かんぽ生命 特別調査委員会 調査報告書

12/18 かんぽ生命の保険契約問題に関して、特別調査委員会がまとめた調査報告書が公表されました。150ページにおよぶこの報告書、昔の証券会社の営業を知っているkuniとしては、読んでて気持ち悪くなってくるような、、、そんな内容でした。

パワハラ 恫喝指導

法令違反や規則違反が、以前の報告の倍以上になって1万2千件以上、みたいな報道が先行していました。報告書では不適切販売の実態が明らかにされたわけですが、kuni的には現場で横行していたパワハラや恫喝指導などの営業推進の実態の方がこたえました。

今から約30年前、当時も悪評の高かった証券営業の現場とそっくりです。あんな組織運営がこの時代でも続いていたんですね。数字の上がらない保険募集人へのパワハラや恫喝指導をしてきた人達(金融渉外部長)は、たぶんkuniと同じ世代の人たちだと思われます。

自分が受けてきた酷い仕打ち。自身が管理職になった今、今度は自身が加害者として再現してしまう。悲しい連鎖ですよね。kuniには想像できませんし、管理職時代にこんなこと出来ませんでした。実は今でもたまに夢に見るんですよね、恫喝や一方的な攻撃で支店の営業員が壊れていくシーン。

社長の会見も

郵政3社長の会見も悲惨なことになったみたいですが、日本郵政の長門社長の発言にはかなり気になる部分がありました。グループのガバナンスに課題があるのでは?という質問に対し、

「日本郵政という持ち株会社からみれば、乱暴に言うと事件は現場で起こった。かんぽ生命、日本郵便の社長も経営問題と認識できなかった。情報が上がってこないのが今回の問題だ。」

この回答、皆さんにはどんなふうに聞こえますか?悪いのは現場、、、彼にとっては情報を上げてこないのが原因に見えるんでしょう。実はこれは結果であって、原因はそんな企業風土を改善することなく放置した彼らにあったんだと思います。

給料ファクタリング 債務者を食い物にする輩

給料を事実上の担保として資金を提供し、法外な手数料を要求する「給料ファクタリング」の被害が広がってきているようです。SNSを通じた融資の投稿に、前借りする感覚で利用するケースが目立つと言います。金利ではなく手数料を取るサービスですので、利息制限法の規制を受けません。

総量規制 → 銀行個人向けカードローン → 給料ファクタリング

消費者金融に手を出し、多重債務の罠にはまる。借金を借金で返す悪循環を繰り返し、挙句の果てに自己破産や自殺といった社会現象が問題になりました。多重債務者をなくそうと導入されたのが総量規制です。年収の3分の1までしか借り入れができないというヤツですね。

すると今度は、低金利で収益の上がらなくなった銀行が、総量規制の制約を受けないことを良いことに、個人向けカードローンを積極的に取り上げます。数年間でカードローン残高は倍増し、6兆円まで積み上がります。

銀行が収益のためになりふり構わず拡大させた個人向けカードローンでしたが、やはりその倫理観が社会的に問題視されるようになり、金融庁が止めを刺す格好でピークアウトします。これで銀行は飯の種を一つなくしてしまいました。

銀行がカードローンで貸さなくなっても、借りたい人が居なくなるわけではありません。需要がある限り、それにこたえようとする(付け込もうとする)輩が出てくるんですね。次の役者がファクタリング業者というわけです。

SNSは少額債権の宝庫

ファクタリング業者は、もともと中小企業が持つ取引先への売掛債権をターゲットにしてきたわけですが、少額でより債権回収が容易な個人の給料に目を付けたわけです。比較的若い人が大勢閲覧し、知らない相手とのコミュニケーションも障害になりにくいSNSは、彼らにとって最高のツールになっているようです。

業者に住所と会社名、月給、支給日などを送ると、その日に10万円振り込まれてくる。融資条件は1カ月後に手数料を含む15万円の返済という具合です。年率600%の計算になります。それでも、金利と違って手数料は法律で規制されていません。今のところ法に抵触する行為ではありませんが、かなり悪質な行為です。皆さん気を付けましょうね。

スルガ銀行 貸出債権放棄へ 見切り千両

スルガ銀行が、シェアハウス所有者向けの貸出債権を事実上、放棄する方向を打ち出してきました。土地・建物の返却を条件に借金を帳消しにするという異例の対応です。この約1か月間で、シェアハウスの問題と創業家の問題、一気に解決したことになります。

見事な決断

創業家がファミリー企業経由で保有している同行の全株式を、ノジマが取得すると発表したのが10/26でした。そして11/20にはシェアハウス問題にメスを入れ、一連の不祥事に伴う「負の遺産」の処理にメドをつけることになります。これはなかなかできない決断だと思いますね。特に銀行にはできない判断のように思います。

わずか1か月間で見切りをつけたこの判断。相場の世界では「見切り千両」などと言いますが、お見事だと思います。今年6月、外部から副社長に就任した嵯峨行介氏(元はリクルートコスモスでしたか)の手腕によるものでしょうか。創業家排除に協力した、野島廣司社長の力もあったかもしれません。

損得勘定

借り手の借金を帳消しにして、シェアハウスという資産を抱えることになりますが、これがかなり傷んでしまった資産なわけです。そのため、速やかにシェアハウス向けの債権を第三者に売却するための入札手続きを始めたと伝えられています。

19年3月期に多額の貸倒引当金を計上していますので、おそらくこれ以上の損失が追加されることはないんでしょう。現時点での評価損を引きずることなく、すべて処理してしまうわけですね。

投資や事業に失敗した場面、当事者たちはついつい判断を先送りしてしまいます。そのことが命取りになる事例を何度も見てきました。今回のスルガ銀行の決断、棄損したブランドや信用をここで一回リセットできるという意味で、同行の将来にとって非常に大きなメリットがあると思われます。

SBI砲炸裂 福島銀行 地銀が動き出した

11/11 この週の株式市場が開く直前に「SBIと福島銀行が資本・業務提携」というニュースが。前週末の終値243円の福島銀行株はこの日310円まで買われました。翌日も値を飛ばし、3日目には470円まで付けています。凄いですね、SBI砲の威力。

地銀の地殻変動が

9月上旬には、SBIと島根銀行が、資本・業務提携するというニュースがあり、当ブログでも取り上げました。SBIは全国の地方銀行と資本提携する「連合構想」を掲げていて、地銀再編の呼び水となる可能性がありそう。なんてことも書いておきました。

第二弾に選ばれたのが福島銀行。島根銀行同様、金融庁が最も気にしている地銀の一つですし、当局的にも好感度抜群ですね、SBIの施策。株式市場で銀行株を空売りしてる投資家にとっては、恐怖のSBI砲です。おちおち売ってられません。当然、多くの地銀株で買戻しが進みました。

前にも書いたように、東海東京証券や野村證券も地銀との提携等を進めています。地銀の地殻変動を主導するのが証券会社とはねぇ。数年前までは想像もできませんでした。

次のターゲットは

収益力(ROA)の低い地銀で、現在金融商品仲介でSBIに委託を行っている地銀。という流れで調べてみると、福井銀行、高知銀行、長野銀行、青森銀行、宮崎太陽銀行、、、なんかが出てきますね。これらの地銀、いずれも証券子会社を持っていません。

証券各社による地銀の奪い合いが熾烈化する一方で、地銀自身の新たな動きも出てきたようです。東日本銀行が横浜銀行から頭取を受け入れ。南都銀行が郵便局との共同窓口設置。山形銀行が銀行初の全額出資で地域商社設立。。。なんていうニュースも、ほぼ同じタイミングで伝えられています。

ノジマ スルガ銀行筆頭株主へ その目的

ノジマは10/30、経営再建中のスルガ銀行の筆頭株主になりました。スルガ銀行の持つクレジットカード事業が狙いではないかと言われていますが、今のところその辺りははっきりしません。11/1付の日本経済新聞で、日経がノジマ社長にインタビューをしていましたが、けむに巻かれていました。

野島社長

なんだか面白そうな人ですね。横浜ベイスターズの買収を試みたり、ITXやニフティを子会社化してきた人です。この人がM&A等で興味を示してきた企業、決してその企業の最盛期にある状況でもなさそうです。企業の持つポテンシャルに比べ、その時点での評価が低すぎる企業。そんな見方で捉えてらっしゃるんでしょう。まぁ、これが本来のM&Aのあるべき姿なんですが。

創業家の保有株式を取得

10/29付で、創業家とファミリー企業の保有する3129万株(議決権比率13.52%)を取得しています。取得金額は140億8千万円となっていますので、1株450円で取得したということですね。ノジマが筆頭株主に、、、と伝えられた直後に、スルガ銀行株は506円まで買われましたが、その後じわじわと下げてきており、この450円に収れんしつつある、そんな感じです。

ノジマは昨年中にもスルガ銀行を市場買い付けしており、こちらは1156万株(議決権比率4.99%)です。今回の取得と併せて4285万株(議決権比率18.52%)で筆頭株主になったというわけです。

純投資?

昨年、市場でスルガ銀行株を買い付けていた当時は、純投資が目的だったと言っていました。実は今でも野島社長の中では純投資に限りなく近い感覚なのかもしれませんね。

PBR0.5倍を割れた水準で取得。地銀としての収益力はかなり高い方。おまけにこの会社の最も重い病巣を全摘出(創業家との絶縁)する手術に成功したというわけです。そこにクレジットカード事業がおまけで付いてきた。そんな感じなんですかね。