SBI 島根銀行に出資 地銀連合構想

9/7の日本経済新聞の記事です。SBIホールディングス(HD)と島根銀行は、資本・業務提携すると発表しました。SBIが島根銀に25億円を出資します。SBIは全国の地方銀行と資本提携する「連合構想」を掲げていて、あらたな提携先が島根銀行ということ。地銀再編の呼び水となる可能性があります。

いきなり熱くなってきた島根県 西日本

先日、野村證券と山陰合同銀行の仲介業務について書きました。ごうぎん証券と銀行本体の証券口座を野村証券に移管し、口座管理は野村に任せてコストを抑制、山陰合銀は金融商品の販売に集中する。というもので、仲介の新しいスタイルです。その記事で島根銀行はどうするのか、、、と書きましたが、さっそく動き出しました。

苦しい現状に対する打開策が見つからない地銀に対して、証券会社が提携等を持ち掛け、陣営づくりを競い合い始めました。島根県には地銀は2行だけですので、野村證券-山陰合同銀行ペアと、SBI-島根銀行ペアのガチンコですね。これは面白そうです。

東海東京の動きも

野村、SBIのほかにも、以前から地銀との提携に力を入れてきた東海東京証券の動きも気になるところです。2007年に山口フィナンシャルグループと共同出資でワイエム証券を設立しています。山口フィナンシャルグループ傘下には、山口銀行やもみじ銀行があります。いずれも島根県に隣接する山口県、広島県の地銀ですね。さらに、福岡県の西日本シティ銀行とも西日本シティTT証券を設立してます。

本州の西端、島根、広島、山口と、関門海峡を挟んで九州は福岡。証券3社による地銀との提携、新たな収益モデルを築けるかどうか、どのビジネスモデルが成功するのか、、、今後も注目していきましょう。

ダイベストメント(投資撤退)の標的

9/4 日経産業新聞に「ESG投資家から売り圧力」という記事が。記事で取り上げられていたのは石油メジャーの英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルです。ESGに問題のある企業を投資対象からふるい落とすダイベストメントにさらされ、同社が脱石油へシフトしているという内容です。

ダイベストメントもいろいろ

ダイベストメントという言葉は従来、自社の赤字事業を売却したり、その事業から撤退したりすることを指していました。しかし、最近ではESGの文脈で、投資家がESGの観点で問題ある企業に対する投資から撤退することを指すことがほとんどになっています。

ダイベストメントはこうした問題ある企業の株式を売却することにとどまらず、同企業が発行する債券を売却したり、引受をしないこと。銀行が融資を行わないこと、損害保険会社が保険の引き受けを行わないことまでを含んだ意味で使用されています。

日本でよく話題になるものとして、メガバンクによる銀行融資があります。株式投資や保険以上に融資の引き揚げは、企業の事業継続や新規投資を困難にするため、ダイベストメントの中でも最もダメージが大きいと言われます。

石炭火力発電事業者向けの融資額(2016年~2018年)で断トツに大きいのが、みずほFG、続いて三菱UFJFG、そして第4位に三井住友FGなんだそうです。ちなみに第3位は中国建設銀行です。

ダイベストメントの標的は?

では実際にダイベストメントの標的になるのはどういう企業になるのか。石炭にフォーカスして考えてみましょう。まずは石炭を採掘している会社が当然にターゲットになります。同じく、石炭を輸入したり、輸入に向けて海外での生産を支援するような会社、総合商社などがこれにあたります。そして石炭を大量消費する石炭火力発電を行う電力会社などです。

このような企業が一次的な標的にされるわけですが、これらの企業に積極的に融資している銀行までもターゲットになってきているようです。前述のメガバンクです。震災で原発を失った日本としては、石炭火力に頼らざるをえなかったという事情があるわけですが、世界からはそうは見てもらえないようです。脱石炭、脱石油、急がないとマズいです。

野村證券 山陰合同銀行

8/26 日本経済新聞で「山陰合銀、野村と仲介業提携 20年度にも証券口座を移管」という記事がありました。山陰合同銀行とごうぎん証券が保有する証券口座を野村のシステムに移管し、野村証券松江支店が保有する証券口座も、そこへ集約するとのこと。

仲介業の新しい形

今回、野村證券と山陰合同銀行が模索する仲介は斬新だと思います。本業だけで生き残ることが難しい地方銀行にとって、手数料ビジネスとしての証券業務は不可欠です。ただし、そのためにシステムや事務といった大きなコストを負担しながらというのは、もう限界なんですね。

山陰合同銀行にとってみれば、野村の支店に出向して業務をするようなものです。極端な話、名刺だけあれば他は全部野村の装備で済んでしまいます。おまけに、当面は証券のコンサルティングノウハウまで野村の社員が教えてくれるわけです。

地方の銀行でよくある相続による顧客離反。相続が発生すると、相続人の息子や娘は東京に住んでいる。そのため手続きが終わると東京のメガバンクに口座を移され、顧客との付き合いが完全に終わってしまうという問題です。こうしたケースでも、全国に支店を持つ野村が間に入ることも可能になるかもしれません。

その他の効果

全国に展開するんですかね。地銀と証券大手の新しい関係として注目されます。東海東京やSBIに続く、地銀との新コラボ形態。野村にとっても、店舗に係るコスト削減や、社員が望まない地方転勤の回避という難しい人事上の課題を解決する糸口になるかもしれません。店舗を廃止して、その顧客は地銀の担当者に任せることができるわけですね。

島根県にはもうひとつ、島根銀行という地銀があります。金融庁が最も心配している銀行の一つですね。野村が島根県の顧客を託す相手に選んだのは、やはり山陰合同銀行でした。残された島根銀行はどう出るでしょう。引導を渡された形になるんでしょうか。こういう形で地銀の整理が進む、なんてこともあるかもしれません。お隣の鳥取県には野村の米子支店があったはず。鳥取も注目です。

高齢化と金融包摂のためのG20福岡ポリシー・プライオリティ

8/22 日本経済新聞で「G20福岡ポリシー・プライオリティ」が取り上げられていました。「金融砂漠を潤す実験」という記事の中です。

6月末に開かれた20カ国・地域首脳会議(G20大阪サミット)の宣言は高齢化と金融を結びつけるための「G20福岡ポリシー・プライオリティ」を承認事項として盛り込みました。G20と経済協力開発機構(OECD)などが検討してきた行動計画で、長生きがリスクにならないよう金融面で備えるべき8項目の提言からなります。

「福岡」の名前が付いているのは、大阪での首脳会議の前に福岡で開かれた財務相・中央銀行総裁会議に向けて検討してきたからだそうです。

8つの優先項目

この提言は、政策立案者、金融サービス提供者、消費者や実体経済における他の関係者に向けられたもので、高齢化および世界的な長寿化に伴う課題を特定し、これに対応することをサポートするためのものです。以下8項目を載せておきます。

  •  データとエビデンスを活用しよう
  •  デジタルと金融リテラシーを強化しよう
  •  生涯にわたるファイナンシャルプランニングをサポートしよう
  •  カスタマイズしよう - 高齢者の多様なニーズへの対応
  •  イノベーションを進めよう - 包摂的なテクノロジーの活用
  •  高齢者を守ろう - 高齢者への経済的な虐待や詐欺への対応
  •  みんなで連携しよう - 分野横断のアプローチ
  •  特に重要となる対象 - 脆弱性への対応

金融包摂という言葉がいたるところで使われています。金融包摂とは、高齢者であろうが、誰もが取り残されることなく金融サービスへアクセスでき、金融サービスの恩恵を受けられるようにすること。そんな意味で使われていると思います。

高齢化に向けて金融機関に何が求められるのか。世界に向けて発信された「G20福岡ポリシー・プライオリティ」ですが、まずは日本の金融関係者にしっかりとした対応をお願いしたいものです。金融庁HPの「G20福岡ポリシー・プライオリティ」へのリンクを張っておきます。是非、原文もお読みください。

三井住友銀行 ノルマ廃止でSMBC日興証券に影響

三井住友銀行は、支店の評価基準から個人向け営業の収益目標を廃止しました。投資信託の販売額といったノルマが評価項目の一つだったわけですが、今後は顧客の預かり資産がどれだけ増えたかを重視する。という説明がされていたと思います。さらに、支店長が独自に行員に販売額の目標を与えることも禁止しています。今年4月のニュースでしたね。

日本郵便でも

最近では、かんぽ生命の問題の収拾に追われる日本郵便が、やはり保険商品について2019年度の営業目標や販売員のノルマを廃止しました。もっともこちらはあくまで今年度だけのことのようで、来年度以降についてはまだこれから検討すると言ってましたが。

今最もホットなかんぽ生命ー日本郵便でもノルマを廃止してきたということで、ほとんどの大手金融機関は同じ方向に舵を切っていると思われます。面白いですね。別にノルマや目標があっても、適正な勧誘と販売が行われている会社はあると思うんですが、、、。こうなってくるとノルマ=諸悪の根源、になってしまいます。

販売目標の廃止と証券への顧客紹介

話を三井住友銀行に戻しましょう。行員への販売目標を廃止し、支店長が独自に目標を設定することも禁止しました。で、興味があるのは、日興証券への顧客紹介に関するノルマも廃止されたんだろうか。というところです。

紹介顧客数や紹介後に証券で取引が成立した場合の手数料収入が行員へのノルマになっていると、意味がありません。行員が顧客に不利益を与える商品販売を止めただけで、代わりに証券会社の営業員が同じことをするだけのことですから。

また、銀行員は自分の手を汚さないで、証券の営業員の手を汚させるような構図になり、グループ内での両社の関係もおかしなことになってしまいそうです。そう考えると、やはり販売目標と一緒に証券への顧客紹介に関する目標等も廃止されているんじゃないかと思われます。

銀行系証券会社はここから厳しい

こんなふうに考えてくると、これまで数字をこなすために投信販売も、証券会社への顧客紹介もこなしてきた三井住友銀行ですが、今期からはSMBC日興証券に対して、顧客をあまり紹介しなくなると思われます。顧客を紹介すると、銀行の預かり資産は減少する(証券に移るので)のが普通ですから、そういう面でも顧客紹介は減少しそうです。

三井住友銀行を例に書いてきましたが、その他のメガバンクもノルマ廃止の方向に動いています。その結果として日興のみならず、銀行からの紹介顧客に頼ってきた銀行系証券会社は、これから相当厳しくなってきそうですね。これってかなり業績へのインパクトもありそうです。