ガバナンスやコンプライアンスの体制整備とは

先日、kuniの会社で実際にあった質問です。「体制整備って言われても、いったいどこから始めればいいんですか?」、「ある程度出来てると思うんですが、次に何をすれば良いんですか?」。体制整備とはよく言われるものの、確かに難しいですかね。

体制整備とは何か

まずは、定義といいますか、基本の形を作ってしまった方が入りやすいかもしれません。ガバナンスもコンプライアンスも基本の形は一緒だと思っています。どんな会社でも、組織として、業務を執行していく際に遵守しなければならない法令や規則があるはずです。スタートはここからになります。

法令・規則があれば、その次に法令化はされていないけども、業界慣習や行政が要求するガイドライン等もあるはずです。これらについても考慮した社内ルールを設けることになります。自社のガバナンスやコンプライアンスの体制整備というとき、そのスタートは社内ルールの作成、つまり社内規程の整備と考えましょう。社内規程の整備を起点にPDCAを考えていくと、体制整備の全体像がイメージしやすいと思います。

体制整備のPDCA

  1. 社内規程を作成・整備する
  2. 実際の業務が社内規定に沿って運営されるようにする
  3. 社内規程から外れた業務運営を発見し、是正措置を講じる
  4. このような社内規程に沿った業務運営のプロセスの中で、実際の業務に社内規程が合わなくなっていた場合、社内規程等を追記・修正する

基本的な体制整備のPDCAはこんなふうでしょうか。既に運営されている会社の場合は、現在抱えている課題が、1から4のどの場面にあるのかを考えることになります。それぞれの番号の後ろには、その場面でやるべきことを書いていますので、今とるべきアクションが分かると思います。

今回の当社の場合

今回当社で問題視したのは、従業員からの通報(抽象的ですがこの程度の表現にとどめます)が行政機関の苦情窓口に入ってしまい、そこから「こんな話が入ってますよ、適切に対応してください」と知らされたという事例です。「なぜ社内で発見できなかったのか」、、、先ほどの1~4に照らしてみると、3に該当することが分かります。

現場で問題ある事態が発生しているなら、その実態を速やかに把握し、速やかに上席に伝え、経営がこれに対して適切な措置をとらなければなりません。このレポートラインが目詰まりしていたわけです。これを是正するための施策を考えることが、今回の体制整備です。

また、大きな組織ではこのようなレポートラインの目詰まりを完全になくすことは不可能です。そのため、目詰まりした場合に備えて、内部通報制度をしっかり機能させることも重要になります。

レポートラインの機能強化と内部通報制度の実効性確保。これが今回当社に求められる体制整備、ということになります。

日本橋の景観回復のために首都高速地下化? スルガ銀行立ち退きでしょ

東京日本橋の景観を取り戻すため、首都高速の地下化が5月でしたか、決まりましたよね。しかし、3,200億円のお金をかけてまでそんなことするんですかね

1603年徳川幕府建造

日本橋は中央区の日本橋川に架かる橋で、1603年に架けられたそうです。もちろん、これまでに20回近く架け替えられていて、今ではコンクリートの橋ですが、最初は400年も前なんですね。徳川家康の天下統一といいますか、日本統一がここから始まったと言えるでしょうか。歴史の授業で習ったような気がしますが、五街道の起点になる橋です。その日本橋の景観を損ねていると言われている首都高速は1964年に開通したそうです。東京オリンピックにあわせた工事だったんですね。

東京オリンピックに向け日本は高度成長に沸き、開催後も安定成長を続けました。全国を高速道路でつなぎ、新幹線が東京ー大阪を繋ぎました。東京オリンピックのためのインフラ整備(首都高の開通)は戦後日本の成長のシンボルとも言えるんじゃないでしょうか。こうした歴史的な意義も考えれば、日本橋と首都高の2ショット、kuniはいい感じだと思いますけどね。

ちょっと画質が良くないですが、日本橋を撮ってきました。

後ろのスルガ銀行の方が問題

写真はコレド日本橋の角、日本橋交差点から日本橋方面を写したものです。首都高の高架に「日本橋」という看板がかけられています。この下、数台の車が信号待ちしているのが分かると思いますが、この辺り、手前から画面奥に向かって架かっているのが日本橋です。日本橋と首都高が交差している感じですね。

景観を損ねているのはむしろ、その後ろに不気味に建っている真っ黒い建物ではないでしょうか。あのスルガ銀行です。日本橋を渡って辿り着くのがラスボスでも出てきそうなこのビル。このところの日本橋界隈、三越や高島屋がリニューアルしましたし、室町の再開発もあって、とてもきれいな町並みになってきました。

ところが、東京駅方面から高島屋を訪れ、高島屋から日本橋方面に歩く観光客の目に飛び込んでくるのが、丁度この写真の風景なんですね。このブラックなビル、スルガ銀行に立ち退きしてもらって、墨田区から江戸東京博物館持って来るとか、リニューアルしてもらった方がよくないですか?3,200億円はかかりませんよ。

給与のデジタルマネー払い

10/25日付け日本経済新聞の記事です。労働基準法が定める給与の支払方法において、例外的に認めている銀行振込に加える形で、銀行口座を経由することなくカードやスマホアプリなどに送金できるようにするらしいです。

デジタルマネー払いで銀行はどうなる?

記事の中ではこの点について触れていませんが、当然この疑問がわいてきます。これまで銀行は、給与振込口座を持っていれば、その口座の入出金状況を把握することが出来ました。皆さんの通帳には毎月給与という項目で入金が記帳されてますよね。出費についても同様です。

この情報を蓄積し分析することで、顧客の生活の様子がかなり詳細に分かるはずですし、その分析結果に基づき、顧客に適切な与信を行ったり出来るわけです。

このところ話題になっている情報銀行の構想にしても、銀行がこの情報を握っているというアドバンテージが前提になっていると思います。かなり重要な情報がなくなるということになります。

記事の中で「現金払いなども従業員が選択できること、カードや決済アプリに給料を入金する仕組みで入金された給与をATMなどで月1回以上、手数料なしで現金が引き出せること」が条件とされています。また、価格変動の激しい仮想通貨は対象に含まないとも。

ここで言っているATMというのは銀行店舗のATMではなく、コンビニATM等のことだと思われます。オリガミやLINE、ヤフーといった資金移動業者に対してデジタルマネーで給与が支払われ、キャッシュレス決済を後押しするが、コンビニATMで月1回以上、無手数料で現金が引き出せることを条件とする。こんな感じでしょうか。これらの業者にとって、それほど高いハードルではなさそうですね。

銀行の口座 必要なくなる?

デジタルマネーによる給与支払いが増加していくと、オリガミやLINE、ヤフーといった非銀行系に個人の資金移動の情報が集まりそうだ。ここまでは想像できるのですが、公共料金の引き落としの機能ってどうなるんでしょうね。kuni個人としては、勝手に引き落としてくれる機能こそ、銀行口座の一番ありがたい機能なんです。

スマホアプリで何でも出来る時代になってきましたし、家計簿アプリ等も充実してきてるようです。あとは、非銀行系の業者が自動引落の機能まで提供してくれるなら、本当に銀行口座要らなくなるかも。マジで給与はスマホで受け取りっていう人増えるかもしれませんね。

金融機関における個人不正 最近の傾向

このところ上場企業による組織不正・ 不祥事が毎日のように報道されており、 当ブログでも取り上げる機会が増えてきています。 今日は企業ぐるみの不正ではなく、 金融機関で発生する個人の不正について書いてみます。

企業不正・不祥事と個人不正の違い

企業の不正・不祥事はその発覚に伴い、 第三者委員会などによる調査結果が詳細に公表されますが、 個人不正(個人行為)についてはその事実だけが公表(報道) されることはあっても、 詳細について公表されることは稀です。 これが最も大きな違いでしょうか。

そのため、金融機関においても、 他社で発生した事象の情報を入手することが難しく、調査・ 検証できるサンプルが限られ、 発生原因や未然防止への対応について考える際に情報が不足しがち です。

個人不正の傾向

kuniの場合は、情報不足を補うため、 同業他社との情報交換なども積極的にやってました。個人不正、 特にその中でも顧客のお金に手を付ける、 または会社のお金に手を付けるといった、いわゆる詐取・ 横領などの重度の不正で見られる傾向は以下の通りです。

  1. 不正を行った行為者の年齢は40歳前後が多い
  2. 収益環境が悪化するなどし、 営業員個人への数字のプレッシャーが過大
  3. 高齢の顧客との間で発生
  4. 行為者の生活の乱れ、酒やギャンブルなど遊興費が引き金
  5. 営業成績が芳しくない社員が多い

こんな感じでしょうか。 40歳前後という年齢は、住宅ローンを抱え、 子供の教育費がかさむ世代と一致しており、 ある程度の権限も持つようになる年齢ということで発生しやすいよ うです。数字のプレッシャーというのは説明不要でしょう。 高齢者との間で発生する傾向があるのも分かるような気がしますよ ね。そして酒やギャンブルについては、 これは証券会社特有なのでしょうか。実に多いんですよ。

最近の個人不正の新たな傾向

最近出てきた傾向としては、「20代社員の不正の増加」があげられます。 加えて、営業成績が良い社員でも発生し始めています。 承認欲求というやつでしょうか、SNSなんかでいう「いいね」 を欲しがる欲求みたいなもののような気がします。 デキる社員として認められていたい、 デキない奴と思われたくない、 自分が数字を達成できないことでみんなに迷惑かけたくない、といったことが原因となっているケースもありました。

また、働き方改革により残業時間が減少し、 手取り給与が減少してきていることも原因の一つになりつつあるよ うです。加えて、大学を卒業したばかりで、奨学金の返済もあり、 かなり窮屈な資金繰りとなっていることが背景にあるケースもあり ました。

そしてkuniが発生原因の一つとして感じてきたのは、 金融機関に勤めているにも関わらず、 現金を取り扱ったことがないという実体です。 kuniが営業をやっている頃は、顧客から入金のために3, 000万円、現金で鞄に入れて支店まで持ち帰る、 なんてことが普通にありました。

しかし、最近ではこうした恐い経験はすることもなく、 ほぼ全て振り込みです。現金の束を見ること持ち歩くことは滅多にありません。 すると顧客のお金もデジタルに画面に表示されるだけ、 紙に印字されているだけで、 お金としての重みがなくなってくるんですね。だから、 お金を扱うにも緊張もすることなく、慎重さにも欠ける。 一種のゲーム感覚なんだと思います。

不正に限った話ではありません。 命の次に大切なお金を預けてくれる大切な顧客、 という感覚も次第に失われていっているような気がします。

管理職が気を付けるべきこと

若年層の価値観はおじさんたちとは違うということ。 これにつきます。 おじさんたちの常識は通用しないことを大前提にすることです。 育った環境も違いますし、時代も違っています。 良くできる社員だから大丈夫、でもないんです。 こんな落とし穴に落ちてしまわないためにも、彼らの価値観、 考え方を理解した接し方に変えていかなければなりません。

変わり始めた銀行 北國銀行

金融財政事情に「変わり始めた銀行経営」という特集が組まれており、北國銀行の成功モデルが紹介されていました。これこそ攻めのガバナンスでしょう。

北國銀行のここまでの取り組み

様々な業種の企業が北國銀行のビジネスモデル変革を学ぶために、視察に訪れているそうです。記事で紹介されている同行がここまで打ってきた各種施策は以下のようなもの。

  1. 自前主義にこだわり自社でシステム開発
  2. 清掃は外部委託せず、支店も本部も行員が行う
  3. キャッシュレス化の推進により全店の金庫廃止
  4. ペーパーレス化によりシュレッダーも基本廃止
  5. 支店長室の撤廃と支店長車の廃止、役員車も削減
  6. アクワイアリング事業への本体参入
  7. 本体でのリース事業強化
  8. コンサルティングサービスの有料化

などが紹介されています。特殊な施策というのは決して多くはありませんが、出来そうで、実はなかなか実現できないことを断行してきています。

注目すべきはその発想

1.のシステムについては、金融機関の本質がシステムであることを認識した上での決断であり、「システムのアウトソースは自分で考えることを放棄すること」と言ってます。kuniもその通りだと思います。

2.の支店や社内の清掃を行員にやらせるというのは凄い。これは経営や支店長の特権も一緒に廃止するといった、経営自身が身を切ることなしに実現しない施策です。組合納得させるのにどんな苦労があったんでしょうね。

このような施策の背景にある彼らの発想として、以下のようなことも紹介されてました。

  • 物件費のコスト削減は徹底するが、行員のモチベーションを維持するため、人件費には手を付けない
  • 社内で新しい事業を検討するとき、他行がやっているか否かは議論しない
  • コンサルティング業務を進める上で、役員が最高のコンサルタントでなければならない
  • フラットな組織作りのためには、支店長室はコミュニケーションの壁でしかない

行員の人件費には手を付けないってのがしびれますね。普通はここから手を付けて、最も大事な人という資源を失っていくんですが、地銀の中にもこういう銀行が出てきてるんですね。

経営層自ら特権を返上し、本気で取り組む姿勢を見せなければ、こういう改革は進みません。経営層が既得権の上でふんぞり返ったまま、コンサルティング会社が考えたような格好良いフレーズだけで社員は動かないということです。