株式市場 急落? 調整?

10日の米国株式市場でダウ工業株30種平均が831ドル安、続く11日も545ドル安で、2日間合計で下げ幅は1376ドルになりました。その手前でも若干下げてますので、高値からは約2000ドル下げたことになります。率にして7.4%の下落です。

メディアと下落のサイン

新聞等ではとにかく下げを強調したいため、今年何番目の下げ幅みたいな書き方をしますが、下落率で見ればこの程度です。また、NYダウが10000ドルの時と26000ドルの今では、下げ幅の831ドルの意味合いが全然違います。前者は8.3%の下落ですが、後者(今回)では3.2%でしかありません。メディアはとにかくこんな風に誇張しますので、みなさん煽られないように気を付けてくださいね。

日経平均株価はというと、10月2日に24,271円の高値を付けたわけですが、9月29日付けの日本経済新聞では日本株に超強気の記事を書いてました。「日本株、稼ぐ力に再評価」「日経平均27年ぶり高値圏、割安感と安定感、海外マネー呼ぶ」。面白いもので、こんなふうにメディアがその気になったときは、だいたい天井を打つんです。

そしてもう一つ。取引所が新たな商品や制度を開始すると天井、というのも何度も経験してきました。ちなみに、この10月1日からは、全銘柄の売買単位が100株に変更されました。

健全な調整

目の前で相場が大きく下げるのを見せられると、その下げが永遠に続くかのような怖さを感じるものですが、下げたものはまた上がりますから。今回の下げの原因については色々と言われてますが、一義的にはFRBによる利上げだと思います。まだこの後も利上げを継続すると言ってます。

景気の拡大、株式市場の高騰に対して、利上げでそのスピード等を調整する目的でやっているわけですから、調整局面を迎えることはFRBの意図したとおりです。そうした調整がありながらも、まだまだ拡大、上昇するだろうとの読みがあるからこそ、この後も利上げするぞ、と言ってるわけです。過去の暴落場面はいずれも金利の引き上げを止めてからなんですね。

kuniとしてはとても健全な調整が入ったんじゃないかと思っています。米中貿易戦争も気になるところではありますけど、トランプは中間選挙明けから対中姿勢を軟化させてくるんじゃないかと思ってるんですね。北朝鮮との時もそう、一時はマジで戦争始めるんじゃないかと、みんな心配しましたよね。けど、実は強かに、かつ計画的に実利を取るんですよ、この男。

今年2月にもよく似た下げ方がありました。この時は、日経平均は24,000円から3,500円程度下げて切り返しています。下落率は15%弱ですね。今回はその時よりも少し浅めの押しで切り返してくれると面白くなるんですけどね。

どうでしょう、中間選挙で議席減らしちゃった、って辺りが底になるんじゃないかとも思っています。そうそう、今回の下げの第2の原因は、Taylor Swift さんのつぶやきだったのかもしれません。

東京証券取引所 システム障害

また、やらかしてくれました。10月9日早朝から証券会社と東証を結ぶ4系統の発注経路のうち1系統(1号機)がコネクション出来ず。要するに、株式発注のためのネットワークが繋がらなかったということですね。証券会社からは基本的に2系統繋いでるんですが、そのうち一つが繋がらなかったわけです。

1号機に元々繋いでなかった業者と、1号機ダウンで別の回線に注文を速やかに迂回させることが出来た業者は難を逃れましたが、この迂回作業が上手く行かなかった業者の注文が滞留してしまいました。新聞では日興証券で25,000件とも書かれてました。

東証側のシステムの問題

証券会社側で注文を迂回させられたかどうかという問題もさることながら、東証側で1号機以外に迂回させることが出来なかったのか、という問題もあります。当初のコネクションが確立した後であれば、それも可能だったのかもしれませんね。メリルリンチからの大量の電文が原因らしいです。

投資家への開示と賠償責任

4系統のうち1系統がダウンしているという事実の公表は発生から約4時間後。明らかに投資家への情報開示には問題があります。上場している企業にコーポレートガバナンスや適時開示を求め、それを指導してきた立場の取引所がですよ。話になりません。役所と同じで指導する側のガバナンスが出来てません。

また、今回のシステム障害の原因がしっかり判明したとは到底思えない9日(障害発生当日)夕方の段階で、記者会見し、「賠償という形をとることはない」と言いきってます(川井執行役員)。要は切り替えをスムーズに行えなかった(注文を迂回させなかった)証券会社の責任だと言っているわけですね。

障害の翌々日11日には、前日の米国市場の急落を受け、日経平均が1,000円下げる展開となっています。市場に発注できなかった顧客の注文を証券会社が相手となって約定させた場合、証券会社側にポジションが発生します。この市場の急落でポジションの損失を拡大させられる業者もあるんじゃないでしょうか。

見苦しい東証の本音 個人投資家軽視

今回の件、そもそもの障害の発生原因を作った外資系証券のメリルリンチには最大限の配慮をしながら、国内証券会社に対してはこの見下した対応。昔からそうなんですが、見苦しいんですよ。外国人投資家や機関投資家の方ばかり向いていて、個人投資家のための市場になっていません。

日本にリスクマネーを根付かせ、個人投資家を増やしていきたかったら、この取引所の体質も改めなければダメですね。みずほの誤発注の時と一緒で、また敗訴するんじゃないの、取引所。そういえば、ジェイコム誤発注基金200億円どうなったんだっけ?今回の賠償に使わせてもらったら?

スルガ銀行 金融庁の行政処分を受けて

ダイヤモンド オンラインに「スルガ銀行に退場の道を用意せよ」という刺激的な記事がでていました。山崎元のマルチスコープというコーナーです。今は楽天証券の経済研究所にいらっしゃる経済評論家の方ですね。

今はスルガ銀行のホームページにも行政処分の内容が掲載されているようで、それを見てこの寄稿となったようです。こんなに酷かったのか、というのが感想のようで、これからこの方と同じように、スルガ銀行の今後に対して辛口なご意見される方が増えていくんでしょうね。

自主廃業

この方のご意見、「山一証券同様自主廃業でもいいのではないか」。おっしゃる通りだと思います。大賛成です。山一の自主廃業は発表されたのが1997年11月でしたか、kuniもよく覚えています。当時の社長が泣きながら「社員は悪くありません」って会見していた姿を。

ただ、山一は昭和40年にも一回潰れかけていて、日銀特融受けてますし、この時が2回目でした。日銀も今と違ってもっと毅然としてましたしね。加えて、この当時、毎週のように週末になる度に銀行が潰れてたんですよ。マジで。かなり特殊なというか、極限状態でしたから、自主廃業を選ばせることが出来たんでしょうね。

今はそんな状況ではなさそうです。日銀は一生懸命ETF買ってますし、金融庁は金融処分庁から金融育成庁に大変身されたようです。消費税10%やオリンピックに向け、物価を上げて、景気を良くしていきたい政府の意向も考えると、ここで「銀行が潰れちゃいました」はないでしょうね。シャレになりません。

また、これは地銀の特徴ですが、おそらくご当地の顧客からの信頼は、我々が思っているほどには失わないんじゃないでしょうか。ご当地顧客がインタビューに答えていました。「あれは都会の(東京の)お客さんが飛び付いただけ」みたいな。ご当地の顧客との間で築いてきた関係って意外に強固なのかもと思いました。

まとめ

色々書きましたが、今後も地銀100行が生き残りをかけて、崖っぷちの争いを展開していくわけです。そんな業界の経営者たちに対しては「不正なことをやったら、こんなことになってしまうんだ」という教訓にはしてほしい。そう考えると、やっぱり金融庁の行政処分だけでは甘過ぎるわけです。

自主廃業とまでは言いませんが、現在の暫定的な経営陣も含めて、今回不祥事発生時の経営層に対する責任追及はもっと厳格に行うべきだと思います。マスメディアの皆さん、そこをもっと調査して報じてくれませんかね。特に、見事にフェードアウトされた元社外取締役とかね。

初めての証券投資 口座開設

証券総合口座

証券会社を選んだら、次は口座を開設します。証券総合口座という顧客一人に一つの口座を作るんですね。今では証券総合口座の他にNISA口座やら特定口座などという、適用される税制を選択して口座を開設できるようになっています。○○口座と同じような名前ですが、基本的には証券総合口座の中にコースとして用意された口座と考えてもらって良いと思います。

口座開設の手続きは、証券会社が用意している手続きのガイダンス等に沿って行います。外国証券の契約やら累積投資契約など、いろいろな契約をセットにしたのが証券総合口座ですので、基本的に証券会社が誘導する通りに記入して問題ありません。今はその気はなくても、いずれ外国証券への投資を考えるようになるかもしれませんから。

証券会社は何となく怖いというイメージがあるようですが、口座開設の手続きについては何も怖がる必要はありません。

本人確認

証券の世界では、実際に取り引きしている人が、口座名義人本人であるかどうかを厳密にチェックします。マネーロンダリングといって犯罪等で得たお金を一度マーケットに投資し、後に回収することでお金の洗濯をする輩がいるからなんですね。ですから、口座開設時にも免許証やマイナンバーなどで本人確認を行います。これは誰も避けることはできませんので、付き合ってください。

口座が開設されると、その通知が転送不要扱いで郵送されてきます。本人がその郵便物を受け取らなかった場合は証券会社に戻ってしまいます。つまり、届け出た住所で本人が受け取ったことをもって本人確認が完了、取引が開始できるというわけです。

まとめ

先日、業界最大手証券会社の北九州支店営業員が、顧客のお金4,700万円を横領していたというニュースがありました。こんな事があるから心配になってしまうし、強引な勧誘で・・・なんて話を聞くから怖がられるんですね。しかし、口座開設手続きまでは大丈夫です。ご心配なく。

この記事でお伝えしたかったのは、口座開設までは何も怖がる必要もないし、証券会社のアドバイス通りに手続きしてもらって全く問題ないということです。証券会社との取引で色々なことが起きるのは、実際に取引を始めてからです。更に、先ほどのような事件が起きるのは、営業員と顧客の間に一定の信頼関係が出来上がってからなんです。

色々なことが起きないように、巻き込まれないように注意すべきことなんかを書いていこうと思っています。次回は証券会社に特有の受渡(うけわたし)について書く予定です。

イーロン・マスク 株式非公開化

以前、イーロン・マスク氏がSECと和解した件を取り上げました(投稿はこちら)。今日はそもそも彼とSECが揉める事になった原因である、株式非公開化について考えてみたいと思います。

事の発端

「株式非公開化のために必要な資金調達にめどをつけた」という彼の言葉で株価は急反発、空売りを仕掛けていた投資家は大きな損失を被りました。この発言が投資家を欺いたとして、44億円の和解となったわけですね。今日考えるのは、彼はなぜ株式を非公開化しようとしたのかという点です。

彼の説明によると、「従業員が株価の上げ下げが気になって仕事に集中できない」ということも言ってますが、kuniが心配するのはこちらの発言、「四半期ごとに決算を報告する義務があるため、短期的に利益を出す必要があり、長い目で見た会社の健全性を損ないかねない」。

四半期決算についても過去の投稿で少しだけ触れました(投稿はこちら)。英国やフランスでは既に四半期決算報告を廃止しており、トランプ大統領も検証を指示したというニュースがありました。kuniも四半期決算報告のルール化はやりすぎだと思っています。

みなさんも重要な業務を担当した際、四半期(3ヶ月)ごとに進捗報告を求められることを想像してみて下さい。ちゃんと進んでいなければ批判を受けるわけで、ついつい結果を優先し、本当に必要な準備や根回しを回避することで課題を矮小化、結果抜本的な業務改善につなげられないといったことになってしまいます。経営者たちも今同じ感覚に襲われているんだと思います。

株式公開(上場)する意義の希薄化

一方で、企業が株式を公開する意義が薄れてきていることにも注意が必要です。米国では毎年のIPO(新規株式公開)件数が減少してきており、おまけに上場企業数も大幅に減少してきています。既に株式公開をめぐる環境が大きく変化してきているのです。

株式公開の最も大きな目的は、資金調達です。その資金調達が不要になりつつあるということですね。まずは、巨大な資本(資金)が必要な産業の衰退。今日ではアイデアで勝負するベンチャー企業(最近の言葉ではスタートアップ)、とりわけIT系の企業など、立ち上げから成長の過程で巨大な設備投資(資金調達)を必要としない産業が主役になってきました。

加えて、資金調達の方法についても一気に多様化が進んできました。クラウドファンディング、ICO(イニシャル・コイン・オファリング)。言葉はどこかで聞いたことがあると思います。株式を公開して、投資家への十分過ぎる開示を前提に行う資金調達に比べ、投資家保護の観点でまだまだ改善の余地はあるものの、両者ともに無視できない有力な調達手段になりつつあります。

公開企業にどこまで求めるのか

このように、大きく2つの環境変化により、企業が成長段階に達したとき、株式公開を選択しなくなってきました。資金の調達は別の方法があるわけで、公開すると市場の暴力(空売り)を受けてしまうし、株主からいろいろとケチをつけられる。情報開示のために煩雑な事務作業はあるし、3ヶ月に一回決算報告しなければならない。おまけにSDGsなど本業とは別に、コストをかけて取り組むことまで求められる、ということです。イーロン・マスクの言い分も納得できちゃいますよね。

取引所や株式市場は、公開企業にどこまで求めるのか、一度考え直すべきだと思います。直接金融の抱えている喫緊の課題と言えるかもしれませんが、間接金融の世界で起きている銀行離れと似てますよね。いずれも従来の枠組みの中に安住している限り、そろそろ主役交替だよって言われているみたいです。