変革には効率より柔軟性 ネットフリックスCEO

ネットフリックスCEO リード・ヘイスティングス氏のインタビュー記事からもう一つ。なかなかいい言葉だなぁと思ってしまいました。

バブル後の日本経済は効率性

1989年末に株式市場は日経平均で4万円近くまで上昇し、その後大暴落しました。この年までの2、3年あたりがバブル時代と呼ばれています。バブルを知る人もかなり少なくなってきましたが、これ以降の日本の経済は悲惨なもので、とにかく何もかもが委縮していったように思います。

何とか利益を出すために、というか生き残るために、日本企業はコストダウンに取り組んでいきました。そんな中で日本企業が最重要視したのは効率性だったのかもしれません。リード氏が指摘するように、効率性を大事にするために、社内に多くのルールと手順を作り続けてきました。効率性は良くなったかもしれませんが、柔軟性と改革を犠牲にしてきたのかもしれません。ルールや手順でがんじがらめになった日本企業は、新しい発想やイノベーションを起こせなくなってしまったように見えます。

リード氏は続けて「柔軟性と改革を大事にするのならば、社員には自由と責任を与えるのがよい」と答えています。しかし、自由と責任を与えるって、、、。なんとなく分かるような気はするものの、これは難しいかもですね。日本人は本当の意味で「自由」を理解していないと言われますしね。責任は凄く身に染みている民族のような気がしますが。

自分自身の身に置き変えてみても、与えられている責任の下で、何でも自由にやらせてもらったのって、一定の職位についてからのような気がします。スタッフの時代からそんな風に、いろんなことに自由な発想で取り組めたら。そう思うと確かに面白い組織が作れそうな気がしますよね。

百均ショップで見かける日本の自由な発想

2、30年以上効率性を追求してきたんですから、日本の企業もそろそろ自由に発想して、自由にトライしてみてもいいのかもしれません。最近百均ショップによく行くんですが、この世界は効率性を追求した究極の世界だと思いませんか。ところが同時に柔軟性やイノベーションを見せつける、世界に誇れるような商品がたくさんあります。

ただ、残念なことに商品1個の価値は100円でしかないんですよね。米国のプラットフォーマーのような、壮大な夢を描けるようなビジネスにはなりにくそうです。それでも、自由な発想ができないわけではなく、このような小さな分野に押し込まれただけです。あったら良いな、便利だな、を大きな資本に乗せてレバレッジをかけて社会を変えていくという仕掛けと、それを実行する経営者が必要なだけのような気がします。

クボタ 企業の不適切行為と顧客の要求

クボタの不正について書いた際、「顧客が不自由なく製品を使用することができる機能が担保されており、かつ、製品不良に起因する事故や故障等に関するクレームを受けていない」から、顧客が求める仕様との相違は問題ないと判断してきた。という点についての考察です。

プロの技術屋が考える製品の仕様

クボタの製品検査の不正もそうでしたが、ここ最近発覚する不正はほとんど最終消費者が使用する商品ではありません。製品を製造・提供する企業と、その製品を使用して別の製品を製造する企業との間で、あらかじめ取り決めた性能を満たしていなかったことが問題になっています。

製品を提供する側の企業は、顧客が求めている品質は、実はオーバースペックであり、当社の製品のスペックで十分に顧客の期待に応えられると思っているわけですね。そして結果的にも製品の品質に関する苦情等は一切ないと。こうした考え方はここ最近の企業の不正の共通点といっても良さそうです。

顧客がいたずらに高いスペックを要求してきたとしても、プロの技術者がそんな顧客をなだめて、これで十分だとして製品を納入する。実際使ってみると全く問題ないから、契約と乖離した検査結果、または改竄という事実が残ってしまう。

実は顧客の要求というのは、実質的に努力目標的な色合いが強かった。そんなかなりアバウトな取引慣行があったんじゃないでしょうかね。そんな気がしてしょうがないんです、最近。日本企業の専門性と製品品質の高さこそが生んだ慣行だったのかもしれません。その後、世の中で求められるガバナンスやコンプライアンスの質が高度化し、社内の誰かが、これって不適切だよね、という問題意識を持つ時代になってしまった。考えすぎでしょうか。

製造や検査だけではなく営業の問題

これらの不正の問題では、製造部門や品質管理、検査といった部門がやり玉にあがってしまうんですが、kuniは営業の問題も大きかったのではないかと思っています。クボタでも見られましたが、そもそも自社の製造能力では達成できない品質を営業が約束してしまって、取引が始まっているケースがあります。

まさに営業において、顧客に誤認を与えるようなセールストークが行われていたり、商談を成立させるため、虚偽の表示や告知なんてこともあったかもしれません。いずれにしても入り口の段階でオーバースペックな要求を呑んでしまえば、のちに製造部門に皺寄せがくるのは間違いありませんよね。

今日の更新は、かなり不適切行為を行った企業寄りで、彼らを擁護するような更新になってしまいました。

動画配信 コンテンツに第3の革命

12/2の日本経済新聞で「コンテンツに第3の革命」という特集記事がありました。ネットフリックスCEOリード・ヘイスティングス氏へのインタビュー記事で、映画、テレビに次ぐ第3の革命として動画配信を取り上げています。

動画配信 動画というモノ

正直言うと、kuniはネットフリックスで動画を見たことがありません。グーグルのYouTubeくらいしか見たことないんです。記事の中でも紹介されていますが、ネットフリックスが起業した頃のDVDレンタルや、CATVでの映画の鑑賞。自身の経験ではこの辺りまでで、インターネットによる動画配信の恩恵にはまだあずかっていません。

動画と言うとき、みなさんはまず何をイメージするでしょうか。kuniの場合はまず映画やスポーツ番組を想像してしまいます。もともとテレビはほとんど見ないほうなので、これ以上イメージが膨らまないんですね。静止画については、インスタグラムが新しい情報共有の手段になって大人気のようですが、動画では何が起こるんでしょう。いや、もう起きてるのかな。想像力が足りませんね。

革命の起爆剤

記事の中でCEOは「起業当時は動画配信にはネットの速度が不十分だった」と言っています。確かに、ちょっと大きめの画像を開くだけでも、パソコンの前でイライラしながら待たされたのを覚えています。ついこないだのことのように。ところが今では2時間もある映画が平気でオンデマンドで配信されています。

また、同じくCEOは今インドに力を入れているとしたうえで、「インドでは現地の通信会社が200億~300憶ドルを新たな通信網に投資していて、これにより通信費、データコストが大きく下がる」とも言っています。これがインドでのユーザー拡大の起爆剤になるというわけです。

日本の通信費値下げ

こうやって記事を読んでくると、いま日本で、スマホ本体の価格と通信費を切り離すことで、通信費の値下げを進めようとしていることにも納得できますよね。機能的にも、出荷台数的にもそろそろ飽和状態のスマホ本体より、通信費を大きく下げていく方が日本の産業にとって、ひいては日本のためにも恩恵が大きいということだと思います。

IoTと一緒に語られることの多い5G。第5世代の通信技術もその先に控えています。ここでも動画が何か革命的なことを起こしてくれるんでしょうか。一方で、4K放送が始まったテレビですが、いまいち4K対応テレビが売れていないとか。

一度ネットフリックスのHP覗いてみようと思います。

kubota クボタ 検査成績書の不適切行為に関する報告書

今週はクボタが調査結果を公表しました。報道では40年以上にわたって不正が行われていた、という点が強調されています。クボタの検査成績書の改竄については、いくつかの検査工程に分かれていて、そのうち硬度検査においては40年以上前からの不正が確認されたということです。

クボタ 不正の内訳

5つの検査工程で不正が確認されており、それぞれについて不正の始まったと思われる時期が示されています。その内訳は、硬度測定検査(1977年~)、外殻厚さ測定検査(2001年~)、寸法測定検査(2002年~)、成分分析結果(1991年~)、顕微鏡写真の流用(1995年~)となっています。

問題となった製品は、圧延用ロール、圧縮機用シリンダーライナーで、特に圧延用ロールにおいて不正が多く、硬度測定検査については20%の製品で不正が行われていました。最も悲惨なのは同じ圧延用ロールの顕微鏡写真の流用で、99.2%の製品で行われていたようです。

クボタ 発覚の端緒

今回の不正の端緒は、内部通報制度によるものでした。しかしながら、内部からの告発は今回だけではなく、少なくとも2013年2月以降、複数回にわたり硬度測定結果の改竄行為を示唆する指摘があったとされています。不正の全容を早期に解明し、是正を図ることが可能であったにもかかわらず、その機会を逸しています。

内部通報については実績があるものの、それを受ける側の事務局やこれを受けての経営層の品質問題に関する意識の低さが露呈したわけです。皆さんの会社はどうですか?内部通報は年に何回かはあるけど、それを起点に大掛かりな社内対応はしたことがない。よくある話ではないでしょうか。

これも制度としてみた場合、全く機能していないということです。従業員からの指摘内容が自社の重大なリスクにつながり得ることをイメージし、認識することができるかどうか。また、時代や社会情勢の変化に伴い、そのリスクにどこまで向き合い、対処するか。ここ重要ですね。

発生原因の主なもの

発生原因についてもいろいろと書かれていますが、ちょっと気になるものをあげておきます。まず第一に、検査結果の書き換えが可能な検査システムであること。また第二に、組織上、検査等を実施して牽制すべき品質保証部署が、プロフィットセンターである製造部門から独立していないことです。なんと、これは2018年10月まで継続しています。

そして第三に固定化した人事。検査担当や品質保証、技術サービスといった関連するポストの人材について、ほとんど人事ローテーションが行われていません。ほかにも、これは他社の事例とも共通することですが、収益改善を強く求められていた(収益至上主義につながる)ことや、納期厳守といった原因があげられています。

最後に、報告書の指摘の中で次のような記載があります。「顧客が不自由なく製品を使用することができる機能・製品が担保されており、かつ、製品不良に起因する事故や故障等に関するクレームを受けていない」という考え方、よって顧客が求める仕様との相違は問題ないと判断してきた。

この部分については回を改めて考察してみたいと思います。

携帯値下げ攻防 菅 義偉 内閣官房長官

先日から日本経済新聞の連載で「携帯値下げ攻防」というコラムをやってます。菅官房長官が今年8月に札幌で「4割程度下げる余地がある」と発言したところから始まり、官邸と携帯大手との攻防が続いています。その辺りの密着取材的な特集なんですね。

菅 義偉という政治家

菅 義偉(すが よしひで)氏は秋田県湯沢市出身の政治家です。高校卒業後東京に出て、いったん就職したものの、大学を卒業。横浜市会議員を経て神奈川2区から衆議院議員という経歴らしいです。安倍内閣では官房長官として毎日のように記者会見しているだけに、認知度は相当高いと思います。官房長官在籍6年弱は史上最長だそうです。

会見では落ち着いたしゃべり方で、自身を飾らない、お世辞にも話がうまいともいえない、政治家らしくない政治家。というのがkuniの印象でした。ところが今回の携帯値下げに関してはかなり強気の様子で、当初反発していた携帯キャリア大手も今では意気消沈といった感じです。過去の政策を見てもこの方なかなか頑張ってますし、評価すべき政治家だと思います。

ソフトバンク 孫 正義

政府主導の値下げ方針に対しては、まずドコモが2~4割の値下げを表明。その後ソフトバンクも格安ブランドのワイモバイルの値下げを発表しました。孫社長は「官邸の意向をくんだのか」という記者の質問に対して「はい、そうです」と答えています。KDDIが追い詰められた感じですね。

携帯キャリアとして根こそぎ儲ける時代はもう終わり、と孫社長は割り切ってるんでしょうね。おまけに12月には子会社のソフトバンクを公開させて、ソフトバンクグループとしても新しい事業に向けた資金回収ができてしまいます。この人もやっぱり凄い人ですね。

携帯キャリアの世界と金融

このような駆け引きが展開されているわけですが、そこでは楽天の新規参入が大きな原動力となっています。3社で独占してきた業界に楽天が参入することで業界秩序が崩される。その自然な価格破壊の流れに政治がうまく乗っかった。後押しすることで国民にうまくアピールできている。という見方が正解なのかもしれません。

とまぁ、他の業界の動向を見るにつけ、金融の世界は動きが緩慢だなぁ、と思ったりするわけですね。他の業界と違って規制が多いこともあり、既存の金融という枠組みを通してみると緩慢に見えてしまいます。もちろん、各論で見ると様々なスタートアップが仕掛けてきているわけですが。そういう意味でも LINE Financial と みずほ銀行が LINE Bank 設立というニュースは今後に期待したいですね。何が起きるんでしょう。