NISSHA 元従業員に懲役2年

勤務先の会社の技術情報を不正に持ち出したとして、「NISSHA」の元社員の男が不正競争防止法違反の罪に問われた裁判で、京都地方裁判所は3/17、懲役2年、罰金200万円(求刑懲役3年、罰金300万円)の実刑判決を言い渡しました。

事件の概要

年初、ソフトバンクの高速大容量規格(5G)に関する情報を持ち出したとして、同社から楽天モバイルに転職した男が不正競争防止法違反容疑で警視庁に逮捕されました。いわゆる営業秘密の持ち出しですね。

今日取り上げるのはNISSHAの従業員。NISSHAは昔の日本写真印刷です。スマートフォンなどに用いられる同社のタッチセンサー技術の情報を、転職先の中国企業で使用する目的で、この元従業員が不正に持ち出しました。技術部門の管理職だったようです。

会社の内部調査で情報の持ち出しが発覚し、中国から一時帰国していたところを逮捕されています。犯行は2017年、逮捕が2019年6月のことです。冒頭に書いたように、実刑判決です。執行猶予がありません。そういう時代になってきたと。

退職者

この判決が出た2週間後の3/31には、大阪地検が、不正競争防止法違反罪で大阪市淀川区の男性元従業員を在宅起訴していました。積水化学工業のスマートフォン関連技術が中国企業に漏洩した事件ですね。

情報処理推進機構(IPA)が3月に発表した企業の営業秘密の管理に関する調査によると、秘密漏洩の原因は退職者による持ち出しが36.3%で最多となっていました。テレワークは当たり前になり、希望退職者の募集の話題も絶えません。営業秘密に関する情報管理は今後、ますます難しくなりそうです。

五洋インテックス 外部調査委員会を再設置

元従業員から借り入れた3500万円について、五洋亜細亜株式会社としての債務はないという結論を出した五洋インテックス。なんともすっきりしない調査結果でしたが、また別件で外部調査委員会を設置するようです。

最近株価は

何度も取り上げてきた同社ですが、このところ株価が動意付いています。3月中旬まで110円台で推移していましたが、3/19に急動意。3営業日で298円まで急騰しました。前日の取引終了後、抗ウイルスカーテンをナスクナノテクノロジーと共同開発し、4月1日に発売すると発表したのが材料のようです。

その後行ってこいになりつつありますが、もともと仕手筋の関与していた(今も?)銘柄だけにまだ市場を賑わすこともありそうです。

調査委員会の再設置目的

で、またまた外部調査委員会の設置なわけですが、目的は以下のように説明されています。

五洋亜細亜株式会社における中国の取引先との取引実態及び関連取引の精査並びに同社における金銭借入の正当性、また、当社における不動産賃貸借契約において、賃料の正当性及び合理性においての精査を、外部の専門家による客観的な調査により、その経緯及び事実関係を精査すること。だそうです。

同日資金の借り入れについても

同日、「資金の借入に関するお知らせ」も開示していて、運転資金への充当を目的としてある個人から2,600万円を借り入れるそうです。従業員から3,500万円、また別の個人から2,600万円。どうなってるんでしょうね。今回は透明性を確保するために開示したんでしょうが。

新経営陣としては旧経営陣のやってきたことをこの際すべて精査し、明らかにすることが再生への第一歩だと。そんな主張のように見えますね。しかし家賃の正当性を調査とは、、、。

SMBC日興証券  逆転勝訴 元役員インサイダー

SMBC日興証券元執行役員のインサイダー事件ついて、同社が元役員に6,000万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が3/25、東京高裁でありました。定塚裁判長は請求を棄却した一審判決を取り消し、元役員に1,500万円の賠償を命じました。

事件のおさらい

事件は2012年のこと。同社が担当したTOB(株式公開買付)などを巡り、インサイダー取引が行われたとして横浜地検は元執行役員ら4人を金商法違反で逮捕します。証券会社の役員がインサイダー情報を提供したとして逮捕されたのは初めてのこと。

この役員は当時、三井住友銀行から出向中でした。2009年以降、投資銀行本部の副本部長として、上場企業の増資やM&Aに関与する立場にあり、これを利用した犯行でした。2013年に横浜地裁で有罪判決を受け、最高裁で確定しています。

SMBC日興が役員を控訴

一方でSMBC日興は、元役員の逮捕で、社会的信用を失ったとしてこの役員を訴えます。が、昨年2月、東京地裁は同社の請求を棄却していました。そして同社は控訴し、冒頭の逆転勝訴となったというわけです。社債引き受けの共同幹事を取り消される損害を受けたと認定されています。

同社は事件後に金融庁から業務改善命令を受けており、再発防止策も策定・提出しています。改善策の中には「証券業務未経験者をTOBのような法人関係情報を扱う部門の役員に直接登用しない」なんてのもあったようです。

さらに、「インサイダー取引に関与した社員に対して、会社に生じた損害の賠償を請求する」というのもあるらしいです。ほ~、ちゃんと再発防止策実行されてますねぇ。

ホーチキ(6745) 従業員の不正行為

火災報知機メーカーのホーチキは3/24、「お詫びとお知らせ 弊社元従業員による不正行為について」を公表しました。ただしこの公表は同社のホームページで掲載したのみで、TDnetでの開示は行っていません。

不正行為の概要

2015年から2019年にかけて、神奈川県でこの従業員が担当した消防用設備等の設置工事(5物件、8工事)において、消防当局に提出すべき設置届が提出されず、消防検査が未受験のままにされていたそうです(うち1物件1工事は着工届も未提出)。

また、これらのうち2物件2工事において、同従業員は検収を行うため、印影を複製するなどして消防当局受付済みとした設置届の控えを作成し、顧客に提出していたとのこと。ただし、5物件とも定期的に行われる法令点検で設備の正常動作が確認されているとのこと。

消防検査を受けるのを回避するために不正行為を?その後の法令点検で正常なんだったら、消防検査も怖くないだろうに、、、。と、思うのですが。消防検査を受けるには時間がかかるので設置工事完了を急ぐために不正を?

公表されている「お詫びとお知らせ」ではその辺りが全く分かりません。で、従業員は既に懲戒解雇されています。例によってトカゲの尻尾切りです。

業績予想の上方修正

消防検査がどれほど重要なもので、それをすっ飛ばした従業員の行為の目的、原因は何だったのか。全然伝わってこない。とにかく雑な開示です。読んでいて従業員の悪質さよりも、この不祥事発生に関するホーチキの対応のまずさばかりが目立ってしまいます。

ホームページで「お詫びとお知らせ」をこっそり掲載した翌日の3/25、TDnetで「連結業績予想の修正に関するお知らせ」を開示しているんですね。連結業績予想の上方修正という誇らしいメッセージを汚したくなかったのか、、、と考えてしまいます。

京三製作所(6742) 2カ所同時火災 (その3)

京三製作所は3/26、「特別損失の計上および通期業績予想の修正に関するお知らせ」を公表しました。今年1/14に同社本社工場で発生した火災による損害を見積り、2021年3月期決算において、特別損失約140億円を計上する見込みだそうです。

2/26 通期業績予想

ここまでの同社の開示を押さえておきます。2/26には通期の業績予想および期末配当予想の修正について公表しています。が、今回の火災による影響を現段階において合理的に算定することが困難だとして、いずれも「未定」としていました。

3/9 第5報

3/9には、「当社本社工場における火災について(第5報)」が公表されています。当該工場周辺への影響について情報更新ですね。工場周辺の大気の状況を調査した結果、火災発生から1週間後までのすべての日において、環境基準を満たしていることが確認できたそうです。

3/26 特別損失計上 通期業績予想

そして、今回の開示です。建物、生産設備、製品、仕掛品等の一部を損傷しており、これらの損害を見積もって特別損失として140億円を計上。当期純利益は▲160億円となっています。

火災により信号システム事業の製品が損傷し、予定していた出荷が翌期以降に繰り延べとなり、売上高、営業利益、経常利益が大幅に減少したためとしています。前期660億円の売上高が530億円まで減少してますからね。期末配当予想については、引き続き「未定」としています。

「当社設備に起因する出火ではありませんでした」としたまま、出火原因についてはまだ新たな情報が出てきません。警察当局はしっかり捜査してくださいよ。