東洋証券 行政処分勧告 その2

証券取引等監視委員会による勧告の話題から既に2週間程度になりますが、皆さんの会社では自社点検済みましたでしょうか。他社の指摘事項を見て、自社の状況を点検する。基本中の基本ですね。今日は他にも気になる外国株式事情について。

典型的な指摘事項 不必要な手数料負担

かなり昔に指摘のあった事項として、「不必要な為替手数料を負担させる営業行為」というのがありました。外貨客勘に米ドルが残っているのに、もしくは米ドル建てMMFの残高があるのに、これを優先して使うことなく米国株を円貨決済で買い付ける取引です。

当時は多くの証券会社が指摘を受けましたので、ほとんどの会社で外貨客勘、MMFを優先して充当するというシステムの手当てがされていると思いますが、最近になって外国株式の取り扱いを始めた証券会社さんは要注意かもしれませんね。システムがなければ、この2か所に外貨が残っていないことをその都度確認する必要があります。

指摘事項 その2 外貨客勘に置いたままの外貨

これも古典的かもしれません。外貨建て商品の取引で残った外貨を、外貨建てMMFにすることなく、外貨客勘に置いたままにしているケースです。顧客はMMFを買い付けていればもらえたはずの分配金をもらえません。本社からしかるべき周知が行われていない場合、広範に発生してしまうので、検査する側からすると指摘しやすいわけです。

指摘事項 その3 チャーニング

チャーニングというのはいわゆる過当取引(過当勧誘)のことです。金額、回数において、手数料を稼ぐために過当な取引勧誘をすることですね。米国の判例をもとに日本でも過当取引が認められた判例が出ていて、監視委員会の検査でも今後使われるんじゃないかと思ってます。

判例では、売買回転率(顧客の資金が一年間に何回転しているか)が6を超えていることをもって、過当取引を認めています。この6回転という基準は米国判例からきているものです。あくまで法廷での判断ですので、従来の検査ではこの基準を適用した事例はなかったと思います。しかし、昔と違って今では、顧客本位の業務運営を各社宣言しているわけで、にもかかわらずこれってどうよ。という理屈での指摘、十分あるんじゃないでしょうか。

指摘事項 その4 仕切り取引(国内店頭取引とも言います)

外国株式には委託取引と仕切り取引があります。前者は顧客の注文を直接外国株式市場につなぐ取引で、後者は外国市場に取り次ぐことなく、証券会社が相手となって顧客の注文を約定させる取引です。問題はその手数料率の差です。売り買いで前者が2%程度で、後者が5%くらいになると思います(もちろん証券会社ごとに違いますので参考程度に)。

問題なのは、取引の実態を見ると、後者の仕切り取引が圧倒的に多いということです。大手の証券会社では既に仕切り取引を止めているという話も聞きますが、準大手以下ではこの状況は変わってないそうです。顧客の意向が特段ないにもかかわらず、仕切り取引に傾注する外国株式取引はいずれ不適切という烙印を押されることになるでしょう。

本日はここまで。

会社は誰のために

11/10 日本経済新聞 大機小機の記事です。良いこと書いてますね。ということで中身をご紹介。

会社を取り巻くすべてのステークホルダーのために会社は存在する

まずは全てのステークホルダーのために存在すると冒頭で書いていますが、文脈から最近の物言う株主へ傾斜が過ぎることに警鐘を鳴らしているように見えます。その後、その他のステークホルダーとして、顧客や、仕入先、従業員や地域社会、を列挙しています。

従業員との関係性は最も大切かもしれない

記事の終盤で従業員について、その関係性が最も大切かもしれない、と書いています。kuniが何度か書いてきたことですが、「かもしれない」と、やや弱気。しかし、そのあとに続けて「会社とステークホルダーとの関係は従業員によって築かれる。従業員を大切にする経営こそ重要である」とも書いてます。まさにその通りだと思います。

大新聞の名物コラム、たぶん論説委員の方でしょうから、しょうがないですかね。kuniのように、「物言う株主ほっとけ」、「顧客第一主義なんてもうやめたら?」なんて無責任なことは書けないんでしょう。しかし、この記事を書かれているペンネーム紫野さんという方のご意見、kuniが感じていることと大きな違いはないような気がします。

会社という幻想(本末転倒な内部留保)

会社ってなんなんでしょうね。そもそもはある事業を様々な面で有利に進めていくために使用した箱だったはず。会社って、そういうツールでしかなかったと思います。それがいつのまにか法人という人格を持ってしまい、独り歩きするようになってしまいました。そして未来永劫発展し続けなきゃならないということになってしまい、使う予定のないお金をどんどんため込み、巨大な内部留保に。

しかし、世界の経済を見渡しても、永遠に発展し続ける国なんてありません。会社だって永遠はないです。そんなにため込んでどうするの?そんなにため込んでるから、物言う株主とやらに、たかられてしまうんです。「会社とステークホルダーとの関係は従業員によって築かれる」わけです。その従業員にもっと満足がないと、その他のステークホルダーだって満足しないということです。

巨大な内部留保を従業員に積極的に還元し、従業員との信頼関係を強くする。そんな従業員を抱える会社は、お金だけ蓄えてる会社なんかより全然強いのではないかと思います。従業員の満足度が上がっていけば、日本から消えてなくなったかのような消費マインド、取り戻すことができるんじゃないでしょうか。

BCPとBCM 事業継続ガイドライン(内閣府防災担当)

事業継続ガイドライン第三版を読みました。実はBCMが分からなくて、というかBCPとの違いですね。BCPってどうもこれまで取っ付きにくいというか、想定と現実との乖離に今一つ力が入らないようなところがあって・・・。

BCP(Business Continuity Plan)

事業継続計画。大地震等の自然災害、感染症の蔓延、テロ等の事件、大事故、サプライチェーン(供給網)の途絶、突発的な経営環境の変化など、不測の事態が発生しても、重要な事業を中断させない、または中断しても可能な限り短い期間で復旧させるための方針、体制、手順等を示した計画のこと。

BCM(Business Continuity Management)

事業継続マネジメント。BCPの策定や維持・更新、事業継続を実現するための予算・資源の確保、対策の実施、取組を浸透させるための教育・訓練の実施、点検、継続的な改善などを行う平常時からのマネジメント活動のこと。経営レベルの戦略的活動として位置付けられる。

最初にBCMから入ってくれたら良かったのに

この事業継続ガイドラインとその解説書を読んで、納得できました。BCPはBCMの中に包含されるパーツであり、言ってみればBCMによる一成果物でしかないということです。

皆さんの会社でもそうだったかもしれませんが、kuniの会社でもまずBCPから入りました。で、かなり現実味のない前提を置いて、それに対するBCPだけを作って満足しているような状態だったわけです。天邪鬼なkuniは、「こんなもん作るために専門部署まで作って、、、」と疑問視していたわけですね。

経営レベルの戦略的活動

ここにも疑問を感じていました。「BCPはどうなってるんだ?」経営層はほとんどわかっていません。例えばシステム障害が起きた場合に、それぞれの部署がどういう動きをするのか、顧客に対してどう対応するのか、営業体に対してどういう指示を出すのか。

ここに書いたのは一例ですが、それぞれの対応方法についてしっかり経営が議論できていないということは、何を最優先し、何をどこまで捨て、最低限何を死守しに行くのか、といったことを経営の責任においてあらかじめ決められていないということです。当然、非常事態が発生してから、「どうするんだ」と議論を始めることになります。

これからBCMの時代が来そう

今年は自然災害が多かったですよね。日本は自然災害の多い国ですし、多くの企業で基幹システムが老朽化して問題にもなっています。大都市への人口の集中も災害を発生、拡大させやすいという要素になります。BCMというカテゴリーは日本でもっともっと重要視されていくんでしょうね。

今から20年ほど前に、「コンプライアンスはこれからすごく重要になる」と感じました。それでkuniはコンプラの世界に入ったわけですが、その時と似た感触があります。

アパート等のサブリースに関する注意喚起について

別件で金融庁のホームページをチェックしていて見つけた、報道発表資料のタイトルです。10/26に掲載されてます。今年3月に公表していた注意喚起分のアップデート版のようです。

サブリースとは

サブリース契約というのは、サブリース業者がアパート等の賃貸住宅をオーナーから一括して借り上げ、物件の管理を行い、一定の賃料収入を保証する契約のことです。おそらく名前くらいは聞いたことのある契約だと思います。

この契約を一番有名にしたのが、スマートデイズの女性専用のシェアハウス「かぼちゃの馬車」の事件でしょう。そう、スルガ銀行がこれに不適切な融資をつけていたというヤツです。スマートデイズのシェアハウスはビジネスモデル自体に問題があり、破綻したわけですが、サブリース契約そのものは、全国的にアパートローン等で使われています。

ここ数年、相続税の節税対策としてアパートローンは急激に残高を増やしてきましたが、その裏では「家賃が保証されたアパート経営」というサブリース契約が原動力になっていたということですね。

アパート等のサブリース契約を検討されている方は、契約後のトラブルにご注意ください

これが金融庁の注意喚起、添付ファイルのタイトルです。さきほど「家賃が保証された」と書きましたが、これは当初のお話であり、その物件の価値が変化することなどにより、保証される家賃が減額されることもあります。で、実際に賃料減額をめぐるトラブルが発生してるので、契約内容や賃料減額などのリスクを十分理解してくださいよ、という注意喚起です。

要するにサブリース業者が説明責任を果たすことなく、あたかも30年間家賃が保証されるかのような説明で、契約を締結させているということですね。

サブリース住宅に入居する方は、オーナーとサブリース業者の契約内容を確認しましょう

続いて二つ目の添付ファイルのタイトルです。サブリース住宅の入居者は、オーナーとサブリース業者の契約終了等による不利益を受ける場合があるので、入居に当たっては、オーナーとサブリース業者の地位の継承に関する契約内容などを確認するようにしましょう。という注意喚起です。

どのような不利益があるのかは、実際にこの注意喚起をご覧いただくとして、こんなもん読んだら入居するのためらいますよね。「地位の継承に関する原賃貸借契約の内容」ってなんだ?と思いますし、正直、サブリース住宅は今後敬遠されていくと思います。そうなると物件の価値が下がっていくわけで、そのことでまた賃料減額に拍車がかかりそう。負のスパイラルです。

サブリースショック

サブリースショックみたいな社会現象までは起きないかな、って思ってました。しかし、なぜ金融庁が畑違いのサブリースに注意喚起を出したか。サブリース業者とつるんで、かなり過剰な融資を行っている地銀等の実態が見えてきたのかもしれませんね。今後、当局の指導により地銀等は融資をさらに絞り始めるでしょう。そこから始まるサブリース業者の破綻は、サブリースショックの引き金になるのかもしれません。

仮想通貨は今後どうなる?

最近めっきり仮想通貨の話題が聞かれなくなりました。まぁ、あれだけ通貨の流出事故が発生すると皆構えてしまいますわな。ビットコインの価格も6,200ドルほどで膠着状態のようで、価格変動のニュースもサッパリです。

日本仮想通貨交換業協会

金融庁は資金決済法に基づく自主規制団体として日本仮想通貨交換業協会を認定しました。証券界にも同じように日本証券業協会というのがあります。自主規制団体は業者として守るべき規則を制定し、その遵守状況を検査したりもします。現段階では同協会にそれだけのリソースはないと思いますが。

あっ、失礼しました。今同協会のホームページを見ていましたら、会員に対する検査という項目があり、検査すると書いてますね。ほかにも会員に対する勧告、処分も行うとしています。それでも、「協会の業務内容」という資料、1ページで終わってますから、まだまだこれからですね、コンテンツ充実させていくのは。

仮想通貨交換業者の登録審査

約160社が参入の意向を示しており、そのうち50社程度が登録に向けて具体的に動いているらしいです。ところが、登録審査の細目について、まともに会話ができる業者がほとんどいないようで、記入必須項目も平気で空欄で提出してくるとか。銀行や証券を相手にしてきた金融庁にしてみると、「レベル低すぎ」って感じみたいですね。

金融庁が最も気にしているのは、やはりレバレッジをどこまで許容するか、という点だと思います。証拠金の何倍までの取引を許すかということですね。kuniが以前調べたときは20倍なんて業者、普通にありました。この問題を解決しないと、金融庁は首を縦に振らないと思ってましたが、協会が既存業者を調整して、上限4倍という数字を出してきましたね。

そしてもう一つがAML(アンチマネーロンダリング)です。銀行や証券では本人確認や、取引する者が本人であることの確認など徹底してきましたが、仮想通貨の世界は正直何もやってないようなもんです。来年は日本の金融機関がFATFの審査を受ける年でもあり、マネロン対策も相当厳しいものになるでしょう。

まとめ

そもそも仮想通貨はその決済機能や送金機能、スマートコントラクトといった、現在の金融業では不可能と思われる「新しい金融」を提供するテクノロジーだったはず。国家の信用に依拠しない世界共通通貨の行方に興味があって、kuniは注目してきましたし、今後も応援していきたいと思っています。

レバレッジなんて投機の手段以外の何物でもありません。こんなことで駆け引きしようとする業者を認可する必要などありません。既存の金融の枠組みを壊してでも、未来の夢を語ってくれる、そんな業者が出てきてほしいものです。既存金融機関の重鎮たちは、この仮想通貨交換業者たちの実態を見てホッとしてますよ。