SMBC日興証券 インサイダー取引事件

11/29 SMBC日興証券の元社員とその知人が金融商品取引法違反で逮捕され、12/19 同法違反の事実で起訴されました。25日に調査報告書と同社の対応が公表されています。この事件、いろいろと考えさせられる事件です。

入社後1年3か月あまりの新入社員の犯行

SMBC日興証券では2012年に当時の執行役員がインサイダー取引で逮捕されるというショッキングな事件が起きています。この執行役員は銀行からの出向者ということになっていますが、まぁ天下りですね。

そして今回、6年前の悪夢再びということになったわけですが、なんと今度は新入社員による犯行。ニュースでは確か30歳と伝えていましたので、28歳の時の犯行ということになりますか。大学院卒とのことですがちょっと年齢が合わないな。まぁ、いいや。

今回のインサイダー取引、オフィス家具のイトーキが連結子会社のダルトンに対してTOBを行った際、投資銀行部門に所属していた犯人が友人にインサイダー情報を伝えて儲けさせたという事件です。10年前くらいでしたか、金融商品取引法等が改正され、他人に利益を得させたり、損失を回避させることを目的に、インサイダー情報を伝達したり、当該銘柄の取引を勧めることも禁止されました。

相当な悪意

もう一つ驚きなのが、犯人自身が業務上知り得た情報ではないことです。同じ部署が取り扱っていた情報ではあるものの、プロジェクトメンバーではない犯人には伝わらないよう、相応に情報隔離、管理がされていたようです。にもかかわらず、断片的な情報を基に積極的に調べ、非公開の案件情報を取得し、知人に伝達しています。相当な悪意を持った犯行と言わざるを得ません。

日興証券における上記法人関係情報の管理の態勢は、kuniが報告書を読む限り、それなりの態勢になっていると思います。しかし、悪意を持った社員を前提とした管理態勢にまでは仕上がっていなかったということですね。こういう悪意に満ちた事件に対する改善策は非常に厳しいものにならざるを得ません。

悪意を持った社員への対抗策

会社の業務でこんなこと考えたくないですよね。性悪説でルールや態勢を考えるという作業は、ホントに身体によくないです。こういう悪意を持った社員を事前に上手く見つけることが出来ればいいのですが。ちなみに、報告書では犯人の予兆的な事実として以下のことをあげています。
① 業務上必要とはいえないフォルダへのアクセスやインターネット検索の履歴が数多く発見された
② 内部管理責任者によるデスクチェックでは、抽斗の施錠漏れや机上の未整理という問題点が指摘されていた

たったこれだけです。その他さまざまな場面で総じて高評価を得ており、上記2点以外に予兆を感じさせる事象はなかったようです。この2点、日常生活における社員の情報管理に関する意識の高低で、予兆を、、、。これはかなり難しいですね。直属の上司に期待することがまた増えそうです。課長の業務はどこまで行っても減りそうにありません。

南都銀行の店外ATM セブン銀行が広域受託

コストダウンに迫られる地銀とそれを囲い込もうと企むローソン銀行の記事を以前書きましたが、地方銀行第一号は南都銀行。それも相手はローソンではなくセブン銀行となったようです。

2019年より店外ATM入れ替えへ

2019年中に駅や大学を中心に店外に設置された南都銀行のATMを、セブン銀行のATMに置き換え、共同でATMを運営、その後の利用、運用状況を確認しながら順次拡大していくとのこと。ローソン銀行が目指していた店舗の共同運営については視界に入っていないようです。

セブン銀行のプレスリリースによると、現在も26社で449台を受託、運営しているそうですが、地方銀行では初めてのようです。また、日本経済新聞では、「全体の4割に当たる239台の支店外ATMを一括委託する」という書きぶりになっていますので、これまでのセブン銀行の実績との比較でもかなり大きな案件ですね。

地方銀行にとってのコスト削減モデルに

同じく日経によると、南都銀行はATMの運営費が今の半分に圧縮できるとしており、1億円以上のコスト削減を目指しているとしています。地銀に限った話ではありませんが、ATMのメインユーザーは高齢者、地方になればその傾向はさらに強まります。ATMを削減するとなると、顧客やその地域からの反発が予想されます。

どこだったか忘れてしまいましたが、地銀がある地域の営業所だか、ATMだかから撤退を決めたら、その自治体の取り扱い金融機関から外されたとか、外されそうになったといった話もありました。

だったら、ATMだけ全部コンビニに任せようという発想にならない方が不思議ですよね。もちろん、コンビニ銀行使ってみたらとっても便利。ってことで、「コンビニ銀行に顧客を奪われるんじゃないか」、という心配も分かります。けど、まだその分野で戦うの?って感じです。もっと自分たちの強みを出せて、収益性改善できそうな戦場で戦わないと。

ふくおかFG傘下の収支管理アプリ導入

「南都銀行がふくおかFGの傘下のフィンテックベンチャーが運営する収支管理アプリの提供を受ける」なんていうニュースも見つけました。iBankマーケティングという会社らしいですが、広島銀行、沖縄銀行に続いて3行目らしいです。こういう新しいサービスにも対応しつつ(単独でできなかったらどこかと組むのもありでしょう)、レガシーコストには大鉈を振るう。地銀の中では参考になる動向かもしれませんね。

なお、iBankマーケティングのHPで確認したところ、収支管理アプリ「Wallet+」を今現在使えるのは、福岡銀行のほか、沖縄銀行、熊本銀行、親和銀行となっています。南都銀行はまだ準備中ということでしょうか。

プラットフォーマーバブルとパウエルショック

プラットフォーマーたちのビジネスモデル崩壊

しかしまぁ、よく下げますね、株式市場。日経平均も2万円を割れて、19,000円まで下げる局面もありました。何で日本株がここまで、、、という気もしますが、相場ってこんなもんです。振り返ってみると、秋口には米国株を先導していたGAFAは既に終わっていたんですね。

アップル株は10月高値233ドルから足元150ドル程度まで、アマゾン株は2,000ドルから1,300ドルまでと、いずれも30%以上下落しています。この間僅か3か月です。プラットフォーマーたちのこの変調ぶりは何だったのでしょう。

一番大きな変化は多くの人たちが「購買履歴や個人の情報はお金と一緒」ということに気が付いてきたことだと思われます。プラットフォーマーたちはタダで手に入れたこうした情報を元手にビジネスを創出してきました。タダで仕入れて付加価値を付けて売るわけですから、当然儲かりますよね。

ところが、ここへきて皆が、このような情報が実はお金と同じ価値があるものなんだということに気付き始めます。すると、デジタル課税などというお話が出てきたり、個人情報の利用や持ち出しの規制といった話が出てきます。課税に限らず、新たな規制についても、プラットフォーマーにとってはすべてコストになるわけです。

タダで仕入れていたものが相応の費用を伴うようになってしまった。彼らのビジネスモデルが崩れてしまったということなんですね。これからは彼らも普通の企業になってしまう。そうなるとあのバカ高い株価は説明がつきません。

FRB パウエル議長利上げ

トランプ大統領からかなり批判されてきたFRBパウエル議長でしたが、19日に政策金利を0.25%引き上げました。「トランプ氏の圧力に対抗して利上げ」といった報道が多かったように思います。彼自身「政治的な圧力は政策金利をめぐる議論や決定に全く影響しない」とコメントしています。

しかし、なぜこのタイミングにこだわったのかなぁ。というのがkuniの正直な感想です。すでに推進力を失い、方向性をなくしてしまっていた市場には致命傷だったように見えます。パウエル議長、たしか弁護士で、金融、とりわけマーケットには縁のない人です。この場面、何より政治に対抗してFRBの独立性を誇示することが重要だったのでしょう。

トランプ大統領の言葉

利上げ直前にトランプ大統領がつぶやいた言葉がいけてます。「FRBの連中がまたしても間違いを犯す前に、今日のウォール・ストリート・ジャーナルを読んでもらいたい。それからこれ以上市場を流動化させてはいけない。無意味な数字に惑わされず、市場を感じろ。グッドラック!」。
トランプ氏の読みの方が当たりましたね。市場関係者的に言うと、また彼のファンが増えたかもしれません。

レオス・キャピタルワークス 上場延期

テノ・ホールディングス上場承認取り消し

テノ・ホールディングスの上場承認取り消しについてはこの記事で触れてみました。この時も同じようなタイミングだったと思いますが、上場承認取り消しは東証側からの一方的なモノで、その理由は「コーポレート・ガバナンス及び内部管理体制の有効性に、新たに確認すべき事項が生じた」ためだとしていました。

おそらく東証への内部通報ではないかと思われますが、その後同社への聞き取り調査などを経て問題は解消したようで、再度上場申請が承認され、12月に上場を果たしました。公募価格1920円に対して、上場初値は2400円。まずまず順調なスタートを切っています。

レオス・キャピタルワークスの上場延期に関しては、主幹事証券であるみずほ証券からの申し入れによるとされています。プレスリリースによると「当社のコーポレート・ガバナンス及び内部管理体制の有効性について、投資家保護の観点から深掘りするべき事項が発生した」ということのようです。

「関係者によると」といういつものリーク記事

「深掘りするべき事項」について、日本経済新聞は「関係者によると」と前置きしたうえで「投資家に投信を販売する際の新たに口座を開く業務フローの一部について、みずほ証券が問題視したのが原因とみられる」と書いています。

一方で、レオス・キャピタルワークスの社長は「顧客の資金や運用資産に関わる問題は一切なく、みずほ証券の要請は納得できない」と言ってるようです。けど、最終的にはこの要請を飲んでるんですけどね。また、「弁護士にも確認の上、法令違反などはなく『白』と認識しているが、それを証明することを求められた」とも語っています。

技術的な分析(妄想だと思ってください)

「新規口座開設時の業務フローの一部」から考えられることは、「本人確認手続き」とか、「反社会的勢力のチェック」、「マネロン関係チェック」といったところでしょうか。最近では北朝鮮やイランの関係者との取引なんかがよく話題になります。あとPEPs(外国要人)とかも、一般の投信運用会社にチェックできるんだろうかと思いますね。

「弁護士にも確認の上、法令違反などはなく『白』と認識」については、あまり意味がないのでは。そんなレベルの黒でしたら、ここまでたどり着いてないでしょう。2009年に上場し、翌年粉飾決算で上場廃止になったエフオーアイという会社。その主幹事証券がみずほ証券です。上場時に粉飾を見抜けなかったという苦い経験を持つ同社ですから、グレーでもそう簡単には許さないでしょうね。

マーケットが暴落中というのも・・・。主幹事証券も上場する会社も相場巧者。上場タイミングを調整するための芝居なんかじゃないですよね。ここもちょっと気になるところではあります。

キャッシュレス決済で財布のひもが緩む

日経ビジネスに掲載された記事「コンビニ、省人化競争そろり」で書かれていたお話です。キャッシュレスを導入してみたら、つり銭の準備や売上金の管理などの業務が不要になることで利益が向上したという話。あるラーメン店でスマホアプリで注文・決済する仕組みを導入した事例などが紹介されていました。

客単価が1.5倍に

後者の事例では後ろに並ぶ他の客のことを気にすることなく、席について自分のスマホで注文できるため、じっくりトッピングやサイドメニューを追加しやすくなり、結果的に客単価が1.5倍になったということです。これって面白いですよね。決済だけではなく注文も自分のスマホでというところがミソです。

最近チェーンの居酒屋でよく見かけるタブレット端末で注文させるシステム。店員を呼んでテーブルの横に立たせて注文に迷ったり、、、こういうのってkuniは苦手なんですよね。タブレット相手に連れとああでもないこうでもない。いくら悩んでも店員に迷惑かけないでしょ。あの注文システムは優れモノだと思います。

最後にスマホで決済出来ればなお楽ですし、その場で均等割りで複数スマホでの決済が可能なら、割り勘もあっという間です。割り方の比率指定とかも出来ちゃったら便利かもしれません。こういうことって意外にやってみないと分からないことなんでしょうね。他にもまだまだ新しい発見があるんじゃないでしょうか。

キャッシュレス決済がデフレ克服の起爆剤になるかも

日本でクレジットカードが普及しない理由として、「カードを利用すると使い過ぎてしまうから」という意見が少なくありません。現金と違って財布の中から出ていかない決済方法って、おそらく財布のひもが基本緩むんですね。クレジットカードの場合、後から忘れたころに請求が来るからという理由だけではないと思います。

買い物している時に財布の残高が気になって、買い物を躊躇した経験って誰もがあると思います。その時その時の我慢した金額は少額かもしれません。2,000円程度の買い物して500円のもう一品を我慢みたいな。けど、これを追加で買ってもらうことができると、売り上げは25%の増加になるんです。5人に一人の確率で追加の買い物してくれると5%の売り上げ増です。これって経済指標としてとらえると強烈な伸び率ですよね。

と、妄想してみましたが、今政府がやろうとしている、キャッシュレス決済導入に対する過剰なまでのポイント還元。消費増税をマヒさせるための一時的な施策でしかないように見えますが、意外な効果が出るのかもしれません。