日立化成が調査報告書を公表

日産自動車カルロス・ゴーン氏のニュース、やはり凄いことになってますね。ルノー、三菱自動車まではまぁ当然のことながら、フランス政府までを含めた国際問題に発展しそうな勢いです。こうした加熱する日産報道に隠れて、11月22日、日立化成が特別調査委員会の調査報告書を公表し、併せて役員の処分等についても発表しています。

441ページの調査報告書から見えてくるもの

30年以上にわたり不正が行われ、不正発覚後も不正を継続したり、隠蔽したりと、やりたい放題。データ改ざん等の不正は全7事業所で行われ、不正の対象製品は全127製品中42製品。出荷先は2,000社を超えるとか。今回公表された不正が行われていた期間や、事業所ごとの不正の状況は酷すぎます。関与した従業員数も加味するとスルガ銀行級と言えるんじゃないでしょうか。

2008年に不正を発見した際のことを報告書では2008年問題と名付けています。その際、製品の品質に問題があったことを発見しながらも、顧客にその事実を伝えようとしなかったことが、その後に大きな影響を与えたようです。「顧客から苦情等が来ていないから、顧客には迷惑をかけていない」という発想で済ませてるんですね。

昨年以来、企業の不正・不祥事が多発しましたが、そうした他の企業が、納入先顧客の開示や、製品の交換といった顧客対応を優先しているのを見て、やっと自分たちの誠意のなさに気が付き始め、経営に報告が上がることになったのではないかと感じました。

何かとタイミングの良過ぎる日立化成

日立化成経営陣が最初に不正の報告を受けたのは、6月13日だそうです。しかしながら6月19日の株主総会では報告せず、総会が終了した後に有価証券報告書で開示しています。この開示の在り方についてはどうなんだかなぁって感じですし、不正の公表に伴う世間からの批判をできるだけ受けないようにという意図も感じてしまいます。

そして今回の特別調査委員会の報告書公表と役員の処分。通常であればもっと大騒ぎになっていそうなもんですが、ほとんどのメディアがゴーン氏を追いかけてるんでしょう。紙面等での取り扱いが非常に少なかったですね。なんか日立化成タイミング良過ぎなんですよね。ニュースにするにも鉛蓄電池や粉末冶金製品なんかより、数十億円の所得隠し(有価証券報告書への未記載)の方がバリューがあるってことでしょうけど。

kuniもまだ報告書全部読めてないんですが、内部通報に関しては面白いお話がありました。次回はこれを取り上げようと思います。

三菱UFJ マネロン疑惑

先週末のことでしたが、MUFGがマネロン防止のルールを破ったとして、処分を求めるニューヨーク州金融サービス局との間で訴訟になったという報道がありました。同局は国際的な制裁対象となっている企業や個人との取引を避けるための内部チェックを、MUFGが意図的に無視していたとしているそうです。昨年から検察当局の捜査を受けていたともいわれています。北朝鮮がらみのようですね。

開示の必要はなかったのか

少し気になることがあります。米当局の捜査を受けていること、もしくは訴訟を起こされていることに関して、何ら開示がされていないことです。当局の捜査中ということで、情報の開示が禁止されていたのでしょうか。米国でのこの手のお話、数百億円といったレベルの制裁金が課されることも珍しくないだけに、気になるところです。

一方で株価対策といわれている増配を公表

加えて、そうしたことが起きている最中に増配を発表していて、それが下げ続ける株価対策ではないかとも言われていることです。この対策が功を奏したかどうかは別の問題ですが、この対策で株価が反発したのちに、当の訴訟に敗訴、業績下方修正で株価は急落。なんてことになったら、というようなことは考えなかったんでしょうかね。

こんな風に考えていくと、いろいろと引っかかるところが多いニュースなわけです。この訴訟自体は、米国に進出する銀行には税金やらショバ代みたいなもの、といった冷めた見方もあるかもしれません。しかし、投資家にとっては優しいお話ではありません。

海外への融資を強化してきたメガバンク

メガバンク3行は揃って海外部門を強化することで収益を確保してきました。地銀は生き残りをかけて、アパートローンやカードローンに積極展開してきました。その結果、融資の審査等が緩んでしまい、あちこちで問題が発生しています。メガバンクにしても同様で、同じような誘惑があったと思われます。

融資の審査もマネロンのチェックも、地銀のように甘くなっていなかったでしょうか。積極展開するところ、成長するところにガバナンスの盲点があります。今回は三菱のニュースですが、三井住友、みずほも対岸の火事ではなさそうです。

また、一部の報道機関しか取り上げていなかったり、ニュースに具体性がいまいちないことや続報も入ってこないなど、何やら不自然なニュースでもあります。ひょっとすると、また司法取引の成立で妙な幕引きだったり、ライバル行への飛び火なんてのもあるかもしれませんね。

日産自動車 スルガ銀行 RIZAP

このところ、ほぼ毎週のように新たな企業の不正・不祥事が伝えられ、ニュースの主役が交代しています。今週は日産自動車がほぼ独占状態でしょうか。日産自動車に関しては、その後も新たな不正がぞろぞろ出てきてるみたいですし、まだまだ目が離せません。

カルロス・ゴーン氏、 岡野 光喜氏、 瀬戸 健氏

それぞれの企業を成長させてきたトップです。まず共通しているのは、非常に有能であり、推進力、リーダーシップのある経営者であるということでしょう。と同時に、コンプライアンスやガバナンスといった方面には、ほとんど興味を示さなかった人たちのようです。報道された事案や不祥事の形態は違いますが、基本的には三者とも同根だと思っています。

もう一つ共通しているのは、残念なことに、トップに対してけん制を効かせることができない状態。企業の権限がトップに集中しすぎていたということもあげられると思います。そのため、他の取締役や監査役が牽制を効かせることができない。で、暴走を許してしまった。まぁ、急成長する企業ってこういう傾向は強いと思いますけどね。

成長期におけるガバナンスの重要性

共通点の3つ目は、大きく成長した(成功した)直後におかしくなってしまったことです。コンプライアンスやガバナンスの効いていない企業が大きく成長する(成功する)とき、そのプロセスにおいて既に不正・不祥事が(失敗が)生まれていることが少なくありません。大きく成長するときって、多くのリスクを取りにいってるわけですから、当然と言えば当然かもしれません。

みなさんは昆虫や爬虫類とかの脱皮ってご存知でしょうか。セミの抜け殻だったら見たことあるでしょう。これらの生き物は体が大きくなったり、外形を変える時など、それまで来ていた皮を脱ぎ、成長します。企業もこれと同じだと思うんです。

企業が大きく成長する際、ちゃんとその成長したサイズや、変化した外形に適した、新たな外皮を身に着ける必要があります。この時に必要になる外皮こそがガバナンスなんです。適切なタイミングでガバナンスを一段階上のレベルに引き上げることができたかどうか。日産自動車とスルガ銀行はその機会を逸してしまったということです。RIZAPはまさに今、ガバナンスを見直そうとしているようですが、やや遅れた感はありますね。

こうやって失敗を後から評価するのは簡単です。現実にはトップの暴走を許さない、取ってはならないリスクを取らせないために、何が必要になるのか。その辺りの現場の話は次回にでも。

スルガ銀行の次は西京銀行?(続き)

以前の投稿で取り上げた西京銀行。なんかまた山口県のニュースが。なんでまた悪い予感だけが当たっちゃうのか。一部のメディアが「金融庁が西京銀行に検査着手を決定した」みたいな話が出てますね。この報道を見て当ブログに来ていただいた方も多いかと。

これまでのおさらい

  1. 8月にヨシキちゃん事件(スーパーボランティア爺さん)で周防大島が脚光浴びる
  2. 9月に富田林署から逃走した犯人が周南市で逮捕(周防大島にも滞在)
  3. 10月に大島大橋に貨物船が衝突して島全体が断水

恐れていた山口県のニュース

で、11月に山口県の西京銀行にアパートローンの実態把握のため、金融庁が検査着手を決めたとか。これで4か月連続で全国ニュースですわ。続くときは続くもんですね。もっといい話が続くんなら大歓迎なんですが。検査の結果これといった問題は認められなかった、ということになってくれれば。

と願うものの、kuniの経験からすると、既に金融庁はある程度の証拠、確信持ってるから検査に着手するわけで。。。無傷というわけにはいかないでしょうね。しかし、着手前に何でこう簡単にメディアに漏れちゃうんですか。地銀でも予告検査なんですかねぇ、最近は。金融庁も信用回復に向けてメディアでもなんでも利用したいんだろうけど。それも3連休前に。連休使って証拠隠滅やら隠蔽工作やらやんないでよ、西京銀行。

このニュースの連鎖どこまで

ここからは超飛躍した妄想。山口県のよろしくないニュース、政界につながらないかと案じてます。現在の日本の首相はご存知の通り山口の政治家です。まさかそんなね。こんなバカな話を書いたところで大外れ。っていうことで、山口関連ニュース終わりにしましょう。

西京銀行の実態を知りたくて当ブログに来ていただいた方。ごめんなさい、kuniは皆さんが知っている情報以外、何の情報も持っていません。ここまでお読みいただいてありがとうございました。

せっかくお越しいただいたので、山口県のお勧めの酒の肴をお教えしましょう。かまぼこの白銀、沖柊(おきひいらぎ)の干物 平太郎。これ、日本酒の肴に、鉄板です。ぜひ一度お試しください。

スルガ銀行 社外取締役の法的責任

当ブログでも以前取り上げた、金融庁と日本取引所グループが作成したコーポレートガバナンス・コード。上場企業に対して求めたガバナンスの教科書みたいなものです。そのなかでは、取締役や取締役会、監査役などに求められる役割等が示されていますが、社外取締役に求められる役割・責務についても触れられています。

いたるところで「社外取締役を含む取締役は」という主語が使われていることに加え、原則4ー7では、社外取締役に求める役割や責務として次のようなことが書かれています。

  1. 経営の方針や経営改善について、自らの知見に基づき、会社の持続的な成長を促し中長期的な企業価値の向上を図る、との観点からの助言を行うこと
  2. 経営陣幹部の選解任その他の取締役会の重要な意思決定を通じ、経営の監督を行うこと
  3. 会社と経営陣・支配株主等との間の利益相反を監督すること
  4. 経営陣・支配株主から独立した立場で、少数株主をはじめとするステークホルダーの意見を取締役会に適切に反映させること

社外取締役にはこれほどの役割・責務が求められているわけです。ところが、今回のスルガ銀行の「第三者委員会の報告書」では社外取締役の責任を問うていません。これにkuniは非常に違和感を持っています。

第三者委員会報告書での指摘

  • 社外取締役は個別の違法行為等を知り、または知り得た証拠は見当たらない
  • 知り得た情報は社外取締役側から主体的に収集活動をして得られたものではない
  • 本質的な問題を具体的に知り又は知り得たにもかかわらず、これを放置したといった事情も見当たらない

以上3点を抜粋してみました。唯一の情報収集機会である取締役会の席では、個別の違法行為等を知り得ることはできず、知っていたのに何もしていないということではないので、法的責任は問わないと言っているわけです。加えて、社外取締役が主体的に情報収集したという事実もないと言っています。

違法行為等の情報を知ってしまうと責任を問われる可能性があるんだとしたら、だれが進んで調査、情報収集します?なにもせず、我関せずを貫いた方が得じゃないですか。こうなると何のために社外取締役を置いているのか分かりません。先に見たコーポレートガバナンス・コードが要求する役割・責務と、第三者委員会報告書の温度差、違和感あるでしょ。

「社外取締役として主体的に情報収集した証跡は十分認められるものの、取締役以下社内の協力を得られることなく、違法行為等を知るにはいたっていない。したがって、社外取締役に法的責任は認められないと思料する。」という実態であれば納得するんですけどね。