議決権行使助言会社

少し前になりますが、12/8付け日本経済新聞に「四半期開示 米で意見公募」という記事がありました。四半期開示についてはトランプ大統領からの指示に基づき、半期に変更した場合の影響を調査するというもので、当ブログでも過去に取り上げました。今日のお話は、その同じ席で米国SEC委員長が問題視したという別のお話です。

米SECの2019年重点活動テーマ

米国ではこの時期に来年の活動内容を示すんですね。クレイトン委員長は以下の5つのテーマに重点的に取り組むと発表しています。

1 新しい投資家保護ルールの導入完了
2 議決権行使プロセスの改善
3 個人の投資機会拡大
4 長期投資の促進(これが四半期開示の件)
5 仮想通貨技術(主にICOの件)

こうやってタイトルだけ眺めていると、なんだぁ、アメリカも日本と同じようなことしてるんだなぁ、って感じですよね。中身しっかり見ていかないと何とも言えませんが。

この中の2番が本日のお題です。議決権行使助言会社というのがあるらしく、アクティビスト(物言う株主)の株主提案など、株主総会で賛否が分かれるような議案について、機関投資家に賛成するべきか、反対するべきかをアドバイスする会社だそうです。

こうした助言を行いながら、同じ議決権行使助言会社が事業会社向けにコンサルティングサービスも手掛けているということらしいです。どういうコンサルをするのかまでは説明されていませんでしたが、問題視されるところを見ると、株主対策みたいな領域を含んでいるということだと思われます。

面白いですよね。よくこんなビジネスモデル考えるよなぁ。とkuniは素直に感心してしまいました。自分で火を付けて、大騒ぎして、自分で消火する。で、みんなから喜ばれると。まぁ、そんな単純なお話ではないんでしょうね。いや、皆から喜ばれていないから問題になってるんでした、失礼しました。紙面では、利益相反に該当するとして、助言会社に新たな情報開示ルールを設けることになりそうだ予想してます。

機関投資家なんて自社でアナリストとか抱えてるんだから、自分たちで考えろや、ってことのように思いますけどね。きっと業務を分離して、子会社に片方の業務を移管してみたいなことで終わるんでしょう。

今日は2019年重点テーマのうち、2番を注目してみました。4番の四半期開示については少し取り上げたことあるので、これら以外の重点テーマについても、いずれまた勉強してみたいと思います。

企業の不正や事故を発生させる原因・要因

これまでkuniが実際に身の回りで見てきた不正や事故の要因は何だったか、思い出してみようと思います。あらかじめ断っておきますが、きれいな結論までは導けないと思います。とりあえず、今日のところは洗い出し作業ということでお付き合いいただければと思います。

縦割り組織

これってよく聞きますよね。これに対して横割り組織なんてのは聞いたことないので、おそらく比較的フラットな組織に対してであるとか、横の連携が取れていない組織といった意味で使われていると思われます。そして、その縦の階層が多いということ。階層が多くなればなるほど、レポートラインが間延びしてしまいます。

間延びしたレポートラインの末端には、具体性を欠いた単純な指示しか届かなくなり、「今月〇〇必達」といった、〇〇至上主義みたいな指示が横行します。たとえ経営層では経営戦略がそれなりに練られていたとしてもです。

パワハラ

末端への指示が単純化されればされるほど、管理職が行うマネジメントが劣化し、例えば数字ができたかどうかだけのマネジメントになって行きます。できなかった者に対してのプレッシャーが際立つことで、限りなくパワハラに近いマネジメントに傾斜していきます。当のマネジャーも上から大した指示を受けていないので、部下に対しても納得感のある指導はできません。

マネジャーがハラスメントを行わなかったとしても、部下たちはそういった状況に追い込まれている上司を見ながら忖度し、やってはならないことをやってしまう、なんていうこともあります。指示されて行う不正も、忖度して行う不正も結果にあまり大きな違いはありません。

経営層と現場の乖離

綿密に練った営業戦略のつもりが、現場には数字しか伝わっていない。このようなレポートラインになると、現場で起こったこと、見つかった課題が、管理層を経由して経営層に伝わることはありません。経営層は自分たちの戦略のもとに会社が前進していると思っていますが、現場では予想すらできない問題が持ち上がり、拡大していきます。

ここまでくると、不正・不祥事を発生させる企業としては一人前。起きてしまったことは経営層にとっては寝耳に水。会見では「ありえないことが起きてしまいました」、「決してあってはならないことが起きてしまい・・・」といったコメントになるんですね。

企業の管理部門

こうした不正等を防止し発見するための組織が機能していないことも、不正等の原因の一つになり得ます。ありがちなのは、法務やコンプライアンス部門と監査の連携が良くない組織です。社内監査はよく頑張っても2年に一回くらいの周期でしか、被監査部署を監査できません。一方のコンプラセクションは日々監視ができるはず。お互いの強みを補完して連携できているかどうかは意外に重要です。

コンプラセクションが実効性のあるモニタリングを継続して行います。現場からすると常に監視されていることになります。そうしたモニタリングから見えてきた課題や傾向等を基に、社内監査で深掘りします。逆に監査で見えてきた課題に対してコンプラがルール改定や指導を実施します。

このような管理部門の連携に加え、その他の一般的な従業員までが不正を許さないという目線で監視している。そういう意味で内部通報制度を構築していくべきだと思います。やはり全くまとまりのない話になりました。本日はここまで。

エシカル消費(倫理的消費)とは

消費者それぞれが各自にとっての社会的課題の解決を考慮したり、そうした課題に取り組む事業者を応援しながら消費活動を行うこと。と、消費者庁のHPでは説明されています。今、話題になっているというか、ちょくちょく新聞、雑誌等で見かけるようになってきました。

SDGs 目標12

以前紹介したSDGsの中にも出てくるんですよね。目標12は「持続可能な消費と生産のパターンを確保する」というやつですね。このうち消費に着目したものの一つと考えてよさそうです。個人の視点で整理しなおしたものとも言えるかもしれません。

世界が直面する飢餓や異常気象、人権侵害などの課題を解決していこう。売り手の企業はこう提案しますが、買い手の消費者としても同じ意識をもってエシカル消費を心がけましょう。ということ。消費者庁はリーフレットで「世界の未来を変えるのは、あなたの日々の消費」と呼びかけてます。

例えば、食品なんかの場合、何がエシカルかというと、産地からの輸送が不要な地産地消であるとか、化学肥料を使わない有機食品だとか、そういう選択がエシカル消費なんだと思います。消費者がこういうことを意識して買い物するようになると、販売する企業としても当然ココをウリにしてくるはずです。

また、食品偽装とか、、、

こうやって考えていくと、次に心配になってくるのは販売する側が嘘をついて販売しようとするんじゃないかという点です。このところは工業製品の検査等の不正が相次いだわけですが、それより前、食品の産地偽装やレストラン等で使用する食品の種類を偽装する、なんてことがよくニュースになっていた時期がありました。

以前よく見たのは、食品の価値を上げるために、海外産を国産と偽ってみたり、高級な素材を使っていると偽るような、偽装でした。エシカルという新しい基準で消費者が食品を選ぶとすれば、やはり今度はそういう基準に訴えるような食品偽装が発生するようになるんでしょうか。あまりそういうことは考えたくないんですが。

ソーシャルレンディング業者のエーアイトラスト株式会社

証券取引等監視委員会は7日、ネット経由で融資を仲介するソーシャルレンディング業者のエーアイトラスト(東京・港)を行政処分するよう金融庁に勧告したそうです。実在しない架空の事業で投資を募るなど金融商品取引法に違反する虚偽表示があったとしています。併せて建議も行われています。

ソーシャルレンディングとは

ソーシャルレンディングとは、いわゆるクラウドファンディングのうち、金融型クラウドファンディングに分類されるもので、他にも購入型クラウドファンディングや、寄付型クラウドファンディングなどがあります。購入型なんかは皆さんも聞いたことがあると思います。出資者がプロジェクトに出資しその成果として開発した商品を受け取るやつですね。

エーアイトラスト株式会社のHPを見てみましたが、会員登録しないと個別のプロジェクト等については見ることはできませんでした。ちなみに、運用利回りは6%~10%、運用期間は3か月~24か月で10万円からの少額投資が可能と謳っています。要するに監視委員会が指摘している、架空であるとされる事業に関しては確認できません。

エーアイトラストという会社

この会社、株主が開示されていないほか、沖縄の軍用地担保ローンの紹介があったり、いかにも怪しげなHPです。エーアイトラストは Ai Trust の英文表示で、いかにもAI(人工知能)をイメージさせるようなデザインになっています。笑えるけど。

で、役員を見ると、4名が財務省出身となっていますし、他に国土交通省、防衛相出身者がそれぞれ1名という内訳で、社長以外は全員天下り。元官僚の人脈を生かした事業運営を売りにしているような節もあります。今時そんなもん何の役にも立たんでしょうに。

監視委員会による勧告と建議

以前、東洋証券の行政処分勧告の記事で、「勧告」について説明しました。勧告というのは、検査を受けた業者に対して処分をした方が良いよ、と告げて勧めること、つまり監視委員会が金融庁に対して意見すること。でした。

エーアイトラストのこの事例に関しても同様、監視委員会は金融庁に行政処分を行うよう勧告をしたわけですが、併せて建議も行っています。新聞の記事では「監視委は7日、投資家保護を徹底するため情報提供や説明を充実するよう金融庁に制度改正を求めた」と書いていますが、このことを建議と言います。

検査の結果としてこういう悪事を可能としてしまったことについて、法律の不足や不備を改善してね、という要請をすることを「建議」と言います。証券取引等監視委員会のHPでは、「金融庁設置法第21条の規定に基づく建議について」というタイトルで公表されています。

実体のない投資となってしまったようですが、投資家のお金はどうなってるんでしょうか。被害の状況等についてはまた別の回にて。

ソフトバンク 通信障害

なんとも微妙なタイミングです

12月6日の午後、ソフトバンクの携帯電話で大規模な通信障害が発生しました。原因は、スウェーデン通信大手のエリクソンという会社が提供したソフトウェアだったということで、既にエリクソンが公式に謝罪もしているんですが、、、。4時間に及ぶ通信障害、なんともビミョーなタイミングで起きちゃいましたね。IPOが19日に上場が予定されていて、申し込みが11日~14日だそうです。

他の株式や証券などを売却して、買い付け代金に充てようとしていた向きには、なかなか辛い下げ相場となっていたうえ、追い打ちをかけるように大規模通信障害の発生です。まぁ、上手くいかないときってこういうもんですけどね。直前のこのアクシデントで公募価格に下げ圧力がかかったりするのか、募集に悪影響は出ないのか、気になるところです。早速、シ団や機関投資家とミーティング持ったとか。

これくらいのサイズの公募になると、証券会社は募残と言いまして、頑張って募集したけど売れ残りが発生しました、という事態を懸念しながらの募集になるんですね。売れ残るということは、その価格では魅力がない。→ 証券会社が自己で売れ残りを保有することになる。→ 上場しても公募価格割れになる。→ 証券会社が損失を被る。ということになります。

いやぁ、証券会社結構冷えてると思いますよ。もちろん営業がお客さんに説明するときは自信たっぷりで、儲かりそうに話すんですけどね。

ケータイ2台持ち

ニュースに出てインタビューに答えていた人がこんなことを。「プライベートのケータイも会社から貸与されているのもソフトバンクなので、何も出来なくなってるんです」。これは意外な盲点でした。会社から携帯電話持たされてる人は多いと思います。

kuniもそうなんですが、同じキャリアの携帯電話持ってたんじゃ、こういう障害時に困りますよね。BCMの観点からは、個人が使用している携帯キャリアとは違うキャリアの会社携帯を持たせるべきですね。外回りの営業員とかを抱えている会社であれば、これは考慮しておいた方が良さそうです。

もう一歩突っ込んで考えると、キャリア以外にOSへの配慮はどうでしょう。iOSとアンドロイド、両方持っておいた方が良いんでしょうか。OS由来のバグ等で一斉に通信ができなくなる、なんてことが起きうるんでしょうかね。この辺りからはkuniの知識では手に負えません。本日はこれまでということで。