ダイベストメント(投資撤退)の標的

9/4 日経産業新聞に「ESG投資家から売り圧力」という記事が。記事で取り上げられていたのは石油メジャーの英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルです。ESGに問題のある企業を投資対象からふるい落とすダイベストメントにさらされ、同社が脱石油へシフトしているという内容です。

ダイベストメントもいろいろ

ダイベストメントという言葉は従来、自社の赤字事業を売却したり、その事業から撤退したりすることを指していました。しかし、最近ではESGの文脈で、投資家がESGの観点で問題ある企業に対する投資から撤退することを指すことがほとんどになっています。

ダイベストメントはこうした問題ある企業の株式を売却することにとどまらず、同企業が発行する債券を売却したり、引受をしないこと。銀行が融資を行わないこと、損害保険会社が保険の引き受けを行わないことまでを含んだ意味で使用されています。

日本でよく話題になるものとして、メガバンクによる銀行融資があります。株式投資や保険以上に融資の引き揚げは、企業の事業継続や新規投資を困難にするため、ダイベストメントの中でも最もダメージが大きいと言われます。

石炭火力発電事業者向けの融資額(2016年~2018年)で断トツに大きいのが、みずほFG、続いて三菱UFJFG、そして第4位に三井住友FGなんだそうです。ちなみに第3位は中国建設銀行です。

ダイベストメントの標的は?

では実際にダイベストメントの標的になるのはどういう企業になるのか。石炭にフォーカスして考えてみましょう。まずは石炭を採掘している会社が当然にターゲットになります。同じく、石炭を輸入したり、輸入に向けて海外での生産を支援するような会社、総合商社などがこれにあたります。そして石炭を大量消費する石炭火力発電を行う電力会社などです。

このような企業が一次的な標的にされるわけですが、これらの企業に積極的に融資している銀行までもターゲットになってきているようです。前述のメガバンクです。震災で原発を失った日本としては、石炭火力に頼らざるをえなかったという事情があるわけですが、世界からはそうは見てもらえないようです。脱石炭、脱石油、急がないとマズいです。

水没する都市 ジャカルタ 浮き上がる都市 東京

インドネシアが8/26、ジャカルタからボルネオ島の東カリマンタン州への首都移転を発表しました。ジャカルタは東京23区とほぼ同じ面積に1000万人が暮らす都市ですが、この首都を捨てる原因の一つに地盤沈下があります。

1年に20cm

ジャカルタは1年に約20cmの速度で地盤沈下していて、試算によると2050年までに、この都市の3分の1は水没すると言われています。原因は地下水をくみ上げ過ぎているから。巨大な防潮堤を築く計画があるようですが、これもまた同じように沈んでいくでしょう。地下水をくみ上げる以外の方法で、清潔な水を手当てできるようにならない限り、水没は止められそうにありません。

最初に水没する都市と予想されたのは東京

今では東京に住んでいる人でも知らない人の方が多いかもしれません。実は東京では関東大震災のあとから戦後の復興、高度成長期に至る過程で、ジャカルタ同様地盤沈下が進みました。やはり、工業化が一気に進む中での地下水の過剰揚水が原因です。

当初、地盤沈下の原因は地震に関する地殻変動と考えられていましたが、30年近くかかって、地下水のくみ上げが原因であることが分かってきました。そこから地下水の揚水を規制する法律が整備され、地下水位の上昇(回復)とともに沈下は沈静化します。

浮き上がる東京

ところが、地下水の水位上昇に伴い、新たな課題も出てきているようです。昭和50年代との比較で20m以上も水位が上昇したため、その間に造られた地下構造物が地下水の上に浮き上がる現象が起きているとのこと。新幹線上野駅は浮き上がらないように3万トンの鉄の錘で基礎地盤に固定してるんだそうです。

沈む都市あれば、浮かぶ都市あり。東京のこの経験はジャカルタで是非役立ててほしいですね。水位を復活させることもそうですし、その前提となる水のリサイクルや海水の淡水化といった技術に関しても、、、日本が支援できることはたくさんありそうです。

再生エネルギー 地熱発電 増感型熱利用発電 新型熱電発電素子

「すべての電力を再生可能エネルギーで供給する鍵は地中にあり」というレポートを読みました。ここでいう地中とは、地熱エネルギーを指しています。「地熱発電で米国の電力の20%を賄えるという試算が環境系シンクタンクによって発表された」と伝えています。

シンクタンク「ClearPath」

クリーンエネルギーの推進を目指す保守系シンクタンク「ClearPath」が5月に作成した報告書だそうです。これまで米国で地熱発電が注目されなかったのは、推進のための優遇措置が取られてこなかったからだとも言ってます。風力発電や太陽光発電では30%の税額控除があるが地熱は10%だそうです。

他にも、地熱エネルギーを得るための掘削に必要となる環境関連の相当面倒な承認プロセスも、普及を妨げてきた理由の一つとしてあげられています。他にも、水圧破砕法という方法での掘削には、地震が発生するリスクもあるとか。実際に韓国で起きてるようです。ただし、報告書は何の障害もなく得られるクリーンエネルギーなど存在しない、と言ってますけどね。

「増感型熱利用発電」の開発に成功

そんなこともあって調べものをしていたら、「増感型熱利用発電の開発に成功」というニュースを見付けました。「太陽電池では光エネルギーにより生成した電子を利用するが、この電池では熱エネルギーにより生成した電子を利用する」と説明されています。この発電装置を熱源に埋めて、回路のスイッチをオンオフするだけで、熱エネルギーで直接発電が可能とのこと。この熱源というのが50℃でいいというのが、これまた凄いところです。

地熱発電では地下水を水蒸気化し、タービンを回して発電します。今回開発された増感型熱利用発電では、熱源に埋め込むだけでその新型熱電発電素子から電流が取り出せるという優れものです。地熱発電にも使えますし、工場等から排出される排熱の有効利用にも使えそうです。

この研究は東京工業大学と三櫻工業(6584)によるもので、プレスリリースを出した7/18から3日間で、三桜工業の株価は36.8%上昇しています。その後、元の株価水準に戻ってしまいましたが、この技術が実用化できるかどうか、、、期待したいと思います。

注目度高まるブルーカーボン

8/18 日本経済新聞の記事「海の森林、温暖化防ぐ?」が掲載されました。地球温暖化の要因とされるCO2を、海洋の植物であるアマモやコンブが吸収する。その能力が陸上の森林をもしのぐんだとか。この海中に固定された炭素をブルーカーボンと呼ぶんだそうです。CO2の貯蔵庫として見直す動きが世界で出ているようです。

ブルーカーボンとグリーンカーボン

海藻や海草、植物プランクトンなどが光合成によって大気中から二酸化炭素を取り入れ、海域で貯留された炭素のことをブルーカーボンと呼ぶようになったのは、2009年のことだそうです。国連環境計画(UNEP)が作り出した言葉です。

元はと言うと、海域で貯留された炭素までも含めてグリーンカーボンと呼んでいたようで、海域に新たに注目することになったため、陸域だけのグリーンカーボンとブルーカーボンを区別して呼ぶようになったみたいです。

海は確かに広いけど

海は確かに広いんだけど、海藻等の光合成って言われるとねぇ。太陽光が届く範囲の浅瀬となると、かなり対象となる海も狭くなっちゃいますよね。日経が書いてたように、日本の海岸線の総延長は世界第6位の約3万5000kmあったとしてもですよ。いまいち腑に落ちないのです。

ということで、国際環境経済研究所さんのHPで勉強してみました。二酸化炭素は、海藻等を経由して海底泥中に炭素として貯留されるみたいで、海底泥中が基本的に無酸素状態なため、バクテリアによる有機物の分解が抑制され、炭素が非常に長期間分解されずに貯留されます。ココが重要なんだそうです。

で、何度か記事を読み直して、やっと理解しました。ブルーカーボンが森林以上に貯留すると言っているのではなく、海が陸以上に炭素を吸収する可能性がある、と言ってるんですね。紹介されているブルーカーボン以外に、海洋で吸収される分がかなり大きく見積もられています。日経さん、ブルーカーボンが強調され過ぎてて、、、この記事分かりにくいよ。

ROESG ROEとESG

8/12付け日本経済新聞に「ESG×収益力で欧米先行 人材・投資呼び込む 企業の持続性重視へ新指標」という記事が掲載されました。企業の収益力を示す指標ROEとESGへの取り組み度合いを掛け合わせたような新指標(ROESG)ということです。今日はROEとESGのおさらいをしておきます。

ROE

ROEとは「Return On Equity」の略称で、日本語では自己資本利益率、または株主資本利益率と言います。企業の自己資本(株主資本)に対する当期純利益の割合を示し、投資家が投下した資本に対し、企業がどれだけの利潤を上げられたのかを見る指標です。

ROEが高いほど自己資本を効率よく使い、利益を上げて能力の高い経営がなされているという評価になります。逆に、ROEがあまりにも低い企業は、資金をうまく使えていないわけですから、経営が下手という評価になり、会社の存在価値も疑われてしまいます。

企業は、自己資本(株主資本)と他人資本(負債)を投下して事業を行い、そこから得られた収益の中から、他人資本には利子を支払い、自己資本には配当を行います。そのうえで残った利益、内部留保の蓄積分である利益剰余金も自己資本に含まれます。

自己資本利益率は古くから投資指標としてありましたが、日本で注目されるようになったのはここ10年くらいではないでしょうか。その間指標が注目されるにつれ、日本の上場企業のROEは上昇し、直近のデータで7%台くらいです。しかし、欧米と比べるとまだまだという水準なんですね。

ESG

ROEに関しては上場企業の開示データで簡単に計算できるんですが、ESGスコアに関しては公式のデータというものがありません。っていうか、そもそも企業の開示に関するルールもいまだ整備中というところですね。そのため、記事で紹介された算出方法でも、「ESGスコアは、アラベスク、サステイナリティクス、FTSE、MSCI、ロベコのESG評価機関5社の2019年3月末時点の評価を用いた。」とあります。

公式のデータがないと書きましたが、6月の日経の報道にこんな記事もありました。「日本経済新聞社グループのQUICKは、ドイツのESG評価会社、アラベスクと提携した。アラベスクが日次で算出する世界の上場企業のESGの点数を機関投資家や金融機関、事業法人に提供する。8月からQUICKの専用端末でも提供する。」

QUICKというのは証券会社には必ず置いてある株価等を照会する端末です。おそらく今月から証券会社では、アラベスクのESGスコアが照会できるようになるんですね。