イオン銀行 金融庁の業務改善命令を受け社長を解職

イオンフィナンシャルサービスは1/14、「代表取締役及び取締役の異動(辞任及び選定)に関するお知らせ」を公表しました。子会社のイオン銀行が金融庁から業務改善命令を受けたことに伴う異動ですね。イオン銀行でも社長を同日付で解任したと発表しています。

イオンフィナンシャルサービス

イオンフィナンシャルサービスは、クレジットカードや割賦販売あっせん、融資(カードキャッシング、各種ローン)、銀行業、保険事業など幅広い金融サービスを国内、アジアで展開するイオン系の総合金融グループ。東証プライム上場企業です。

異動の内容

マネロン・テロ資金供与対策に係る不適切な業務運営が指摘され、業務改善命令を受けたイオン銀行。その責任を問われイオン銀行の社長を解任。新社長には親会社のイオンフィナンシャルサービス取締役が就任。さらに親会社の社長も解職され、現会長が社長を兼任することに。

金融庁OBやないの

命令を受けるに至った問題点は多岐にわたっていますが、ザックリいうと、金融界が10年から15年前に金融庁に怒られながら対応してきた課題をいまだに放置したままでした。みたいな状況です。経営陣の責任が問われて然りですね。

ただ、ちょっと気になるのが、新態勢を構築するために親会社の社長に返り咲いた会長さんって、金融庁OBなのね。っていうか、いわゆる天下りです。そんな方が経営陣のど真ん中に居ながら、こんな事態起こしたのかよ、って感じ。まぁ金融庁としては、対外的には金融庁と深い関係を持つ人材を充てることにより、態勢の再構築を行わせるため、みたいな説明するんだろうけど。相変わらず身内には甘いんだな。

きらぼし銀行 4億6,000万円の不審送金「見逃し」疑惑

少し前になりますが、きらぼし銀行で、長野県内の会社社長が約4億6,000万円を送金した際、犯罪収益移転防止法などに基づく確認が不十分だった疑いがあり、金融庁が同行側から事情聴取したことが報道されました。

きらぼし銀行

きらぼし銀行は東京都民銀行、八千代銀行、新銀行東京が合併して誕生したきらぼし銀行を中核とする都市型地銀グループ。東京都、神奈川県北東部を主な営業エリアとし、中小企業と個人顧客をターゲットに総合金融サービスを提供する東証プライム上場企業です。

犯罪収益移転防止法などに基づく確認

社長は2か月弱の間に、会社資金を個人口座に移し、外国人名義を含む多数の口座に1回数百万円以上の単位で約80回送金し、犯罪収益移転防止法の関連指針などに抵触する可能性がありましたが、同行は送金目的などの確認を徹底しなかったということです。

同法は資金洗浄(マネー・ロンダリング)やテロ資金等が反社会的勢力に流れることを防止するため、金融機関等の取引時確認、取引記録等の保存、疑わしい取引の届出の義務などの規制を定める法律です。異常な取引であることを立証する必要はなく、上記の確認や疑わしい取引ではないかと金融庁に報告するまでが求められています。

メガバンクでは送金依頼を拒否

なんとも情けない話ですが、この社長による送金、あるメガバンクではその異常性に疑問を持ち、途中から送金依頼を拒否していたそうです。しかし、きらぼし銀行では支店から本店に報告が上がったり、異常に気付いたりすることもないまま、約80回にわたって計約4億6,000万円を送っていました。送金先の口座の大半は、のちに捜査機関から「犯罪に使われた疑いがある」と認定されています。

内部管理部門に十分な人が割けないなど、いろいろ理由はあると思いますが、金融機関としての責務が果たせないなら、金融という事業を継続する資格はありません。

愛媛銀行の元パート職員の女 顧客の金を盗んだ疑いで逮捕

少し前になりますが1/23、顧客の金1,900万円あまりを着服したとして懲戒解雇されていた元愛媛銀行のパート職員の女が、このうち1人から現金30万円を盗んだ疑いで警察に逮捕されました。銀行や保険の営業職による顧客資金の着服、なくなりませんねぇ。

愛媛銀行

愛媛銀行は愛媛県松山市に本店を置き、愛媛県を中心に支店展開する地方銀行です。愛媛県の地域金融機関としては、預金量、貸出残高ともに伊予銀行に次ぐ第2の規模。元は相互銀行ですね。現在は東証プライム上場企業です。

不正の概要

この着服事件については、昨年11/17、「不祥事件の発生について」で愛媛銀行も公表していました(適時開示はなし)。同行吉田支店のパート職員(女性:50代)が、2018年7月から2023年10月までの間、教育費や仕送り、他行他社の借入返済等を賄う目的で、顧客宅を訪問した際、キャッシュカードを預かり、ATM から出金するなどの手口で着服していたということです。

被害者は8名の顧客で、被害金額は累計で19,332千円だそうです。・被害に遭った顧客の家族からの問合せを受け昨年10月に発覚しました。当該元パート職員は、同月末日付にて懲戒解雇となっています。被害金についは、愛媛銀行が全額弁済し、警察には被害届を提出したとのこと。

8人の顧客って、やっぱり高齢者なんでしょうね。孤独な老人に、「こんなに優しく接してくれるのはこの人だけ」って感じだったのかな。つけ込んで着服する奴が悪いのは間違いないけど、高齢者をそんなふうにほったらかしにしてる家族もちょっと考えないとね。

きらやか銀行 コロナ特例で公的資金注入へ

日本経済新聞は5/12、「山形・きらやか銀行に公的資金注入へ 初の『コロナ特例』」と伝えました。金融機能強化法に基づく公的資金注入を金融庁に申請する検討に入ったことが分かったとのこと。同日、きらやか銀行を傘下に持つじもとホールディングスも、報道されていることについて、「グループ内で検討していることは事実」と認めています。

きらやか銀行

昨日に続き地銀ネタになります。きらやか銀行は山形県を地盤とする地銀。宮城県を地盤とする「仙台銀行」との経営統合により地域金融グループとして発足した銀行持株会社が、じもとホールディングスです。店舗は宮城・山形を中心に、新潟や秋田、福島などに展開しています。地元ホールディングスは東証スタンダード市場上場企業です。

公的資金の注入

新型コロナウイルス禍で苦境に陥る中小企業の支援を目的とした特例制度を利用し、きらやか銀行への200億円規模の注入を求めるとのこと。金融庁もこれを認めるようですね。昨年9月、じもとホールディングスが金融機能強化法に基づいて策定した経営強化計画、金融庁もこれを承認しているだけに認めざるを得ないという格好ですかね。

「コロナ特例」の申請第1号となる見通しだそう。「コロナ特例」の公的資金とは、通常は15年の返済期限を実質的に撤廃し、経営責任なども問われないというもの。コロナ後の企業の再生を後押しする役割が金融機関に託されているからとはいうものの、ん~、いかがなもんでしょう。

きらやか銀行が公的資金注入を申請するに至った最大の理由は、外債投資の失敗が原因だといいます。その他有価証券の評価損が37億円に拡大しています。2009年にも200億円の注入を受けており、2012年にも。そして今回となれば3回目の公的資金です。公的資金に依存する状況が恒常化している同行。う~ん、いかがなもんでしょう。

山陰合同銀行 電力に銀行として初参入

日本経済新聞は5/7、「電力に銀行初参入 山陰合同銀、再エネ活用で収益多様化」と伝えました。2021年の銀行法改正で参入が可能になったわけですが、耕作放棄地などを利用した太陽光発電のほか、自然エネルギーの活用を進め、銀行の収益多様化と地域再生につなげるといいます。

山陰合同銀行

山陰合同銀行は、島根県松江市に本店を置く地方銀行です。島根・鳥取両県をはじめ、山陽・兵庫・大阪をカバーする広域なネットワークを持っています。島根県下の地方銀行、信用金庫、信用組合の中で預金量、貸出残高ともに最大の地域金融機関で、東証プライム市場上場企業です。

電力参入

銀行では初めての電力事業参入です。今夏にも新会社を設立し、再生可能エネルギーの発電施設を管理・運営。新会社はまず、鳥取県米子市と境港市が進めるゼロカーボンシティ構想に参加するとのこと。地元企業と協力し耕作放棄地などに太陽光発電の施設(計約1万4000キロワット)を整備し、約600の公共施設などに対して電力を供給できるようにするとしています。

人口の減少、高齢化が進む島根県や鳥取県。耕作放棄地の増加は非常に大きな問題です。そうした土地を有効利用して電力を発電し、銀行自身の収益を多様化しつつ、地域再生につなげていこうという試み。これってかなり納得感のある施策ですね。

今後行き詰っていくことが目に見えている地方金融機関。法律も緩和されてきていますし、このような地域再生につながる新事業にはどんどん攻めていくべきかと。以前松江市に住んでいたことのあるkuniとしては応援したいところです。地元では山陰合銀は超一流企業。マーケット自体は小さく、大手の参入もなさそうだし、この新事業は期待できるかも。