銀行業務 高額送金 地銀波乱 人材枯渇の危機

2/20 日本経済新聞に二つの記事が掲載されました。一つ目は「銀行業務、溶ける境界 決済に続き高額送金も」。もう一つが「地銀波乱 人材枯渇の危機(上)新卒が集まらない 厳しい経営 魅力も低下」です。地銀にはWパンチですね。とうとう来るところまで来てしまったか、そんな感じです。

高額送金業務の解禁

一度に100万円を超す送金業務は銀行にしか認められていませんでしたが、法改正によりこれを銀行以外にも解禁するというお話。登録制で参入しやすい少額送金とは別の、資本金などで厳しい要件を求める高額送金業者という類型を認可制で設けるという考え方です。

LINEをはじめとする送金業者は従来100万円以下の送金しかできませんでしたが、法改正後に認可を受けることができれば、高額送金も可能になります。いわゆるフィンテック企業がどっと流れ込んできそうですね。また一枚、銀行業務の垣根が崩れることになります。新規参入で送金業務の手数料等の体系は一気に価格破壊が起き、銀行にとって従来通りの手数料収入は見込めなくなるわけです。

記事では最後に少しだけ触れていましたが、マネーロンダリングやテロ資金供与に関する護りのガバナンスにおいて、どれだけ確固たる対策を準備できるかが問題になってきます。かなりのコストを要することでもありますし、一度制裁を受けると再起できない程の金額になることもあります。ここはあえて少額送金業者にとどまるという判断もありかもしれません。

地銀波乱 人材枯渇の危機

昨年12月のお話として伝えていますが、翌年4月入社の新卒採用をまだ募集していたという話。例として取り上げていたのが、西京銀行です。まぁ、よりによって西京ですか。記事では西京銀行に限らず、昨年末の時点でなお採用活動を続けていた地銀は少なくないと書いてましたが。。。

TATERUと西京銀行でアパートローン。こんな不祥事で全国区で有名になってしまった第二地銀ですからね。そりゃ人は採れないですよ。入行したと思ったらいきなり行政処分。気が付いたら流出する預金を繋ぎ止めるのが新人の初仕事、なんてのはシャレになりません。

最近念仏のようによく聞く言い回し。全国の地銀は105行。およそ半分の52行で2期以上連続本業損益が赤字。さらにその半分の23行は5期以上にわたり連続して赤字。この記事でも書かれてます。

19年新卒へのアンケート結果 最も敬遠したい業界 メガバンク・信託銀行

アンケート結果も添えられており、就活中の文系学生が最も敬遠したい業界として、第3位に地銀がランクインしています。昨年10位から大幅に順位を上げたとか。しかし、むしろ気になるのは1位がメガバンク・信託銀行になってるところです。採用枠をグッと絞ったメガバンクは、大丈夫だったんですかね。

KYB 住友精密、人件費の水増し請求 防衛省向け

少し前のことになりますが、1/29 日本経済新聞の記事です。両社ともに防衛省に納入した航空機部品で代金を課題に請求していた事例が見付かったことを公表したという報道でした。この時は何で同じ日に公表?くらいにしか思っていませんでした。

KYBに関しては、例の免振装置の改ざんに関する調査の過程で、従業員らが自己申告して発覚したといいます。まぁ、このプロセスは理解できますよね。KYBにとっても横展開ということで、当然炙り出すべきものが炙り出せたということになります。

住友精密がほぼ同じタイミングで公表してきたところがよく分かりません。KYBは航空機のブレーキなどの部品、住友精密は航空機の脚部で9割以上のシェアがあるといいますから、脚部に関しては両社で作っていたんでしょうか。防衛省に対する報告タイミングとしては同日だったようですが、KYBが「過大に計上した可能性がある」と報告したのに対し、住友精密は「報告を準備している」と連絡してきたということらしいです。何となく状況推測できますね。

防衛省に対する過大請求

防衛省ってかなり適当な管理しかしてないんですかね。昔も確かあったよな、、、と思いながら調べてみると、やはりありました。2008年には極東貿易、2012年には三菱電機、住友重機、これらの関係会社5社が、2013年には島津製作所が防衛省に対する過大請求を公表しています。

また、2018年には東京航空計器という非上場会社が26憶円を過大請求していたとして、延滞金、違約金も含め70億円を防衛省に納入しています。

これらの中でも三菱電機の件は強烈です。防衛事業では40年近く、宇宙事業では20年にわたって、過大請求をしていました。過大請求が確認できた過去17年間を対象に、グループ会社含めて合計374億円を過大請求。返納金、違約金、延滞利息の合計773億円を返還しています。この事件今だったら大変なことになってますよね。

防衛省が支払うのは血税です

防衛省への過大請求、我々民間人に直接被害が及ぶわけではありませんから、騒ぎが大きくならないように思います。今回の2社の件についても、今のところそれほど大きく取り上げられていません。

しかし、防衛省が支払うのは我々国民の血税ですからね。請求する方も支払う方も真剣な対応をしてもらわなければ困ります。防衛省に群がる防衛装備等納入業者、しっかりチェックしていきたいところ、今後の調査結果公表を待ちましょう。

再生エネ電力 選べる時代  みんな電力 積水ハウス

2/19 日刊工業新聞の記事です。皆さんは再生エネルギーによって発電された電気を選べるとしたら、再生エネ電力を使用しますか?なんて、いきなりの質問でしたが、個人の場合はこの話題にそれほど反応はまだないですよね。今より割安になるなら、、、って感じでしょう。

みんな電力

「みんな電力」という会社がこの記事で紹介されていました。世の中には頭のいい人たちがいるもんですね。どこの発電所で何をエネルギー源(再生エネ)に発電された電力かが分かる。その中から発電所を指定して使用することができるんだそうです。

みんな電力さんのホームページで確認したところ、現在、60か所くらいの発電所が紹介されてました。ここでいう発電所はかなり本格的な水力発電から、10キロワット程度の家庭用に少し毛が生えた程度のものまでいろいろあります。

「顔の見える電力」というのがこの会社のウリで、電力の生産者がわかり、そのストーリーを感じることができる、世界でも類例のない電力小売りサービス。と謳っています。

ESG投資を呼び込む

冒頭の質問に対する答え、上場企業あたりになるとかなり事情が変わってきます。そうなんです。ESGに対する取り組みが自社への評価につながってしまう上場企業等は、この再生エネ電力使用するはずです。おまけに、再生エネ電力を使用したことの証明までしてくれるとなると、まさに渡りに船ですよね。

みんな電力さんの取締役の話も交えながら、「お金を払った先が再生エネ由来の電気と言えることが重要」であり、「被災地の風力発電所から電気を買った」というストーリーを外部に伝えることができ、社会的な評価も高まると伝えています。これ以上説明は不要でしょう。

そんなことで、既に丸井グループやTBSホールディングスなどが同社の顧客だそうです。現在の株主にも、SMBCベンチャーキャピタル、みずほキャピタル、横浜キャピタルといったメガバンク等が並んでいます。資本金6億3,420万円ということですから、そろそろ上場準備に入っているものと思います。楽しみな会社です。

積水ハウスオーナー電気

同じ記事の中で、こちらは外販はしていないようですが、積水ハウスの話題もありました。同社の建築した住宅の太陽光発電。FITによる売電が終了する家庭から同社が電力を買い取るサービス名とのこと。いわゆるFIT終了の19年問題というヤツの解決事例ですね。

同社製の住宅に搭載済みの太陽光パネルは、年7億キロワット時を発電するとのこと。このうち2~3割を買い取れば、同社が使用する全事業の電力が再生エネ化できるんだそうです。今のところ積水ハウスには、事業として取り組む意向はなさそうですが、大手住宅メーカーって再生エネ電力小売り事業の核になって行くかもしれませんね。

スルガ銀行 預金流出 預金支援 りそなHD

1/14 金融庁銀行第2課が地銀に対してスルガ銀行への預金支援を依頼していたことが報道されました。2018年度上期で預金が6,800憶円(全預金の16%に相当)流出してしまったとのこと。いろいろと疑問の残るこの預金支援ですが、その後のスルガ銀行についてみてみましょう。

2/2 ゆうちょ銀行で住宅ローン媒介32件不正

スルガ銀行との提携による住宅ローンの媒介業務に関する社内調査で、32件の偽装や不正の疑いが見付かったという発表。審査業務は全てスルガ銀行が担当。ゆうちょ銀行側の不正関与はなかった。

2/14 無担保ローンの不正の有無調査

スルガ銀行は個人向けの無担保ローンについて不正の有無に関する調査に乗り出したことを明らかにしたという報道。無担保ローンの融資の過程で、審査書類に改ざんなどがあったと疑われているため。と、報道されているのはこの程度ですが、これがデート商法に関与する内容だということらしいです。

共同通信の伝えたニュースでは「スルガ銀行の行員がデート商法詐欺まがいの行為に関与し、個人向けローンを融資していた疑いがある」となっていました。婚活サイトを利用した不動産業者とつるんでいたという内容らしく、この件について弁護士と被害者がスルガ銀行を訪ねるといった内容がテレビでも放映されたとか。いやいや、なんぼでも出てきますわ、この銀行の悪事。

しかし、考えてみれば至極当然の話かもしれません。何が何でも収益を上げさせるパワハラ下での営業。当時ドル箱だったアパートローンと個人向けローンで何とかしようと考えるでしょう。そんな銀行員の取り巻きは、何にでも食いついてくるスルガ銀行の行員に対していろいろと怪しいお話を持ち込んだはずです。

そしてこの後は

金融庁が他行に依頼して集めたとされる預金支援。聞くところによると2,000憶円以上突っ込まれているとか。この後どうするつもりなんでしょう。どこかの銀行の傘下に入れて再建するため、既に相手を見付けているんでしょうか。

2/4付の金融財政事情では「りそなHDが台風の目」と伝えていました。国内リテールビジネスの強化を図りたいりそなの思惑と、創業家支配から完全に離脱したいスルガの思惑。となるとそれなりの体力と資本が必要であり、地銀ではなくりそなHDが有力という見立てのようでした。

それとも、一時的な取り付け騒ぎを回避するのが目的であり、落ち着いたところを見計らって自主廃業させるのか。いずれにしても、預金支援だけで終われるもんではないと思われます。支援した預金に何かが起きてしまったりすると、支援した銀行が大変なことになります。株主は黙っていません。いや、何も起こらなくても問題になる可能性すらありますよね。

かといって、支援した預金を引き出すこともできないでしょうし、そのアクション自体がスルガの息の根を止めることにもなりかねません。さぁ、この後金融庁どうするんでしょう。スルガ銀行は3月末までに臨時株主総会を開催する予定だとか。そろそろ結論が出てきそうな感じですね。

ガバナンス 最も優先して対応すべきリスク

デロイトトーマツさんのホームページで、「企業のリスクマネジメントおよびクライシスマネジメント実態調査(2018年版)」という調査結果資料が公表されています。2018年10月~11月にかけて、日本の上場企業約3,500社に郵送でアンケートを実施し、430社から有効な回答を得た結果だそうです。

最優先リスクは自然災害のリスク

日本国内で優先して着手が必要と考えられているリスクは「地震・風水害等、災害の発生」で、41.9%(前年は35.9%)となっています。昨年は大阪北部地震に西日本豪雨、北海道地震など、数々の自然災害がありましたからね。

特に、大阪では台風の影響で関空が機能停止し、北海道ではブラックアウト、社会インフラがマヒすることで企業活動が甚大な被害を受けることを体験しました。あんなことが自社の周辺で発生したら、、、と身構える企業の感覚よく分かります。

2位以下については以下の通りです。自然災害同様、最近の世相をよく表しています。
① 地震・風水害等、災害の発生(41.9%←35.9%)
② 人材流出、人材獲得の困難による人材不足(28.3%←23.6%)
③ 法令順守違反(24.6%←29.3%)
④ 製品/サービスの品質チェック体制の不備(20.5%←18.7%)
⑤ 情報漏えい(19.1%←21.6%)

2位の「人材不足」についても、前年の23.6%から28.3%へと上昇しています。4位の「品質チェック体制の不備」、ここでは全産業を対象としているためあまり目立ちませんが、製造業だけで見るとやはり大きく上昇していました。

クライシス経験企業が答えた成功要因

このアンケートでは、クライシスを経験した企業に、対処が上手くいった要因を聞いていますが、一番多い回答は「トップのリーダーシップ、トップダウンでの迅速な意思決定がなされたから」となっています。これもなるほど、って感じです。

危機管理を担当する部署でどれだけBCPとか作っていても、いざと言うときに重要なのはトップの判断ですよね。トップがどこまで腹をくくれるか、これ一番重要です。どの程度までの損失を覚悟するかで復旧対策のターゲットは決まります。トップが決められないとどうにも動けませんし、損失をとにかく出したくない、なんて発想しかできないトップは結果的に対処ステージを長引かせてしまいます。

一方で、クライシスを経験したことのない企業に、「対処を成功させるための要因は何か」との問いもあるんですが、トップのリーダーシップは3位にとどまっています。意外にトップには期待してないみたいですね。このアンケート、海外子会社に関する質問等もありますので、気になる方はデロイトトーマツさんのHPへ。念のため、kuniはデロイトトーマツさんとは関係ありません。