ソーシャルレンディング業者のエーアイトラスト株式会社

証券取引等監視委員会は7日、ネット経由で融資を仲介するソーシャルレンディング業者のエーアイトラスト(東京・港)を行政処分するよう金融庁に勧告したそうです。実在しない架空の事業で投資を募るなど金融商品取引法に違反する虚偽表示があったとしています。併せて建議も行われています。

ソーシャルレンディングとは

ソーシャルレンディングとは、いわゆるクラウドファンディングのうち、金融型クラウドファンディングに分類されるもので、他にも購入型クラウドファンディングや、寄付型クラウドファンディングなどがあります。購入型なんかは皆さんも聞いたことがあると思います。出資者がプロジェクトに出資しその成果として開発した商品を受け取るやつですね。

エーアイトラスト株式会社のHPを見てみましたが、会員登録しないと個別のプロジェクト等については見ることはできませんでした。ちなみに、運用利回りは6%~10%、運用期間は3か月~24か月で10万円からの少額投資が可能と謳っています。要するに監視委員会が指摘している、架空であるとされる事業に関しては確認できません。

エーアイトラストという会社

この会社、株主が開示されていないほか、沖縄の軍用地担保ローンの紹介があったり、いかにも怪しげなHPです。エーアイトラストは Ai Trust の英文表示で、いかにもAI(人工知能)をイメージさせるようなデザインになっています。笑えるけど。

で、役員を見ると、4名が財務省出身となっていますし、他に国土交通省、防衛相出身者がそれぞれ1名という内訳で、社長以外は全員天下り。元官僚の人脈を生かした事業運営を売りにしているような節もあります。今時そんなもん何の役にも立たんでしょうに。

監視委員会による勧告と建議

以前、東洋証券の行政処分勧告の記事で、「勧告」について説明しました。勧告というのは、検査を受けた業者に対して処分をした方が良いよ、と告げて勧めること、つまり監視委員会が金融庁に対して意見すること。でした。

エーアイトラストのこの事例に関しても同様、監視委員会は金融庁に行政処分を行うよう勧告をしたわけですが、併せて建議も行っています。新聞の記事では「監視委は7日、投資家保護を徹底するため情報提供や説明を充実するよう金融庁に制度改正を求めた」と書いていますが、このことを建議と言います。

検査の結果としてこういう悪事を可能としてしまったことについて、法律の不足や不備を改善してね、という要請をすることを「建議」と言います。証券取引等監視委員会のHPでは、「金融庁設置法第21条の規定に基づく建議について」というタイトルで公表されています。

実体のない投資となってしまったようですが、投資家のお金はどうなってるんでしょうか。被害の状況等についてはまた別の回にて。

ソフトバンク 通信障害

なんとも微妙なタイミングです

12月6日の午後、ソフトバンクの携帯電話で大規模な通信障害が発生しました。原因は、スウェーデン通信大手のエリクソンという会社が提供したソフトウェアだったということで、既にエリクソンが公式に謝罪もしているんですが、、、。4時間に及ぶ通信障害、なんともビミョーなタイミングで起きちゃいましたね。IPOが19日に上場が予定されていて、申し込みが11日~14日だそうです。

他の株式や証券などを売却して、買い付け代金に充てようとしていた向きには、なかなか辛い下げ相場となっていたうえ、追い打ちをかけるように大規模通信障害の発生です。まぁ、上手くいかないときってこういうもんですけどね。直前のこのアクシデントで公募価格に下げ圧力がかかったりするのか、募集に悪影響は出ないのか、気になるところです。早速、シ団や機関投資家とミーティング持ったとか。

これくらいのサイズの公募になると、証券会社は募残と言いまして、頑張って募集したけど売れ残りが発生しました、という事態を懸念しながらの募集になるんですね。売れ残るということは、その価格では魅力がない。→ 証券会社が自己で売れ残りを保有することになる。→ 上場しても公募価格割れになる。→ 証券会社が損失を被る。ということになります。

いやぁ、証券会社結構冷えてると思いますよ。もちろん営業がお客さんに説明するときは自信たっぷりで、儲かりそうに話すんですけどね。

ケータイ2台持ち

ニュースに出てインタビューに答えていた人がこんなことを。「プライベートのケータイも会社から貸与されているのもソフトバンクなので、何も出来なくなってるんです」。これは意外な盲点でした。会社から携帯電話持たされてる人は多いと思います。

kuniもそうなんですが、同じキャリアの携帯電話持ってたんじゃ、こういう障害時に困りますよね。BCMの観点からは、個人が使用している携帯キャリアとは違うキャリアの会社携帯を持たせるべきですね。外回りの営業員とかを抱えている会社であれば、これは考慮しておいた方が良さそうです。

もう一歩突っ込んで考えると、キャリア以外にOSへの配慮はどうでしょう。iOSとアンドロイド、両方持っておいた方が良いんでしょうか。OS由来のバグ等で一斉に通信ができなくなる、なんてことが起きうるんでしょうかね。この辺りからはkuniの知識では手に負えません。本日はこれまでということで。

KYB タワーマンションの建設

国土交通省がKYBに対して交付した指示書

KYBによる不適合品等を使用した建物の公表が続いていますが、やはり今のところ住居、つまりマンションについては公表されませんね。住民全員の同意を取るんですかね、そりゃ無理というものです。公表されることによる資産価値の低下は深刻です。

国土交通省の指示書なるものがKYBに交付されています。6項目の指示内容が書かれていて、その中で初めて知ったのですが、大臣認定の基準に不適合なオイルダンパーの供給先には、東洋ゴムによる免振ゴム不正事案に係る建築物もあるようです。東洋ゴムの関係者と連携を図り丁寧に対応するよう求めています。

自分の住んでいるタワーマンションの最下部にある免振装置。免振ゴムも免振オイルダンパーも不適合品と聞かされた住民の心境ってどんなでしょう。これは痛すぎます。

新規建設のタワーマンションへの供給ストップ

週刊東洋経済で「マンション絶望未来」などというショッキングな特集をやってました。その中でKYBのお話が出ていましたのでちょっと取り上げます。

既存のタワーマンションにおける問題とは別に、この記事は新規建設のタワーマンション着工に影響が出始めたという内容です。そりゃそうですよね、不適合品等の正規品への交換を宣言し、新規のオイルダンパーの受注を停止しているんですから。以前の投稿でも指摘した通りです。

免振・制振オイルダンパーのシェア第2位の川金コアテックも同様に改ざんを公表し、供給を止めているようですから、製品調達はなおさら深刻になっているはず。国土交通省の動向についても少しだけ触れてましたが、「オイルダンパーを用いない工法の周知などを検討しているが、今は業界へのヒアリング中」という間の抜けた回答だったようです。

新規受注の停止は少なくとも20年9月まで

東京オリンピックを迎えようとし、大阪でも万博開催に向けた特需が発生するというのに、2年間新規供給ストップは痛すぎるというもの。KYBだけにやらせるから2年間であって、もっと他に力があれば短期化できるでしょう。不適合品の取り換えと並行して新規供給だってできないことはないと思うんですが。

KYB自身も、新規受注を早期に再開できるよう、製造ラインを増設するなどの対応をするべきです。国土交通省も口先だけじゃなく、正規品の供給を速やかに再開させるため何ができるか、本気で検討してもらいたいところですね。

大学と地銀に共通する衰退していく側の論理

週刊東洋経済のコラムで面白い話を読みました。コラムのタイトルをそのまま使わせてもらってます。筆者があるパーティーに参加した際のお話で、「国立大学の学長と地方銀行の頭取が、あいさつでまるで同じことを言っていたので、思わず苦笑してしまった」との書き出し。

大学と地銀、一見全く関係のなさそうな業種ですが、この書き出しを読むだけで、その場の様子が想像できませんか。政策によって推進され、一時はかなりステイタスの高い企業、組織になっていたと思われます。別に業界の中に熾烈な競争があったわけではなさそうで、気が付いたら、「近所のご同業と統合されたらいかがですか」と肩をたたかれている。そんな共通点が思い浮かびます。

また、筆者は二人の話の共通点について、「守りの姿勢」と「行政の介入を拒む姿勢の強さ」もあげていました。地域特性があるから、公的な役割があるから、自分たちは潰れるはずがないと思っていたことだ、とも言っています。なかなか本質を突いたご意見でした。

武田薬品 シャイアー社買収の臨時株主総会

上記のコラムを読んだ直後、kuniにも面白い展開が訪れました。武田薬品のシャイアー買収に向けた臨時株主総会のニュースに触れたのです。12月5日に開催され、株主の2/3以上の賛成を得て承認されました。来年1月には買収が完了するということです。

非常に対照的ですよね。製薬業界も特に創薬の分野では生き残りをかけた競争が激しいと聞きます。日本企業によるM&Aとしては最大級といわれる買収劇です。kuniにはこの買収が成功するのかどうか分かりませんが、彼らは衰退していく側にはならない決定をしたわけです。

この業界には新薬の特許が切れてしまうと、途端にその分の収益が見込めなくなるという特殊なルールが存在します。当然その時期に向けて新たな収益源を探す必要があります。有望な新薬が出てこないのならM&Aでということにもなるんだと思います。が、しかしそこには社運を賭けた決断があるわけです。

今月ソフトバンクが新規公開することで話題になっていますが、ソフトバンクグループも同様です。過去にとてつもないM&Aを繰り返して、ここまで成長してきました。彼らのM&Aを支える財務戦略は凄いです。あれだけの借金をしながら、普通に企業経営ができる孫さんが凄いんですね。

冒頭の地銀や大学。後半の武田薬品やソフトバンク。あまりに対照的ですよね。で、どちらも日本を代表する企業、組織として、今注目を集めています。

日産自動車 ゴーン氏から何を学ぶか

同一人物が執行と監督の双方を兼ねる体制

ある新聞の社説で見つけたお話。日産自動車のガバナンス体制について、「同じ人間が執行と監督の双方を兼ねる体制が機能するわけはなく、ガバナンスの不備がトップの暴走を許す土壌となった」。おっしゃる通りだと思います。この新聞に限らず、異口同音にこのことは批判されています。

後の祭りですけどね

その通りなんですが、ことが起きてからなら誰でもこういう批判はできるわけです。問題はことが起きる前にどうやってガバナンスを機能させるかです。当ブログをお読みいただいている方はおそらく、監査や検査、コンプライアンスといったお仕事をされている方や興味を持たれている方が多いと思います。

ことが起こらないように、トップをけん制していくことが、こうしたお仕事されている方たちのミッションですよね。kuniもまさにそこに注力してきた一人です。今回の日産自動車の件にしてもそうですが、こうしたお仕事をされている方たち、ゴーン氏にどう接してきたんでしょう。

コンプライアンスや監査、検査のお仕事

執行サイドの推進力に対し、時にはブレーキにもなってしまうこうしたお仕事はほんと大変です。もう少しで成果を手に入れることが出来そうなとき、寸前で待ったをかけなきゃいけないような場面だってあります。じっくり話をして分かってもらうしかないんですが、これは本当に骨が折れます。

しかし、今回のゴーン氏の件、他の誰にも無理だと思われる偉業を成し遂げ、日産を復活させた立役者でさえ、一線を越えると自分自身を見失ってしまい、取り返しのつかない事態に陥ってしまうという良い教訓になりました。権力が集中しすぎるきらいのある経営者に接する際は、あのゴーン氏でさえこういうことになったんだという事例を紹介して、必要な場面では思い止まってもらいましょう。

日産自動車 ゴーン氏の事例で学ぶべきこと

まだまだ事件の全容は解明されていませんが、今のところ我々が学習したのは

  1. 権力の経営者一人への集中は危険
  2. 牽制を効かせる取締役、監査役は誰なのか(いなければもっと危険)

というところでしょうか。一般的に危険な体制ではあるものの、そんな中でもバランス良くやってきた経営者が、どのように自分を見失っていくのか。ゴーン氏が自分を見失うことになった場面やきっかけについては、このあとの報道等でしっかり押さえていきたいと思います。

ちなみに、先日の日経新聞の池上さんのコラム:大岡山通信 では、経営者にとって大事なことは後継者の育成だが、その後継者となりそうな人物が左遷されたり、追放されたりするようになると、赤信号であると書いておられました。おっしゃる通りですね。