ESG投資

ESG投資とは、従来の財務データによる分析に加え、環境(E)、社会(S)、ガバナンス(G)の観点から投資対象を評価しようというものです。今回はこの手法についてもう少し詳しく見ていきます。

そもそもの前提

「社会や環境を意識した投資は、同時に財務リターンも高く、投資リスクも小さい」という大前提があります(kuniは前者について、やや疑問視してますが)。社会や環境を意識した経営戦略は、企業利益や企業価値向上に繋がると言われています。

国連のPRI(責任投資原則)

そこに国連のPRI(責任投資原則)が導入され、世界中の機関投資家がこれに自主的に署名し参加したわけです。その6つの原則を見てみましょう。

  1. 私たちは投資分析と意志決定のプロセスにESG課題を組み込みます
  2. 私たちは活動的な所有者となり、所有方針と所有習慣にESG課題を組み入れます
  3. 私たちは、投資対象の主体に対してESG課題について適切な開示を求めます
  4. 私たちは、資産運用業界において本原則が受け入れられ、実行に移されるように働きかけを行います
  5. 私たちは、本原則を実行する際の効果を高めるために、協同します
  6. 私たちは、本原則の実行に関する活動状況や進捗状況に関して報告します

ほぼ世界中の機関投資家たちがこんなことになってるのです。新興宗教の教義みたいですが、かなりのインパクトがありそうです。

ESG投資の種類

では、具体的にどうやって投資対象を決定したりするのか。GSIAという機関によると、7つの投資の種類があるそうです。

  1. ネガティブ・スクリーニング
  2. 国際規範スクリーニング
  3. ポジティブ・スクリーニング
  4. サスティナビリティ・テーマ投資
  5. インパクト・コミュニティ投資
  6. ESGインテグレーション
  7. エンゲージメント/議決権行使

ネガティブ・スクリーニングというのは、武器やたばこ、原子力、ポルノ、ギャンブル、化石燃料といった宗教的倫理観に反するものや、環境破壊に繋がるような業種を投資対象から除外するという方法です。最初から投資対象から除外されるというのはかなり厳しいです。

逆にポジティブ・スクリーニングというのは、ESGに優れた銘柄のみ選抜して投資対象とする手法です。このようにいろいろな角度からESGに照らして企業を分析し、投資対象を選んでいき、7のように、株主となった後には、物言う株主として議決権を行使していくんですから、投資対象となる企業も他人事ではいられません。

当然、企業としてもESGを意識し、それの実現に向けて、具体的なアクションを網羅しているSDGsを進めて行かざるを得ません。

個人投資家にとってのESG

どうでしょう。株式投資におけるESGの重さについて、実感できたでしょうか。今なお折に触れ報道される人権侵害や、各種ハラスメント等の事件。たった一つの事件であったとしても、機関投資家の投資対象や保有対象から除外するアクションに繋がりかねないということです。

逆に、ESGに関して、大きく貢献できる事業分野を見出していく企業にとっては、猛烈な追い風になります。我々一般投資家もこの目線は持っておかなければならないということですね。

ESGとSDGsの関係

ESGって何?

ESGとは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字を取ったもので、企業の長期的な成長のためには、ESGが示す3つの観点が必要だという考え方です。

ESGの観点は、上場企業に投資する機関投資家の間で急速に広がってきています。銘柄選定において、従来のように業績等の財務情報だけを重視するだけでなく、ESGに対する企業の取り組みも評価するスタイルを「ESG投資」と呼んでいます。

ESG投資は国連責任投資原則(PRI)により裏付けられており、世界1,500機関以上のアセットオーナーや運用会社などが署名しています。世界最大の年金基金である日本の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)も2015年9月に署名をしました。

つまり、国連が主導する形で世界の運用のプロたちがPRIに賛同し、ESG投資を積極的に推進しているということです。今この記事を読んでくださる方には、一旦「ESG」は「ESG投資」として理解しておきましょう。正確ではありませんが、あとで説明する「SDGs」との関係が理解しやすいと思います。

SDGsって何?

SDGsとは、「Sustainable Development Goals」(持続可能な開発目標)の略です。これも国連を中心として生まれた基準で、ちなみに読みは「エスディージーズ」が正解です。SDGsでは17の目標が掲げられており、それらを達成するための具体的な169のターゲット(目標を具体化した項目)が設けられています。

簡単に言うと、世界を良くして行くためにこの17項目を共有し、各国で取り組んでいくことにしたわけです。そのため政府はもちろん、これに取り組んでいくわけですが、民間企業にも積極的な取り組みが要求されています。投資との兼ね合いでもう少し明確に言うと、上場企業はこの17の目標に向けて取り組まなければならないわけです。

「SDGs」は上場企業が取り組んでいかなければならない、社会課題の解決に向けた世界共通の目標と言えるでしょう。

ESGとSDGsの関係

以上をまとめると、

企業はSDGsに積極的に取り組むことにより社会の課題を解決していき、世界の機関投資家はそうした企業を見極め、ESG投資により積極的に出資して支援していく。

という関係性で理解し、記憶しておくのが良いかと思います。次回はこのESC投資で投資の世界がどんな風に影響を受けるのか、について書いてみたいと思います。

金融庁 NISA

金融庁ついででもう一つ。金融庁のお墨付きのNISA、投資にかかるコストが低いことでお勧めのETFと並んで、一押しですね。しかし、ちょっと警鐘を鳴らしておきたいのが積み立てNISAです。実はETFにも金融庁の大失態があったんですが、これはまた後日書く予定です。

忌まわしい記憶しかない制度商品

積み立てNISAは毎月同額を同一銘柄に投資していく手法と、非課税が売り物で、それなりに残高は増加しているようです。ただ、取り扱う金融機関にとっては収益性も低く、真剣に取り組んでいる大手金融機関は皆無と思われます。

金融機関では、この手のお上主導で導入される商品のことを制度商品と呼びます。古くは株累投やミニ株など、毎月積み立てで買い付けていく商品がありましたが、これには証券会社は手を焼きました。もの凄いコストが掛かってしまう割りに収益はほとんどなし。やっとこの制度商品を廃止できたと思ったらNISAが登場したわけです。

積み立てNISAは儲かるのか

毎月同額を買い付けるというのは、投資における買いのタイミングを分散させ、平均的な買い付け単価にしてくれるというメリットがあります。また、積み立てNISAの場合は買い付け時手数料がかからない(かなり安い)、信託報酬も非常に少なくてすむというメリットもあります。金融庁もそこを最大限アピールしていますね。

しかし、一方で認識しておかなければならないのは、20年にわたる投資期間には非常に高いリスクがあるということです。戦後の高度成長期やバブルがはじけた以降のマーケットは基本的に長期に投資していれば勝つことができました。

実はkuniが業界に入った頃に始めた持ち株会(これも毎月同額を買い付けていく商品です)は、30年たっても報われませんでした。要するにその長期間、それなりに成長してくれる投資対象を選ばなければ意味がないわけです。今の日本、全産業が20年間確実に成長していくとは思えません。投資信託の銘柄選定はとても難しいと思います。

加えて、現在の株価水準は相当高いところにありますし、日銀が一生懸命ETFを買い付けることで、株式市場は下駄を履かされている状態です。いずれ何かしらの形でバブルがはじけ、長期投資のメリットを帳消しにしてしまうでしょう。

マーケットが一旦壊れてからのスタート

日銀のETF買い付けやNISA、積み立てNISAの積極推奨により、現在は相応に高い水準と考えてください。20年間というリスクを抱え続けるよりは、最初の5年間を捨てたつもりで、暴落場面を待って投資を開始するのがよろしいかと。

実体経済の50倍もあると言われる金融経済。まさに、犬の尻尾が胴体を振り回すのが当たり前になっている世の中ですから、バブルは必ず来ます。必ず大きく下げる場面があります。長期投資はそこからスタートでも遅くはないと思います。もちろん、自己責任ですよ。

金融庁長官 遠藤俊英氏 

金融行政のあり方を大きく変化させた森長官のあとを引き継ぎ、7月、遠藤俊英氏が長官に就任しました。「金融財政事情」にインタビュー記事がありましたので、感想やら何やら。

前任の森信親長官が残したもの

史上最強といわれ、これほどまでに金融機関が振り回された長官は過去に居なかったと思われます。地銀の再編に注力し、フィデューシャリー・デューティー(顧客本位の業務運営)を金融機関に求め続けました。金融機関との対話にも力を入れ、従来の金融機関に対する検査を、大きく変えたのも彼の考え方によるものと言われます。

しかしながら、長期政権といわれた3年間、何もかも成し遂げることなく、後任に残したままの退任となりました。中でも「仮想通過」と「スルガ銀行」に対する甘い読みは、後に大きな傷跡を残すことに。森長官自身が仮想通貨に対して相当柔軟な姿勢で対応したことや、スルガ銀行のビジネスモデルを「地銀のお手本」と称賛してきたことは有名な話です。

第10代長官 遠藤俊英氏

検査局長や監督局長を歴任し、金融行政に精通していると言われる遠藤氏。インタビュー記事では「金融庁では広範な行政テーマや課題を設定してきたが、」と前置きし、前長官が理想に燃えて拡げてしまったテーマや、失策により炎上させてしまった課題に対し、「具体的に実行していくステージ」と表現しています。

確かに気の毒ではあります。本人の言葉としても「(前長官時代に)金融行政のあり方を大きく見直した。様々な議論を重ねた結果、金融行政としてかなりウィングの広い枠組みとなっている」と説明しています。

「顧客本位の業務運営」、「金融機関に対するモニタリング」などについて答えているのですが、いずれも前長官時代に聞かされてきた話で、目新しいものはありません。唯一、この人が色を出せるとしたら、金融機関トップとの対話(記事のタイトルにもなってます)でしょうか。地域金融機関トップとの対話には、こちらもトップが出て行かないと、相手も真剣に議論する気にならないだろうと言ってます。

それでも踏み込みが甘いスルガ銀行

スルガ銀行の件については、「個人的には忸怩たる思いがある」と言ってますが、「現場に一番近い内部監査や経営陣が問題を十分把握していない段階で、監督当局である自分たちがそれを察知するのは難しい」という逃げ口上。

金融庁が作成した資料でも、スルガ銀行の収益性は他行を大きく引き離しており、違和感があったはず。少なくとも民間の金融関係者はそう思ってました。金融庁の方針の中に「ベストプラクティスの共有化」なんてワードが何度も踊ってましたし、そうしようと思ったらスルガ銀行のビジネスモデル調べるでしょ。長官が手放しで称賛しちゃったりする前に。その権限こそが金融庁が持つ金融機関への検査権限でしょ。

就任のタイミングの悪さには同情するものの、これからの金融庁もあまり期待できそうじゃないなぁ、って感じでした。

株式投資 ヤフー(4689) 393円 その2

テクニカル面からの考察

テクニカルというのは、売買するのに最適なタイミングを計るための分析といった意味です。今買うべきかどうか、という考察になります。ヤフー株、実はこれまでかなり売られて、下げてきた銘柄なんです。第二位の大株主アルタバ(旧米国ヤフー)が発行済み株式の35%にあたる持ち株を売却すると言っていて、その売りがいつ出てくるかと市場は怯えてたんですね。自分が買ったとたんにアルタバが売り始めたら、と考えるとなかなか買う気になりません。

今年の初めからの株価推移を見ると、1月高値549円からほぼ一貫して下げ続け、7月安値350円まで売られています。現在株価はこの最安値から40円ほどもどったところになります。

アルタバ保有全株を売却

アルタバがその保有全株を9/10に売却しました。市場外で売却されたんですが、その話が伝わった市場では売り買い交錯、出来高1億7千万株と、強烈な出来高になりました。kuniはこれをターニングポイントだと思ってます。

スマホによるキャッシュレス決済という材料は既にマーケットでも相当織り込んできた(株価に反映されてきた)話題だと思います。しかしこのヤフー株は大株主の売りという悪材料があって、十分に織り込んできていない銘柄だと考えられます。いわゆる出遅れ感があるわけです

この材料で銘柄を選ぶ際、LINEや楽天でも構いません。どちらも非常に魅力的だと思います。しかし、その材料をある程度織り込んでしまうと、株価は相応に上昇しており、そこから買い付いたのでは投資に勝ち難いんです。もちろん、ネットで短期売買を決め込んでる人たちにはこういう銘柄でも良いわけですが。

株式投資は基本、中・長期投資です。長い間いろいろな投資家を見てきましたが、短期で頻繁に勝負される投資家が勝ち続けるのを見たことはありません。ここから中・長期戦で参戦するのであれば、ヤフー株は手を出し易い水準だと思います。

目標株価

せっかくここまで書いてきましたので、目標株価も考察しておきましょう。まずは今年の高値から安値まで下げてきた半値戻しで450円。価格帯別出来高でみて520円、全値戻しで550円。セオリー通りにいくとこのあたりが当面の目標になります。

今後、新たな材料が出てくることも考えられます。その場合はさらなる上値も十分ありうるのではないかと思います。kuni自身も少し買ってみたいので、今後も状況をお伝えしていきますね。

それから、本来ならペイペイを買いたいところですが、未上場企業ですので親会社のヤフーを、という話です。最初に書いておくべきでした。ごめんなさい。最後に、株式投資は自己責任です。ご自身でも十分調べていただき、判断してくださいね。