【経済教室】膨らむ高齢者の金融資産

週末に続き、8/27 日本経済新聞に高齢者と金融に関する記事が掲載されました。一面トップ記事の次は経済教室ですか。なんか気合い入ってますね。

金融資産の高齢化

記事の中に「こうしたトラブルを回避するため、業界ごとに一定年齢以上の高齢者については慎重に契約を進めるなど自主的な取引規制を設けている。とはいうものの事業者が認知機能を巡るトラブルのリスクを回避するために、年齢のみで一律に高齢顧客を回避すれば、認知機能が高く金融商品を理解できる高齢者もリスク資産から遠ざけることになる。」という記述があり、「金融資産の高齢化はリスクマネー供給の先細りや株式市場の縮小、さらには金融市場のゆがみをもたらしかねない。」とも書かれています。

金融商品販売の現場で起きていること

実はここで指摘されているような「年齢のみで一律に高齢顧客を回避する」という想定は、既に現場で実際に起きています。各金融機関が取引規制として設けているのは、多くの場合、一律な適合性チェックの手続きであり、一律に取引を禁止しているわけではありません。しかしながら、高齢顧客の場合、顧客の適合性を十分確認するための面倒な手続きが存在すると、現場としてはどうしても高齢者を敬遠する傾向が強くなってしまうということなんです。

結果的に営業員は高齢顧客との取引を出来るだけ回避し、高齢者の保有するリスクマネーは市場に供給されにくくなっています。もう既に起きているということです。

求められる取り組み

金融ジェロントロジーという枠組みの中で考えるべきかどうかは別として、高齢化による顧客の判断能力の低下という避けて通れない現実に対しては、3つの側面から対応を考えていく必要があると思います。

  1. 判断能力がないとされた高齢者の保有資産に対する金融機関側の柔軟な対応
  2. 判断能力が低下していくことに備えた商品や取引の提供
  3. 高齢化に備えた資産形成期から始める長期投資の枠組みとしての商品開発

この中でも特に速やかな対応が求められるのは①と思われます。常識的に考えて、顧客の口座から解約出金に応じることに相応の妥当性があると思われる状況でも、金融機関として何も出来ない。既にご家族の方から念書を差し入れてもらうことで、出金対応している金融機関もあるようです。しかしながら、個々の金融機関に任せるだけではなく、成年後見制度に加えた公的な枠組みや、自主規制機関等によるガイドライン的な枠組みなど、早急に検討するべきだと思います。