人工肉のビヨンド・ミート バーガーキングのインポッシブル・ワッパー

今年5月、植物由来の代替肉を開発・製造するビヨンド・ミート株式がナスダックに上場しました。赤字経営が続いているものの、上場1カ月で株価は7倍以上という爆上げを演じて見せました。この人工肉の世界にも何気にバブルの香りがしてきました。

バーガーキングでも

もう一つ、人工肉で話題になったのが、バーガーキングが4月から販売を開始したインポッシブル・ワッパー。食肉を一切使わないハンバーガーです。「食べた人の90%以上は本物の牛肉のバーガーと勘違いする」と言われています。このインポッシブル・ワッパー、普通のバーガーよりも1ドル高いにもかかわらず、かなりの人気とのこと。

米国で人工肉が人気な理由

米国で人工肉がブームとなっている理由としては、米国人の肥満問題が大きいようです。人工肉はけっして低カロリーと言うほどではありませんが、動物性脂肪を排除できる点で成人病を防止する効果は期待できるんだそうです。加えて、70年代に流行ったころのまずい人工肉と違って、食欲や味覚を満たすレベルに到達したことも大きな理由とのこと。

そしてもう一つの理由

「選択」8月号によると、米国特有の背景もあるようです。1つ目に、クジラ、イルカの保護や毛皮の禁止を訴える動物愛護団体の活動が、食用に牛や豚などを飼育し、屠殺することにも拡大していることがあげられています。

2つ目に、「ビーガン」と呼ばれる、肉はもちろん、乳製品や卵も一切食べない絶対菜食主義者が急増していること。この人たちは過去10年で急増し、米国人の6%に達しているという調査もあるとのこと。

これらの人たちに加え、殺生を嫌う仏教徒やBSE(牛海綿状脳症)など動物の病気を嫌う人まで、理由は多様ながら、社会の一大勢力になりつつあると言います。この辺りのお話はちょっと怖さを感じさせます。

バブルの香りがする訳

今後世界の人口が爆発的に増加します。タンパク質不足が起こり、それを代替するために人工肉にも注目が集まります。もう一方で、「世界人口の増大→食肉消費の増加→飼料穀物増産→農地のさらなる開拓→森林の縮小→CO2の増大」という、ESGや気候変動の観点で捉えることも可能です。

kuniは、ESG(気候変動)バブルは既に膨らみ始めていると思っています。米国においてトランプ氏が再選を果たせなかったとき、つまり次の大統領(おそらくトランプ氏とは反対に気候変動にポジティブ)になった時、このバブルは一気に膨らむのではないかと感じているところです。

「次のバブルはグリーン・エネルギー」 30兆ドルのカーボン・バブル

「次のバブルはグリーン・エネルギーだ」。このセリフで映画のタイトルが分かった人は、相当な映画通ですね。実はこれ、2010年のアメリカ映画「ウォール・ストリート」でゴードン・ゲッコーが口にしたセリフです。1987年の「ウォール街」の続編ですね。

kuniは一作目を劇場で観ましたが、二作目は観ていません。たまたま先日CATVで二作目をやってまして、酔っぱらいながら少しだけ観ました。その時にゲッコーがこのセリフを。で、妙にその印象が残っているわけです。今ではグリーンエネルギーとはあまり言いませんね。最近の流行りの言葉ですと「再生可能エネルギー」でしょうか。

「気候変動が金融危機の火種に」

こちらは「選択」8月号の記事のタイトルです。ロンドンのシンクタンク「カーボン・トラッカー」は2011年に「燃やせない炭素~世界の金融市場はカーボン・バブルなのか」というレポートを発表。2013年には「燃やせない炭素2013~無駄な資本と座礁資産~」を発表し、次のような主張をしています。

石油、石炭、天然ガスの確認埋蔵量を燃焼させた場合に発生する二酸化炭素の量は、2兆7950億トン。これに対して、産業革命以降の気候変動を2度未満に抑えるためのCO2排出量規制を実行するなら、人類が排出可能なCO2の量は5650億トンでしかない。

つまり、2兆2300億トン分は地中に埋めたままにしておかなければならないということ。この将来燃やすことができない確認埋蔵資源のことを「座礁資産」と呼んでいます。化石燃料企業の株価は、保有する埋蔵資源が将来消費されることを前提に算定されているが、座礁資産の分だけ空前のバブルが発生しているという主張なんですね。この座礁資産=バブルで買われ過ぎている金額が20兆~30兆ドルに及ぶとのこと。

ダイベストメント(投資撤退)

バブルは既に膨らみ切っていて、ただそのことに皆が気付いていないということのようで、ダイベストメント(投資撤退)が進むことでバブルを縮小することができるとの主張です。しかし、これが少しづつ、いい具合に縮小するかというと、そうではなく、どこかで「我先に・・・」という行動心理が働き始めて金融危機を誘発するでしょう。

既にそうした動きが始まっているとも言っていて、化石燃料業界の株価やプラントエンジニアリングなどの周辺業界でも、株価に影響が出始めているとのこと。先月、欧州を襲った記録的な熱波のニュースなんかも、多くの人が環境問題に気付かされたかもしれませんね。

ゲッコーが言うグリーン・エネルギーがバブルではなく、グリーン・エネルギーの台頭が、化石燃料バブルを弾けさせるというお話でした。ゲッコーはどういう意味で言ったのか、ウォール・ストリート、機会があったらじっくり観てみたいと思います。

みずほFGが「責任銀行原則(PRB)」に署名?  Principles for Responsible Banking

8/6付け日本経済新聞の記事より。当ブログでも過去に取り上げたことのある「責任銀行原則(PRB)」にみずほFGが署名したとか。「みずほフィナンシャルグループ(FG)」は、国連が銀行に社会的責任を果たすよう求めて提唱している「責任銀行原則」に署名した。」(原文のまま引用)

日本から3行目

今年1月には三井住友トラスト・ホールディングスが支持を表明しましたし、2月には三井住友フィナンシャルグループが同じく賛同を表明しました。支持と賛同という違う言葉を使いましたが、それぞれ両社がプレスリリースで使用した言葉です。

これに加えて、みずほフィナンシャルグループが名乗りをあげたということで、日本の銀行としては3行目になるかと思います。

なんでみずほFGだけが「署名」?

で、日経の記事ではみずほFGが「署名した」となっているんですね。先行した2行は支持や賛同を表明しただけなんです。みずほのプレスリリースを見ても「正式に署名しました」とか、「責任銀行原則発足時の署名者となる」とか書いてて、妙に威勢が良いのです。

責任銀行原則は2019年9月にニューヨークで開かれる国連総会で発足する予定でした。そこで初めて署名が行われるという流れだったはず。。。ということで調べてみました。

UNEP FINANCE INITIATIVE というホームページに、何かそれらしきことが書かれてました。以下引用です。

「ニュース!、責任銀行原則の最終原則とそのフレームワークドキュメントが利用可能になりました。責任銀行原則の6つの原則とその前文を含む、原則署名文書。銀行が責任銀行原則の設立署名者になりたい場合は、この手紙にCEOが署名し、2019年8月22日までに・・・に送信する必要があります。」(これGoogle翻訳ですのでちょっと不自然な日本語ですが)

だそうです。ほぉ、みずほFGはここまで支持や賛同の表明をしていませんでした(少なくとも公には)が、このレターにCEOが署名して送信したということのようですね。先に表明だけしている2行は、署名はしていないんでしょうか。日経の記事だけ読むと、なんだか出し抜かれたって感じに見えちゃいますね。

ユーラスエナジーホールディングス 発電所内にデータセンター運営

7/30付け日本経済新聞の記事です。国内風力発電最大手のユーラスエナジーホールディングスは、風力発電所内にサーバーを設置し、データセンターの運営事業に乗り出すと発表した、というニュースです。京セラが北海道に再生エネ100%で稼働するデータセンターを作ってますが、発電所の中にというのは聞いたことがありません。

(株)ユーラスエナジーホールディングス

kuniは初めて聞いた名前の会社でした。豊田通商が60%、東京電力HDが40%出資して2001年に設立された資本金181億円の会社です。事業内容は「風力および太陽光発電事業」となっています。従業員は366名になってますね。社名のユーラス(Eurus)はギリシャ神話に登場する「東の風の神(エウロス)」に由来するものだそうです。

エネルギー供給と環境負荷低減を両立するという社会ニーズに対応するため、日本、米国、欧州の3地域を中心に、数多くの風力発電事業を展開している会社です。2008年からは太陽光発電事業にも参画しています。

CGレンダリングサービス実証事業を開始

ユーラスが実証事業を開始するのは、同社がテキサス州に持つブル・クリーク風力発電所内に、コンテナ型サーバーセンターを設け、クラウドベースのCGレンダリングサービスの提供を行うというもの。サービス開始は2020年1月を予定しています。

CGレンダリングが必要とする膨大なコンピューティングパワーを、再生エネルギーにより給電しようということですね。同社のホームページも見ましたが、コンテナ型って、本当に一般貨物輸送や海上輸送に使われるコンテナなんです。コンテナを増やすことで柔軟な拡張も可能とのこと。

再生エネの地産地消

クラウドコンピューティングサービスでCGレンダリング機能を提供する。つまり、膨大な電力はサーバーが置いてある発電所で作られるわけで、まさに再生エネの地産地消が実現します。ユーザーは僅かな電力と一般的なパソコンで良いわけですから助かります。

日本における再生エネのネックになっているのが、送電線の確保です。洋上風力発電等で発電したとしても、その電力を人口密集地に送る送電線が足りないんですね。パソコン等のインターネットに接続して使用される端末が消費する電力は、このクラウドコンピューティングサービスで送電不要にすることが可能ということです。

今回はCGレンダリングで実証するわけですが、企業の基幹システムなんかもクラウドに移行していってる時代です。可用性やセキュリティなど課題はあると思いますが、これらも再生エネ電力発電所内データセンターへ、、、という時代が来るかもしれません。そうなるとその需要は膨大ですよ。

VPP バーチャル・パワー・プラント(仮想発電所)

VPP バーチャル・パワー・プラント とは「分散する再生可能エネルギーや蓄電システム等を一括制御し、一つの発電所のように機能させる仕組み(仮想発電所)」のことです。

7/5付け日本経済新聞に「英蘭シェル、日本で電力小売り」という記事が掲載されました。石油世界大手の英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルが日本の電力小売市場に参入し、販売を始めたとのこと。蓄電池を活用した再生可能エネルギーの需給を制御するシステムの提供も検討すると伝えています。

注目すべきはゾンネン

なんとなくぼんやりしたタイトルになっていますが、この記事で注目すべきはゾンネンというドイツの会社です。2010年に設立された蓄電システムベンチャーですが、2015年からは電力の小売り事業を開始し、クラウド・コミュニティモデルであるゾンネンコミュニティを展開しています。

このゾンネンコミュニティでは、コミュニティメンバーが太陽光発電と蓄電システムを自宅に設置します。これらの世帯をネットワーク化し、メンバー同士で過剰な電力を持つ世帯から、電力が不足している世帯へ融通するというもの。既にドイツ全土に展開しているようです。まさに、VPPの先駆者と言っていい存在です。

毎月20ユーロ(約2,400円)程度の手数料で、従来の電力会社へ支払うべき電気代が不要になっているらしく、かつ、約200万円の初期投資についても、およそ10年間で回収できるとのこと。ちなみにこの設備のライフタイム(耐用期間)は20年だそうです。

ロイヤル・ダッチ・シェルの100%子会社に

と、ここまで日経の記事を無視した展開になってますが、やっとシェルの出番です。今年2月、ロイヤル・ダッチ・シェルがこの蓄電システムベンチャー企業というか、VPP企業のゾンネンを買収し、100%子会社にすることで合意したと発表されました。その後の報道を聞かないんですが、たぶん既に買収については実行済みだと思われます。

そのため、日経の記事ではシェルの話になっているんですが、彼らの日本戦略はどう考えても、ゾンネンが得意とするVPPではないかと。FIT(再生可能エネルギーにより発電された電気を国が定めた買取価格で電気事業者が買い取ることを義務付けた制度)による買取期間満了を迎える日本に対して、まさにVPP本家が殴り込みをかけてきたということです。

住宅用太陽光発電と家庭用蓄電システムを活用した新たなビジネスモデル。ゾンネンの参入を契機に、日本でも一気にVPPが加速しそうな感じです。