スルガ銀行 金融庁の行政処分を受けて

ダイヤモンド オンラインに「スルガ銀行に退場の道を用意せよ」という刺激的な記事がでていました。山崎元のマルチスコープというコーナーです。今は楽天証券の経済研究所にいらっしゃる経済評論家の方ですね。

今はスルガ銀行のホームページにも行政処分の内容が掲載されているようで、それを見てこの寄稿となったようです。こんなに酷かったのか、というのが感想のようで、これからこの方と同じように、スルガ銀行の今後に対して辛口なご意見される方が増えていくんでしょうね。

自主廃業

この方のご意見、「山一証券同様自主廃業でもいいのではないか」。おっしゃる通りだと思います。大賛成です。山一の自主廃業は発表されたのが1997年11月でしたか、kuniもよく覚えています。当時の社長が泣きながら「社員は悪くありません」って会見していた姿を。

ただ、山一は昭和40年にも一回潰れかけていて、日銀特融受けてますし、この時が2回目でした。日銀も今と違ってもっと毅然としてましたしね。加えて、この当時、毎週のように週末になる度に銀行が潰れてたんですよ。マジで。かなり特殊なというか、極限状態でしたから、自主廃業を選ばせることが出来たんでしょうね。

今はそんな状況ではなさそうです。日銀は一生懸命ETF買ってますし、金融庁は金融処分庁から金融育成庁に大変身されたようです。消費税10%やオリンピックに向け、物価を上げて、景気を良くしていきたい政府の意向も考えると、ここで「銀行が潰れちゃいました」はないでしょうね。シャレになりません。

また、これは地銀の特徴ですが、おそらくご当地の顧客からの信頼は、我々が思っているほどには失わないんじゃないでしょうか。ご当地顧客がインタビューに答えていました。「あれは都会の(東京の)お客さんが飛び付いただけ」みたいな。ご当地の顧客との間で築いてきた関係って意外に強固なのかもと思いました。

まとめ

色々書きましたが、今後も地銀100行が生き残りをかけて、崖っぷちの争いを展開していくわけです。そんな業界の経営者たちに対しては「不正なことをやったら、こんなことになってしまうんだ」という教訓にはしてほしい。そう考えると、やっぱり金融庁の行政処分だけでは甘過ぎるわけです。

自主廃業とまでは言いませんが、現在の暫定的な経営陣も含めて、今回不祥事発生時の経営層に対する責任追及はもっと厳格に行うべきだと思います。マスメディアの皆さん、そこをもっと調査して報じてくれませんかね。特に、見事にフェードアウトされた元社外取締役とかね。

金融庁 足元の動向

スルガ銀行一部業務停止

金融庁は今週中にもスルガ銀行に対して、投資用不動産向け融資の業務停止命令を出す方針を固めたらしいです。併せて法令遵守や経営管理体制の見直しを含む抜本的な再発防止を求める業務改善命令も出すとのことで、業務停止の期間は数ヶ月の見通しだそうです。

まったく目新しさのない報道ですね。日本経済新聞で読みましたが、他紙も同様の報道となっています。複数の関係者によると、とかいう書きぶりの新聞もありましたが、こんな記事1週間前でも書けただろって内容です。業務停止期間が数ヶ月というところだけがニュースですかね。

どういうふうに記者に伝わっているのか知りませんが、公表する予定の事実がこうしてメディアに事前に流れてしまう金融庁の体質はいただけませんね。内容によっては株価へのインパクトもあるわけで、インサイダーを所管している官庁として失格でしょ。

それでなくても、役人に対する世間の目は非常に厳しい今日この頃ですよ。こういう感覚が庶民には理解できないわけです。本人たちにしてみれば、何か起きたときのために、メディアに恩を売ってるつもりでしょうかね。つまらん内容の記事を、ありがたそうに1面で報道する新聞社もイケてません。

金融取材メモ「金融庁」地銀の競争は激しい

金融庁が行政方針の中で言っていた、「銀行の顧客である融資先企業へのアンケート」の結果のようです。企業アンケートの調査結果を活用して、事業性評価に基づく融資や、本業支援等の組織的・継続的な取り組みについて、優良な取り組みを実践している金融機関の表彰・公表を行う。ってやつですか。また間違って第二のスルガ銀行を表彰しないようにね。

記事を読む限り、アンケート調査して、出てきた内容ってこんなもん?っていうのが正直な感想です。いかにも金融庁が聞き取り、もしくは書面でアンケートやモニタリングした結果のように見えますが、実はこれ帝国データバンクに依頼した調査の結果なんですね。

金融庁ホームページの 公表物→委託調査・研究等→「企業アンケート調査の結果」で出てきます。スルガの件は公表前の報道でしたが、こちらの調査結果は9月26日付けで公表されています。まだ詳しく見てないんですが、目新しい内容がありましたらまた投稿する予定です。

地方銀行 投信販売

地方銀行の投信販売額等のデータに接する機会がありました。この過酷な環境下、地銀は生き残りをかけて投信や保険を売りまくっているのかと思いきや、意外にそうでもないんですね。

低迷する投資信託の販売額

地銀協のデータですので、第二地銀は含んでません。2014年度までは毎年増加していますが、この年度をピークに15年度、16年度と販売金額は減少しており、17年度(前年度)やっと増加に転じてます。とは言え15年度実績には届かない程度です。

なんとなく状況は理解できます。ピークとなった14年度の9月、金融庁が初めてフィデューシャリー・デューティーを言い出してます。ここが転機になったのでしょう。

15年度からはこのフィデューシャリー・デューティーのせいで、投信の短期乗換は睨まれるし、このころ絶頂期だった毎月分配型投信(特に通貨選択型投信)の販売は気が引けると。約2年間どうしていいのか分からないという状況だったんでしょうね。この間投信残高も減少させていて、販売も残高も大幅に伸ばした証券会社と対照的です。

アパートローン、カードローンと投信販売

投信販売が低迷していたこの期間、地銀が力を入れてきたのが、アパートローンやカードローンだと思われます。で、ご存じの通りアパートローンもカードローンも頭打ち。スルガ銀行や東日本銀行の不祥事も出てきて、やり過ぎた銀行はこれからあっせんやら訴訟やら、顧客対応に追われることでしょう。

実はこの期間、かなり株式市場は好調だったんですよね。だから証券会社は乗換ができなくても、通貨選択型投信が売れなくても、投信販売を大きく伸ばしたわけです。

ここから本気? 投信販売

これから地銀が法令を遵守しながら本気で取り組んで、ちゃんとした収益が見込める商品は、投資信託だけになったんじゃないでしょうか。保険はフロントフィー(契約時に入る手数料)の見直しがあったので、今一つ行員に人気ないだろうし。

聞くところによると、これまで投信は若手と女性行員にしか販売させてこなかったとか。マーケットが下げた時、顧客から苦情を受けるのは若手と女性だけ、そんな構図では誰も本気で取り組みませんよね。これからは支店長はじめ全員で頑張ろうって雰囲気になってきてますかね。

このマーケット環境、この水準から本気で投信販売に取り組まなきゃ、というのはどうなんでしょう。どうにも買わざるを得なくなった人たちが大挙して市場に参入してくるとき、相場は天井付けるものなんです。ちょっと嫌な予感がします。

スルガ銀行 株主 創業家株式売却

スルガ銀行 創業家株売却へ

9/21 日本経済新聞記事です。創業家が関連企業などを通じて保有するスルガ銀行株を売却する意向とのこと。企業文化・ガバナンス改革委員会に対し、このことや同行からの借り入れを返済する用意があることを伝えてきたようです。

昨日の日経記事、金融庁は一喜一憂でしょうね。スルガ銀行は今後の焦点と見られていた創業家に新しい動きが出て、やっと道筋が見えてきたと思いきや、仮装通貨67億円が流出。これでまたいろいろと批判にさらされるんでしょう。流出の事実の公表の仕方などちょっと気になるところもあります。ただ、このお話は別の投稿で。

創業家関連企業の持ち株は発行済み株式の15%超

この15%の株はどこに行くんでしょうかね。創業家の手を放れることで、新しい経営陣が、機能不全だったガバナンスを立て直し、健全な地域金融機関として再建さしていく。とまぁ、メディアが描いてきた勧善懲悪の構図がこれで完成しそうなもんですが、そう簡単には行きません。

金融庁検査の対応、訴訟の嵐、まともにやったんじゃ、そもそも生き残れそうにない銀行の事業環境。加えて、ここから参入してくるであろう、この会社の解散価値に着目した物言う株主たち。

BPS 1,400円 PBR 0.4倍

昨日このニュースを受けて株価は620円のストップ高。創業家が手を引き、創業家に対する怪しい融資に関してもクリアになるということで、株価は一気に反応しました。ここで市場が注目したのが、以前紹介した一株あたり純資産(BPS)、すなわちこの銀行の解散価値です。

その他の銀行株も金利の上昇気配を材料に、3日間上昇していたことも手伝ってのストップ高。早くも目標株価を1,400円とか言ってる人もいますね。ここで注意しておくべきことをいくつか上げておきましょう。

まず、一株あたり純資産の1400円について。過剰な融資から発生する貸し倒れでどれぐらい損失を計上するか。これにより純資産は減少します。また、ほとんどの融資がでたらめだった訳ですから、今後の訴訟等で賠償金額が膨らみ、これも純資産を減少させます。一方で株主代表訴訟では経営陣の責任を問い、賠償金は会社に入りますので、こちらは純資産を増加させる作用があります。

次に、PBRの0.4倍について。別の投稿でも取り上げましたが、もともと地銀株のPBRは0.4倍を下回っていたわけですから、他行との比較ではそれほど上げ余地はないということです(ただし、銀行株全体が上げ始めてますから、地銀株PBRも上昇傾向にありますが)。こんな風に考えていくと、このあと大きく上げるとは思えないわけですね。

最低限これくらいのことを頭に入れて、値動きを見ていきましょう。ただ、一般投資家が手を出す銘柄ではないですからね。最後に、この株、信用取引の空売りの買戻しという特殊要因があります。上げるときの勢いは凄いはずです。実はこれが一番の材料でして、完全に理屈抜き。マネーゲーム化すると思いますので、、、あくまで傍観で。

コンビニATM、ローソン銀来月開業

9/11 日本経済新聞 9面の記事。ローソン子会社のローソン銀行が来月から開業するとのこと。というニュースなんですが、これまでローソンが銀行持ってなかったの知りませんでした。ATMは既に13000台展開しているものの、銀行業は営んでなかったんですね。

地銀と連携、共同店舗も探る

社長の会見では「「地域経済の活性化へ地銀やローソンと一緒に取り組む」と、地銀との連携を強調した」とあります。

銀行がこぞってATMの廃止を検討しているなか、その代替手段としてコンビニのATMは最有力。キャッシュレス化は避けて通れないかもしれないが、ATMの需要は引き続きある程度残るはずと予測しているんでしょう。

コンビニ各社の勢力図を都道府県別に見ると、けっこう偏りがあるのはみなさんもご存じだと思います。関東はセブン、関西はローソンみたいな色が付いています。

今回のローソン銀行の戦略は、この競争力がある都道府県に資源を集中し、そこを地盤としている地銀等を取り込むことにありそうな気がします。

それにしても今さらローソン銀行

記事にあるように、なぜこのタイミングで?ですよね。やはり、銀行がATMを手放すタイミングだからでしょうか。共同店舗も構想しているようですが、こちらはターゲットの地銀一行との共同店舗ということになると思われます。ATMはいくつもの銀行と提携できますが、共同店舗構想となると、複数行相手というのは無理がありそうです。

また、共同店舗とは言ってますが、ローソン銀行が銀行として預金や貸し出しで儲けるのではなく、銀行免許を持つことで店舗の共同化を進めようとするところに意味があるのかもしれません。何かと足枷の多い銀行業ですが、地銀の合理化ニーズに相当貢献しそうな構想ですし、金融庁もNOとは言わないでしょう。やはり「このタイミング」は地銀の合理化ニーズにあわせた、としか思えませんね。

ATM、リテール窓口業務は完全廃止し、その機能はローソン銀行の店舗で代替・サービス継続。一方支店に関しては大幅に削減するとともに、残した支店も全て空中店舗化。地域金融機関の新たな合理化ビジネスモデルとして、来年あたり、こんな地銀が20行くらい出てくるかもしれませんね。