割安株相場

割安株相場の到来か 10年越しの転換 カギは金利

21日の日経平均株価は6日続伸し、この間の上昇幅は1265円に達した。けん引役は銀行や素材といったPBR(株価純資産倍率)が低い割安株だ。本格的な割安株相場では市場全体に幅広く資金が行き渡り、上場企業全体の株価の底上げにつながる。これまで買われても一時的だった割安株だが「今回は違うかもしれない」との見方が浮上している。

9/22 日本経済新聞 スクランブルの記事です。このところスルガ銀行に始まり、銀行株やその他業種のPBR(株価純資産倍率)を調べていて、少し感じるところがありました。kuniの場合は金融の出身ということもあり、どうしても金融株に目がいってしまうのですが、確かにこのところ動きが変わってきていたのです。

記事では「世界では10年ごとに物色の矛先が交代してきた」、「成長株と割安株の優劣が10年ごとに交代。09年末から始まった成長株相場はそろそろ転換点を迎えるとみる。」といった見方が紹介されています。

一方で、長期にわたって上昇する相場の末期に大型株(ここで言う低PBR株にほぼ一致します)が大きく上げるというパターンもよくあります。今回はどちらでしょう。

10年に一度バブルがはじけて暴落

皆さんも聞いたことがあるかもしれません。世界的な金融危機は約10年サイクルで起きてるんですね。1987年10月の「ブラックマンデー」、1997年7月の「アジア通貨危機」、2007年8月に「サブプライムショック」。

10年丁度に何の意味もありませんが、10年程度で投資先を探してさまよう金融資産が行き場(投資先)をなくしてしまう。っていう程度の意味だと思ってください。ここから始まる割安株相場は、この10年間の総仕上げ、最後の局面になるのかもしれません。

もちろん、割安株への投資でバブルがはじけるのではなく、それは米中貿易戦争であったり、新興国の破綻であったり、欧州の銀行の破綻であったりと、別のトリガーで始まるんだと思いますけどね。で、例えばチャイナ・ショックとかのネーミングで呼ばれる暴落が起き、後講釈として「やっぱり将来が見通せない銀行株まであんなに上がったってのは、もう他に買うものなかったんだよね」、「暴落の前兆だったね」みたいな説明がされるわけです。

果たして中長期に続く割安株相場なのか、これが最後の上昇局面になるのか。まだ分かりませんが、スタンスとしては後者を想定して臨むべきでしょう。いずれにせよ、大型株の新たな動きに関しては要注目です。

スルガ銀行 株主 創業家株式売却

スルガ銀行 創業家株売却へ

9/21 日本経済新聞記事です。創業家が関連企業などを通じて保有するスルガ銀行株を売却する意向とのこと。企業文化・ガバナンス改革委員会に対し、このことや同行からの借り入れを返済する用意があることを伝えてきたようです。

昨日の日経記事、金融庁は一喜一憂でしょうね。スルガ銀行は今後の焦点と見られていた創業家に新しい動きが出て、やっと道筋が見えてきたと思いきや、仮装通貨67億円が流出。これでまたいろいろと批判にさらされるんでしょう。流出の事実の公表の仕方などちょっと気になるところもあります。ただ、このお話は別の投稿で。

創業家関連企業の持ち株は発行済み株式の15%超

この15%の株はどこに行くんでしょうかね。創業家の手を放れることで、新しい経営陣が、機能不全だったガバナンスを立て直し、健全な地域金融機関として再建さしていく。とまぁ、メディアが描いてきた勧善懲悪の構図がこれで完成しそうなもんですが、そう簡単には行きません。

金融庁検査の対応、訴訟の嵐、まともにやったんじゃ、そもそも生き残れそうにない銀行の事業環境。加えて、ここから参入してくるであろう、この会社の解散価値に着目した物言う株主たち。

BPS 1,400円 PBR 0.4倍

昨日このニュースを受けて株価は620円のストップ高。創業家が手を引き、創業家に対する怪しい融資に関してもクリアになるということで、株価は一気に反応しました。ここで市場が注目したのが、以前紹介した一株あたり純資産(BPS)、すなわちこの銀行の解散価値です。

その他の銀行株も金利の上昇気配を材料に、3日間上昇していたことも手伝ってのストップ高。早くも目標株価を1,400円とか言ってる人もいますね。ここで注意しておくべきことをいくつか上げておきましょう。

まず、一株あたり純資産の1400円について。過剰な融資から発生する貸し倒れでどれぐらい損失を計上するか。これにより純資産は減少します。また、ほとんどの融資がでたらめだった訳ですから、今後の訴訟等で賠償金額が膨らみ、これも純資産を減少させます。一方で株主代表訴訟では経営陣の責任を問い、賠償金は会社に入りますので、こちらは純資産を増加させる作用があります。

次に、PBRの0.4倍について。別の投稿でも取り上げましたが、もともと地銀株のPBRは0.4倍を下回っていたわけですから、他行との比較ではそれほど上げ余地はないということです(ただし、銀行株全体が上げ始めてますから、地銀株PBRも上昇傾向にありますが)。こんな風に考えていくと、このあと大きく上げるとは思えないわけですね。

最低限これくらいのことを頭に入れて、値動きを見ていきましょう。ただ、一般投資家が手を出す銘柄ではないですからね。最後に、この株、信用取引の空売りの買戻しという特殊要因があります。上げるときの勢いは凄いはずです。実はこれが一番の材料でして、完全に理屈抜き。マネーゲーム化すると思いますので、、、あくまで傍観で。

福山通運、日曜の配達停止

9/21 日本経済新聞 「福山通運は10月から順次、日曜日の企業向け荷物の配達を取りやめる。トラック運転手が休みやすい環境をつくり、人手確保につなげる。総務省も郵便物の配達を平日のみとする検討に入るなど、働き方改革の動きが広がってきた。人手不足は業種を超えて深刻さを増しており、同様の動きが他の業界にも広がる可能性がある。」(記事より引用)

働かせ方改革、顧客第一主義の修正という文脈で

記事では働き方改革の動きとして捉えてますが、顧客第一主義の見直し(または従業員第一主義)という文脈で書いてほしかったですね。当ブログではこの視点で何度か問題を指摘してきました。

日本には本来必要なかった「顧客第一主義」の推進により、何より従業員が追い込まれ、悲惨な状況に陥ってきていること。もっと従業員を幸せにしてやらないと、顧客への高いサービス提供を維持することが困難なこと。それでも顧客第一を掲げたいなら、会社としてこれ以上は従業員に求めない、ということを顧客に対してしっかり伝えていくこと。

まさに福山通運のこの判断は、従業員を顧客から守る政策なんだと思います。

有効求人倍率は7月に2.86倍

厚生労働省によると、トラック運転手を含む「自動車運転の職業」の有効求人倍率は7月に2.86倍で、職種全体の1.47倍を大きく上回っているらしいです。この事実から何を読み取るべきか。

顧客対応をしてもらう従業員を採用する、もしくは配置する場合、その従業員に顧客対応させて大丈夫か、当社の信用を傷つけてしまうような不適切な応対をしないだろうか。企業は必ずそこを考えるはずです。求人倍率が全体の2倍になっているという現場では、採用や配置に際して、人の見極めが甘くなっていくのはやむをえません。この時点で既に、顧客へのサービスの品質は劣化し始めているのではないでしょうか。

そんなことになるくらいなら、企業としてサービスの範囲を限定することで、従業員に求める顧客第一の範囲を明確にしてあげる。これが第一歩だと思います。

今回の福山通運や郵便局のこうした動き、まだまだ影響範囲は限定的ですが、このような対応を見せる企業には、必ず質の高い労働力が向かうはずです。また、これをきっかけにして、業界としてさらに踏み込んだ対応に展開していけるのではないでしょうか。

企業経営に携わるみなさん、従業員をもっと大切にしてやってください。

IPO 承認取消し (株)テノ.ホールディングス

9/18 「当取引所は、(株)テノ.ホールディングスの新規上場を承認しましたが、同社の「コーポレート・ガバナンス及び内部管理体制の有効性」(有価証券上場規程第214条第1項第3号)について新たに確認すべき事項が生じましたので、当該承認を取り消すことといたしました。」(以上東証HPから引用)

かなり珍しい上場承認取消し

9/20上場予定で、9/18夕方の新規上場承認取消しとはまた随分キツいですねぇ。当取引所とあるのは東証ですが、東証マザーズに加えて福証QーBoardに上場予定だったようです。

取引所はサラっと他人事のように通知してますが、普通に考えると、証券会社での募集・売出しは既に終わって、顧客からも入金(払い込み)済みのはず。これシャレにならんでしょう。約定の取消しやら、払込金の返戻やら、証券会社は大変ですよ。

にも関わらずこのタイミングで

よほどのことがあったんだろうかとちょっと調べてみましたら、JPX(日本取引所グループ)のホームページに、「新規上場申請者の上場適格性に関する情報受付窓口」ってのがありました。

「このページは東京証券取引所に上場申請を行っている会社に関する粉飾決算その他の上場適格性に重大な影響を及ぼす事項についての情報を、申請会社の役職員やその他の関係者の方から幅広くご提供いただくための受付窓口です」(以上引用)

これですかぁ。このタイミングでのちゃぶ台返し、これくらいしか考えられませんね。内部者からの通報で、目論見書で公表している情報に事実と異なるモノがある。みたいな感じですかね。

久し振りのコンビだ

主幹事証券は国内最大手証券さんで、相方は東証。この組み合わせ、今年2月、元本の96%が一晩で吹き飛んだ、例のVIXインバースETN以来のお騒がせ・珍事じゃないですか。どういう問題があったんでしょう。知りたいですね。公表されるのかな。前回と同じで、何もなかったことにしちゃうのかな。

ガバナンス 企業統治実務指針の改定案

9/19付け日本経済新聞の記事。経済産業省が進めている企業統治実務指針の改定案を紹介していました。まだ正式には公表されていませんが。

社外取締役らによる指名委員会を設置し、次の社長や最高経営責任者(CEO)をどう選ぶのか早い段階から計画をつくり、選考過程の議事録を文書で残すよう企業に求める。後継者に求める資質を明確にし、社内で透明な議論を進められるようにする。

この企業統治実務指針というのは、東京証券取引所と金融庁が運用を始めた、コーポレートガバナンス・コードの原則を経営に取り入れる際に、実務的にどんな対応が望ましいのか各論を示す内容で、金融庁なども交えて作成している、らしいです。

第9回コーポレート・ガバナンス・システム研究会

9/5に開催されたこの研究会での資料が開示されていたので、中身を覗いてみました。ガイドライン本編で5ページにわたり、社長・CEOの後継者計画について触れています。また、別紙4として後継者計画の策定・運用の視点なる20ページの資料も添付されています。

確かにコーポレートガバナンス・コードでも後継者計画の策定や後継者候補の育成について書いているんですが、企業統治実務指針の方は少しやり過ぎな感じですね。後継者の指名に客観性と透明性を、についてはその通りだと思いますが。

違和感ありあり

「基本的には、社長・CEOが就任したときから、次の社長・CEOの後継者計画に着手するべき」であるとか、「将来有望な人材を若手の段階(30代~40代)から早期に選抜し、随時入れ替えを行いながら、十分な時間をかけて育成」とか。まぁ、いろいろと大きなお世話って感じです。

社長に就任したときから次の社長のこと考えるって、これ現実的ですかね。30代とかからの選抜・育成、今でも一次選抜組みたいなのって多くの会社であると思うけど、これもねぇ。

この世代から選抜して入れ替えして、育成するって、多分人事部の仕事になるんですよね。今の大企業で一番機能してないのが人事部だと思うんですが、更に後継者育成とかやらせちゃうんですね。部分的に見れば最適なのかもしれませんが、全体最適ではないんですよね。役所の考えることはだいたいこのパターンです。

書き物としては素晴らしいし、おっしゃるとおりって内容なんですが。ステークホルダーのために、もっと言うと物言う株主のために、ここまでやらなきゃならないんでしょうか。というのが第一印象でした。

日本の企業には副社長、専務、常務っていう取締役がいるわけで、後継者の順位も常に意識されていると思うんですが、ここまでやりますか。イーロン・マスクの気持ちが分かるような気がします。