ベンチャー企業とスタートアップ企業

先日の投稿でベンチャーとスタートアップの違いについてお茶を濁してしまいましたので、今日はそこらへんを書いてみたいと思います。

ベンチャーとスタートアップの違い

creww(日本最大級のオープンイノベーションのプラットフォーム)というサイトでサクッと説明されていました。最も大きな違いは、その企業が設定しているゴールだそうです。ベンチャー企業は中長期的に課題に取り組み、世の中の課題を解決しようとする。一方スタートアップ企業は主に短期間でのEXIT(エグジット)を目的にしているとのこと。

この他にも、「既存のビジネスモデルがベースになっているか」とか「イノベーション」がそこにあるかどうか、といった切り口で違いを説明しています。kuniが注目しているのは「短期間でのEXITを前提としている」という特色の部分です。

kuniのイメージするスタートアップは、「イノベーションとなるアイデアとそれを実現するためのテクノロジーを開発し、既存の企業に売り込んでさっさとEXITしてしまう」。そんな感じで捉えています。そうすることで、彼らはすぐにまた別のイノベーションに移っていきます。要は事業化するために必要な一連の手続きや、企業として存続させていくうえで求められる様々な要求を、快く思わない人たちのように見えるんですね。

ガバナンスの観点から考察すると

ガバナンスの観点からみるとその光景がより一層鮮明になってきます。今の上場企業を見ていると、コンプライアンスや株主対応を中心とするガバナンスに相応の労力を割かれ、本業がお留守になってしまっているような。攻めのガバナンスが欠如した、サラリーマン経営者ばかりになってしまっているように思います。

強いリーダーシップでどんどん攻めていく若い経営者は、コンプライアンスや守りのガバナンスが苦手。そういう人たちはさっさと事業を売り渡し、コンプラもガバナンスもバランスよくこなせる老いた大企業が譲り受ける。こんな構図になりつつあるんじゃないかと感じています。しまいに上場企業は、成長力に乏しい、存続だけを目的としたような企業ばかりになってしまいそうです。

株式公開を出口戦略と考えるベンチャーが流行ったと思ったら、さっさと事業を売り渡してしまうスタートアップが現れてきました。出口までがどんどん短期化しています。成長力のあるこれらの企業こそ、株式を公開し、コンプライアンスもガバナンスも正しく理解し、適切に実装してさらに成長していってほしいものです。

時代は自助から共助へ

11/24号 週刊東洋経済のコラムで読んだお話です。正確には「勢いを失った自己責任論、時代は「共助」再評価に」というタイトルでした。著者はホームレスの支援活動やら、年越し派遣村やらを運営されている方のようです。

人と寄り添い絆を深めながら生きることの価値

筆者は、自分の身は自分で助けるべきという「自助」から、人と人が支えあう「共助」へと時代が移ったと説きます。その最も大きな影響を与えたのが東日本大震災だとも。人を蹴落として我が道を行くよりも、人と寄り添い、絆を深めながら生きることの価値が、震災という悲惨な体験を機に再認識されたと書かれていました。

たしかに言われてみると、そうした光景というか、実際に見てきたたわけではないですが、社会現象になってきつつあるようです。子供食堂が例に挙げられていて、実は自治会が開催する子供会のようなものと言われています。kuniの子供時代はまさにそうでした。その地域のおじさん、おばさんが、皆で子供たちの面倒をいろいろ見てくれてました。

第一次ベビーブーマーの存在

第一次ベビーブーマー。戦後生まれの日本人口ピラミッドのボリュームゾーンです。彼らが日本の文化や常識を作ってきましたし、これからも作るんじゃないかとkuniは思っているんですね。彼らは今現役を引退して70歳前後だと思いますが、この世代が「共助」の文化を再生しようとしているのではないかと。

いわゆる「常識」という最も一般的とされる考え方はこのボリュームゾーンが作ってきたと言われます。そしてもう一つのボリュームゾーンがその子供たちの世代、第二次ベビーブーマーたちです。現在45歳前後ですかね。この世代も既に影響力を持ちつつあるような気がします。

SDGsだって共助のシンボル

少し話が脱線しましたが、筆者はSDGsの目標も同根としていて、貧困や不平等をなくそうという17の目標は「誰も成長から取り残さない社会を作ろう」という世界の認識だと言っています。世界の常識と日本の共助化が同期化してきたと考えているようです。

それでは、共助化が進んでどのような世の中になるんでしょう。共助の時代に育ち、貧困の中から出てきた第一次ベビーブーマー達は、まさに競争の中で物欲を満たしてきたんですよね。自助の時代を形成してきたわけです。その人たちが今度は共助。ん~、難しいですね。共助の時代で何がどう変わっていくのか。これは今後の課題ということにしておきましょう。

日産自動車 カルロス・ゴーン会長逮捕

日産自動車のカルロス・ゴーン会長が逮捕されました。羽田空港に降り立ったところを逮捕されたようですね。世界を驚かせるニュースが日本発で・・・。しかしまた何で?と思いませんか。報酬を過少に申告したとか、オランダに投資した高級住宅を無償で使用していたとか。

内部通報から司法取引へ

以前の記事でも紹介したように、内部通報による発見と、司法取引を利用した企業としてのリスクマネジメント戦略を見事にやってのけたという感じですね。まさにこれからのガバナンスや企業法務のお手本になる事件と言えそうです。あっ、もちろん司法取引については、まだ実際に確認されているわけではありませんし、法人としての日産自動車の処罰がどうなるか、現時点では不明です。

日本版司法取引が行われたということであれば、2例目ということになりますか。第1号は三菱日立パワーシステムズの不正競争防止法違反の事件だと言われています。内部通報により社内にある犯罪を一早く発見し、当局の捜査に協力する見返りに企業としてのレピュテーショナルリスクを最小化する。この事例では法人としては立件されなかったと思います。

フランス政府も交えた事件の背景・真相

ルノーの大株主であるフランス政府、特にマクロン大統領との不仲説や、マクロン大統領がゴーン氏を介して、ルノーに日産自動車と三菱自動車を統合させ、手に入れようとしている。などといった話は以前から何度も出ていました。今回の事件に関しても、こうした背景も取りざたされるでしょうし、地検の動きとかを考えると国際政治も絡んでいそうな感じです。事件の真相をめぐって、マスコミは大はしゃぎでしょうね。

若い人にはピンと来ないかもしれませんが、20年ほど前に日産が傾いたとき、大手の自動車メーカーから見放され、ルノーの傘下に入るしかなかったんです。その時は誰もが、「何でルノーなんかに」と思ったもんです。それくらいまずいことになっていたんです。

そこからゴーン氏の手腕により業績がV字回復したのも事実で、日本では珍しいと言っていいほど、受け入れられてきた外国人経営者でした。しかし、ここまで回復してくると、日産自動車がルノーなんかの傘下にいること自体、不快に思う経営陣もいたはず。記者会見で出ていた質問「クーデターではないのか?」という面も確かに気になりますね。

これから次第に事件の真相がわかってくると思いますが、やっぱり一番おいしいのはマスコミですかね。間違いなく餅代は稼げるでしょう。

関電不動産がシェアハウス参入

先週末の日刊工業新聞の記事です。関西電力子会社の関電不動産開発は、シェアハウス運営の業界最大手であるオークハウスと提携し、シェアハウス事業に参入する。第1弾として兵庫県尼崎市内に関西最大級の約100室規模のシェアハウスを建設、2019年秋の開業を目指す。とのことです。

すっかり悪者になってしまったシェアハウス

記事のタイトルを見た時の違和感。このところのスルガ銀行やかぼちゃの馬車の影響で、シェアハウスそのものが悪のようなイメージが出来つつあったのかもしれません。しかし、シェアハウスやサブリース契約って、本当は非常に重宝がられているサービスなんですよね。スルガ銀行やスマートデイズといった一部の悪徳業者が、自身の利益追求のためにこのサービスを悪用しただけのことです。

様々な課題を解決できるサービスとして

一時は、深刻化する空き家問題を解決する切り札とも言われていました。空き家で街自体が衰退していくところ、シェアハウスに建て替えることで、若い人たちが住み着くとしたら、街の活性化にもつながるというもの。都市再開発といった面からも期待できそうです。

また、日本が抱える格差社会問題。貧困の問題にしても切り札にならないでしょうか。最も大きな課題とされている貧困層、シングルマザーと子供の世帯。この手の課題はもっぱら公的事業になると思いますが、シェアハウスと保育所(託児所)のセットで提供なんてのもありですよね。シェアハウスの中心に、リビングだけではなく保育所も完備みたいな。

子育てと仕事を両立させることが難しく、非正規労働を選択せざるを得ない女性がものすごく多いんだそうです。人手不足は日本企業にとってまさに定番の課題ですし、大企業が女性活躍の場を設ける(雇用を拡大する)ためのセット企画としても使えそうです。SDGsの原則にも、貧困やダイバーシティ、子供の教育なんてのがあります。発展途上国の貧困もそうかもしれないけど、日本の貧困問題も解決しないとね。

もう一つの貧困層である配偶者をなくした高齢者用のシェアハウス、なんてのも自治体中心に進められませんかね。これについては街を活性化させたり、企業に労働力を提供したりという付加価値が見つからないので、もうひとひねりアイデアが必要でしょうが。

まとめ

とまぁ、ド素人のkuniでもこれくらい思いつくわけですから、シェアハウスってまだまだ様々な活用方法がありそうですし、参入する意味はあるんだろうと思います。こんなことを考えさせてくれた関電不動産さんも、頑張ってください。

RIZAP守りの経営、松本氏に託す

11/16 日本経済新聞の記事です。RIZAPがおかしなことになってますね。今一つ納得感のないM&Aを続けていましたが、やはりこういうことになっちゃうんですね。負ののれんでPLをかさ上げする手法に関しても、一気にネガティブな評価になってきました。

ベンチャー企業にはありがち

ベンチャーと書いてちょっと違和感。最近聞かなくなりましたねベンチャーという言葉。もっぱらスタートアップ企業でしょうか、最近は。多少意味合いは違うんでしょうが、ここでは同列に扱います。いずれにしてもこの手の若い企業、一気に成長する企業にはありがちな展開です。これだけ成長するわけですから、経営者の推進力というか突破力というのは、すごいものがあると思います。ただ単にアイデアだけで会社が伸びるもんではありません。

ところが、推進力が強い企業にありがちなバランスの悪さ。つまり攻撃はすごいけど、守りが弱い。っていうか、そこまで考えていないんですね。守りをしっかり考えるタイプの人は、リスクを顧みずに突進するなんてことが苦手です。まさにRIZAPは攻めの経営の転換点にきてしまったということでしょう。

松本 晃 氏

今年6月に取締役として招聘された方で、伊藤忠でスタートし、ジョンソン・エンド・ジョンソンやカルビーの社長、会長を務められた方ですね。入社歴からすると既に御年70歳くらいでしょうか。この方のコメントがなかなかいけてます。「会社に入った時は、おもちゃ箱のような面白そうな会社だと思ったが、壊れたおもちゃもあった。修繕しないと今後困ることになる」。

「さらなる成長のため、ここは一度M&Aを凍結しよう」という松本氏の進言を瀬戸社長が受け入れ、拡大路線からの転換を発表するに至ったとのこと。「この決断は松本さんがいなかったらできなかった。100%感謝している」とも言ってるようです。

ここまで強気で突っ走ってきた社長が、自分の父親ほどの先輩経営者にバトンを渡すというのはどんな感じなんでしょうかね。ガバナンスを強化するにあたっての単なるキャスティングでしかないのか。やる気をなくして丸投げしてしまうのか。これほどの立場に上り詰めた人にしかわからない感覚です。

しかし、松本氏を招聘する前から、それなりにキャリアのある取締役や監査役揃っているように見えるんですが、これまでこうした守りの見直しについてアドバイスできる人っていなかったんでしょうかね。松本氏とほかの取締役等との関係性も含め、今後のRIZAP、壊れたおもちゃをどう片付けていくのか、注目です。