日本瓦斯(ニチガス) LPガスのプラットフォーマー

ニチガスは11/2、「2021年3月期の資本政策に関しまして」という適時開示をしていました。今期配当を55円増配して125円とすること、35億円の自己株式を取得すること、既に取得している自己株式157万株を消却すること。を決議したというお知らせでした。

ニチガスのDX

ニチガスはLPガス販売大手。関東一円で172万件を超える顧客にエネルギーを供給している会社です。同時に開示されている第2四半期決算短信をみても、業績は極めて好調です。クリーンエネルギーとして注目されるLPガスですが、同社で目を引くのは注力しているDXです。

20年度だけで100億円超をDXに投じて、ガスボンベの新たな配送システムを構築しているとのこと。配送するボンベにはICタグを装着し、顧客宅には無線通信機器を設置。これにより、ガスの使用量をリアルタイムにデータとして取得。

新システムでこのデータを分析することで、ボンベの交換タイミングを把握するほか、AIが配送員に対して最適な配送ルートを提示するようです。このシステムを全国に1万8000社あるというLPガス会社に外販し、同社は業界プラットフォーマーになるというシナリオです。

ガスの使用データ

配送の効率化にとどまらず、プラットフォーム上のガス会社間での会社の枠を超えた配送員の融通やボンベの共同配送なども可能になっていきます。そしてさらに、同社が集めるガスの使用データは、在宅の有無や料理の時間帯など、利用者の生活実態を把握できるとのこと。

無人検針による検針数値をデータとして収集。このビッグデータを活かして、ニチガスは今後ガス小売業者や顧客に対してどういったサービスを提供していくのでしょう。エネルギーインフラ業者とは思えない、伸びしろを感じさせる企業ですね。

ニチガス株式は昨日の終値が4,975円。配当利回りも2.5%あります。5000円割れであれば、投資対象としても面白そうです。

株式会社アマナ(amana) 架空売上 特別調査委員会を設置

株式会社アマナは11/4、同社の連結子会社において不適切な会計処理が行われていたことが判明したとして、特別調査委員会を設置して調査を開始することを公表しました。2020年12月期第3四半期の決算作業の過程で見付かったようです。

アマナデザイン

架空売上が行われていたのは連結子会社のアマナデザインという会社。ただし、今年7月にアマナ本体に吸収合併され、解散しています。同社の役職者による2019年度売上高の架空計上があったとのこと。今のところ判明しているのは1件、3,500万円だそうです。

また、この架空売上の調査の過程で、同じ役職者による売上高及び外注原価の期間帰属の誤りも見付かっているようです。

2018年にも

今のところ分かっていることは以上なんですが、このアマナ、2018年にも社内調査委員会を設置する騒ぎを起こしてますね。この時の舞台は中国上海の子会社です。発生したのは不適切な会計処理ですね。

一部の従業員と合意の上で、「給与の一部を従業員が個人で立て替えた会社費用の精算の名目」で支給することによって、従業員個人の納税額を少なくしていた。とか、フリーランスへの役務報酬の支払いを証憑なしでかつ、源泉徴収せずに支払っていた、というものです。

amana

全然知らない会社でしたが、アマナは広告ビジュアル制作業界では最大手だとか。名前の由来は2500年前の日本の古代の言葉で「エネルギーの概念」を意味しているんだそうです。

二度あることは三度ある、、、なんていいます。ネットワンシステムズはまさにその流れをいってます。アマナも今回の事案で二度目。三度目が起きないよう徹底した調査を行っていただきたいものです。

前田建設 前田道路のTOBを振り返る

コロナの影響で資金調達に走る企業が増えています。先週末にもJALの公募増資による1680億円の調達の話題がありました。このニュースを見てある出来事を思い出しました。今年春の出来事、前田建設による前田道路への敵対的TOBのお話です。

何とも残念な

このTOBに関しては下に出ている関連記事をお読みいただくとして、なぜこの件を思い出したかというと、なんであのタイミングで特別配当を出し、内部留保を535億円も吐き出してしまったんだっけ、、、という疑問が湧いたからなんです。

前田道路が採った捨て身の焦土作戦だとか、戦術の問題はさておき、新型コロナの影響で今では上場企業の多くが運転資金の確保に走り回っているわけです。なんとも残念なタイミングだったんだなぁ、と。

前田建設によるTOBが成立したのは3月12日でした。その日の夜中、米国ニューヨークではダウ工業株平均がブラックマンデー以来の急落に襲われます。前日比2,352ドル安の21,200ドル。下げ幅では史上最大の下げでした。翌日東京市場も一時1,800円を超える下げ。

コロナショックを読み違え

TOBを決めた当時、コロナショックで経済がここまで冷え込んでしまい、企業が生き残るために一番重要なのは「キャッシュ」という時代が来るとは、両社ともに読めてなかったでしょうね。

先日、三洋化成と日本触媒も経営統合中止を発表していました。こちらは円満に進んでいた話ではありますが、やはりコロナの影響を中止の原因としてあげていました。前田建設と前田道路の件も、あと1ヶ月、2か月、タイミングが遅かったらどうなってたでしょう。

前田道路株式、TOBで取得された価格は3,950円。11月6日終値は1,816円です。キャッシュは大量に流出するわ、取得した株は半値以下に落ち込むわ。ん~、何とも残念な結果です。

SBIの地銀連合構想 野村證券と大和証券

ちょっと古い話題ですが、10/24、SBIホールディングスが群馬県を地盤とする東和銀行と資本提携することが日経で伝えられました。SBIが進める地銀連合構想で5行目の出資です。その翌営業日の10/26、金融審議会での銀行・証券の垣根問題に関する議論が日経で紹介されていました。

ファイアウォール(FW)規制の緩和

金融審議会市場制度WGで議論されているのは、銀行と証券が顧客情報を共有することを制限するルールの緩和について。この日紹介されていたのはM&Aを例にした法人顧客のケースでしたが、個人についても概ね同じような展開で、野村、大和が緩和反対。メガバンク等が賛成という構図。

この日のニュースでも海外の顧客だけを規制の対象外とする、という玉虫色の結論。野村證券を筆頭に、大和証券など6社が入る「資本市場の健全な発展を考える会」というのがあるんですね。銀行が証券の世界になだれ込む、、というか、銀行系証券が銀行の顧客を囲い込むことに対して抵抗を続けているわけです。

SBIの地銀連合構想

上位の銀行と上位の証券がFW規制の緩和でもめているところ、スルスルと抜け出してきているのがSBIですね。菅首相や金融庁とも、地銀再編という目的が一致していることもあり、地銀連合構想、ことのほか順調に進んでいます。

SBIにとっては、地銀が抱える地域の重要顧客へのアクセス権が得られるという大きなメリットがあります。この後も着実に銀行顧客を囲い込んでいくでしょう。

「選択」11月号では、SBIが紹介して地銀に融資させているとして、THEグローバル社に対する融資の危険性に触れていましたが、まぁそれくらいのことはやるでしょう。北尾氏は生き馬の目を抜くと言われていたころの株屋の、数少ない生き残りですから。

金融審における野村、大和の記事とSBIの日経記事。ほぼ同時に出てきた記事なんですが、両陣営の勢いの差を感じさせられる記事でした。

大戸屋ホールディングス 臨時株主総会を経て経営陣刷新

11/4、臨時株主総会で、コロワイドが提案していた大戸屋HDの社長など取締役10人の解任と、創業家出身の三森氏を含む7人の取締役の選任を求める2議案が可決されました。同日、総会後の取締役会でコロワイドの蔵人賢樹専務が新社長に就任しています。

コロワイド

新社長はコロワイドの会長の長男だそうです。「くろうど」と読むんですね。なんか会社名のコロワイドと似てるなぁ、なんて思いながら同社HPを見ると、全然違いました。COLOWIDEは「CO-勇気(Courage) 、LO-愛(Love)、WI-知恵(Wisdom) 、DE-決断(Decision)」の組み合わせだそうです。

敵対的TOBといわれてきましたが、実際はどうだったんでしょう。いずれにしてもかなり強引にTOBまで持っていきましたし、大戸屋の従業員たちはどう感じているのか。コロナの影響もあって、従業員の退職状況などは気になるところですね。

セントラルキッチン方式を導入

セントラルキッチンとは、大量の食材を集中的に調理する大規模施設のことですね。各店舗では調理の仕上げだけで済み、厨房施設が要らず人員も節約できるので、コストダウンが図れます。大量に食材を仕入れるため、仕入れ値を安く抑えられたり、各店舗での味のばらつきを防止できたりといったメリットも。大戸屋にはこれが導入されます。

値上げで客離れを招いたと言われる大戸屋には良い手法かもしれませんが、従来の大戸屋の味にこだわるといったイメージを損ないかねないのも事実。新生大戸屋は再生できるのでしょうか。

一人だけ生き残った役員

取締役の解任議案は当初11名だったのが途中で10名に変更されました。で、1名だけは生き残ったわけです。この方、大学生時代から大戸屋でアルバイト、そのまま就職して事業会社の方の大戸屋の社長にまでなった方ですね。今年3月に退任されてホールディングスの取締役になられてます。いろいろある方のようですが、再生のキーマンかもしれません。