昨年1月、金融庁は監督指針を改正し、銀行による人材紹介業を解禁しました。「その他の付随業務等の取扱い」という項目の改正です。その他の付随業務というのも皮肉なもので、実はこの付随業務で何とか地域金融機関の生き残りをという施策なわけです。
ちなみに、その他付随業務として、記されている業務は、原文のまま引用すると、「銀行が取引先企業に対して行うコンサルティング業務、ビジネスマッチング業務、人材紹介業務、M&Aに関する業務、事務受託業務」という感じで、5つの業務が併記されています。人材紹介業務を含めて、すべての業務が現在の苦境を脱するために重要な業務のようです。
続けて、「なお、実施に当たっては、優越的地位の濫用として独占禁止法上問題となる行為の発生防止等、法令等の厳正な遵守に向けた態勢整備が行われているかについて留意する」よう求めています。そう、優越的地位の濫用が懸念される業務であるからこそ、従来認めてこなかったわけです。
当時メガバンクの人員削減のニュースなども流れていたものですから、kuniは「この改正で銀行員の再就職支援が可能にしたのか」などと考えてしまったものです。
根付くか 地銀の人材紹介事業
週刊金融財政事情2/25号では、このタイトルで地銀の人材紹介業務の特集をやっていました。人材紹介業務の持つ可能性についてレポートされており、要点をまとめると次のような感じ。
① 地域の持続可能性を高め、事業承継の問題を解決
② 首都圏人材を地方に還流させ、地方の成長を促進
③ 人材紹介業務が、地域総合サービス業の契機に
紹介手数料は紹介した人材の年収の3割程度と言いますから、年収600万円の人材を1件紹介しても、150万円程度。これで銀行の収益が回復できるとは到底思えませんが、人材を紹介することで顧客に非常に喜んでもらい、本当の意味で顧客の懐に飛び込むことができる、そうです。
たしかに、このままだと、地方の事業は後継者がなく、事業が成り立たなくなります。つまり、銀行の顧客が確実に減少していくということです。その減少を食い止めるだけでも意味のあることですし、地域金融機関であるがこそ、顧客の内情にまで通じているという強みもあります。
過疎化が進む地方に首都圏の人材が還流し、事業承継の問題を解決し、新たな活力も与えることができる。こうしたまさに地域密着型のコンサルティング業務の延長線上に、地域総合サービス業という地銀の未来があるというお話でした。ちょっと端折りすぎですね。20ページにわたる特集ですので、地銀関係者の皆さんは必読かと。