら中に出てきたわけです。

悲観的になることはありません、もう一度日本を作り直すつもりでいきましょう。この巨大な内需は日本の景気を大きく引っ張っていくことになると思います。。。と、kuniはかなり楽観的です。

燃料電池自動車(FCV) 燃料電池のお話

水素・燃料電池戦略協議会(経済産業省)が、水素技術の普及に向けた技術戦略を議論し、研究開発における重点3分野をまとめた。と日経が伝えていました。3つの重点分野とは、燃料電池、水素ステーションや水素の輸送技術、そして水素製造に必要な水電解技術です。

燃料電池の仕組み

この記事を読んでいて、いまさらながら燃料電池の仕組みって?という疑問が。最近都内でも燃料電池バスをたまに見かけるようになりました。ということで今日は燃料電池の仕組みを。

小学校で水の電気分解の実験はやりましたか?水に電気を通すと、水素と酸素の泡が出てくる。アレです。燃料電池の仕組みはその逆で、水素と酸素を反応させて、電気を取り出すわけです。なぜか、燃料電池という名前なもんですから、電池をイメージしてしまいますが、実際は発電機です。水素発電ですね。

この燃料電池の特徴は、発電効率が非常に高いこと、地球温暖化ガスや大気汚染物質を排出しないこと、水素という資源が豊富なこと、エンジンやタービンに比べ極めて低騒音なこと、があげられます。

克服するべき課題

冒頭で紹介した水素・燃料電池戦略協議会が定めた3つの重点分野こそ、今後克服しなければならない課題です。まずは水素をどうやって輸送し供給するか。自動車用であれば水素ステーションが一定程度普及しなければなりません。公共交通機関から導入が始まっているのは、この供給の問題が解決しやすかったからでしょう。

また、水素をどうやって効率的に製造するかというのも課題です。ここで注目されるのは、地方で再製エネ発電で作られた電気を利用して、水を電気分解して水素を製造。その水素を消費地に輸送して燃料電池で発電という方法です。水素をエネルギーの輸送、貯蔵媒体として使うということです。

そして、3つめが燃料電池に使用されるプラチナの代替材。高価なプラチナ以外の素材を使った燃料電池の開発も課題です。どうでしょう、マフラーから水蒸気だけを吐き出しながら、静かに走る燃料電池自動車。その姿をイメージできるようになったでしょうか。