日産自動車 カルロス・ゴーン会長逮捕

日産自動車のカルロス・ゴーン会長が逮捕されました。羽田空港に降り立ったところを逮捕されたようですね。世界を驚かせるニュースが日本発で・・・。しかしまた何で?と思いませんか。報酬を過少に申告したとか、オランダに投資した高級住宅を無償で使用していたとか。

内部通報から司法取引へ

以前の記事でも紹介したように、内部通報による発見と、司法取引を利用した企業としてのリスクマネジメント戦略を見事にやってのけたという感じですね。まさにこれからのガバナンスや企業法務のお手本になる事件と言えそうです。あっ、もちろん司法取引については、まだ実際に確認されているわけではありませんし、法人としての日産自動車の処罰がどうなるか、現時点では不明です。

日本版司法取引が行われたということであれば、2例目ということになりますか。第1号は三菱日立パワーシステムズの不正競争防止法違反の事件だと言われています。内部通報により社内にある犯罪を一早く発見し、当局の捜査に協力する見返りに企業としてのレピュテーショナルリスクを最小化する。この事例では法人としては立件されなかったと思います。

フランス政府も交えた事件の背景・真相

ルノーの大株主であるフランス政府、特にマクロン大統領との不仲説や、マクロン大統領がゴーン氏を介して、ルノーに日産自動車と三菱自動車を統合させ、手に入れようとしている。などといった話は以前から何度も出ていました。今回の事件に関しても、こうした背景も取りざたされるでしょうし、地検の動きとかを考えると国際政治も絡んでいそうな感じです。事件の真相をめぐって、マスコミは大はしゃぎでしょうね。

若い人にはピンと来ないかもしれませんが、20年ほど前に日産が傾いたとき、大手の自動車メーカーから見放され、ルノーの傘下に入るしかなかったんです。その時は誰もが、「何でルノーなんかに」と思ったもんです。それくらいまずいことになっていたんです。

そこからゴーン氏の手腕により業績がV字回復したのも事実で、日本では珍しいと言っていいほど、受け入れられてきた外国人経営者でした。しかし、ここまで回復してくると、日産自動車がルノーなんかの傘下にいること自体、不快に思う経営陣もいたはず。記者会見で出ていた質問「クーデターではないのか?」という面も確かに気になりますね。

これから次第に事件の真相がわかってくると思いますが、やっぱり一番おいしいのはマスコミですかね。間違いなく餅代は稼げるでしょう。

関電不動産がシェアハウス参入

先週末の日刊工業新聞の記事です。関西電力子会社の関電不動産開発は、シェアハウス運営の業界最大手であるオークハウスと提携し、シェアハウス事業に参入する。第1弾として兵庫県尼崎市内に関西最大級の約100室規模のシェアハウスを建設、2019年秋の開業を目指す。とのことです。

すっかり悪者になってしまったシェアハウス

記事のタイトルを見た時の違和感。このところのスルガ銀行やかぼちゃの馬車の影響で、シェアハウスそのものが悪のようなイメージが出来つつあったのかもしれません。しかし、シェアハウスやサブリース契約って、本当は非常に重宝がられているサービスなんですよね。スルガ銀行やスマートデイズといった一部の悪徳業者が、自身の利益追求のためにこのサービスを悪用しただけのことです。

様々な課題を解決できるサービスとして

一時は、深刻化する空き家問題を解決する切り札とも言われていました。空き家で街自体が衰退していくところ、シェアハウスに建て替えることで、若い人たちが住み着くとしたら、街の活性化にもつながるというもの。都市再開発といった面からも期待できそうです。

また、日本が抱える格差社会問題。貧困の問題にしても切り札にならないでしょうか。最も大きな課題とされている貧困層、シングルマザーと子供の世帯。この手の課題はもっぱら公的事業になると思いますが、シェアハウスと保育所(託児所)のセットで提供なんてのもありですよね。シェアハウスの中心に、リビングだけではなく保育所も完備みたいな。

子育てと仕事を両立させることが難しく、非正規労働を選択せざるを得ない女性がものすごく多いんだそうです。人手不足は日本企業にとってまさに定番の課題ですし、大企業が女性活躍の場を設ける(雇用を拡大する)ためのセット企画としても使えそうです。SDGsの原則にも、貧困やダイバーシティ、子供の教育なんてのがあります。発展途上国の貧困もそうかもしれないけど、日本の貧困問題も解決しないとね。

もう一つの貧困層である配偶者をなくした高齢者用のシェアハウス、なんてのも自治体中心に進められませんかね。これについては街を活性化させたり、企業に労働力を提供したりという付加価値が見つからないので、もうひとひねりアイデアが必要でしょうが。

まとめ

とまぁ、ド素人のkuniでもこれくらい思いつくわけですから、シェアハウスってまだまだ様々な活用方法がありそうですし、参入する意味はあるんだろうと思います。こんなことを考えさせてくれた関電不動産さんも、頑張ってください。

RIZAP守りの経営、松本氏に託す

11/16 日本経済新聞の記事です。RIZAPがおかしなことになってますね。今一つ納得感のないM&Aを続けていましたが、やはりこういうことになっちゃうんですね。負ののれんでPLをかさ上げする手法に関しても、一気にネガティブな評価になってきました。

ベンチャー企業にはありがち

ベンチャーと書いてちょっと違和感。最近聞かなくなりましたねベンチャーという言葉。もっぱらスタートアップ企業でしょうか、最近は。多少意味合いは違うんでしょうが、ここでは同列に扱います。いずれにしてもこの手の若い企業、一気に成長する企業にはありがちな展開です。これだけ成長するわけですから、経営者の推進力というか突破力というのは、すごいものがあると思います。ただ単にアイデアだけで会社が伸びるもんではありません。

ところが、推進力が強い企業にありがちなバランスの悪さ。つまり攻撃はすごいけど、守りが弱い。っていうか、そこまで考えていないんですね。守りをしっかり考えるタイプの人は、リスクを顧みずに突進するなんてことが苦手です。まさにRIZAPは攻めの経営の転換点にきてしまったということでしょう。

松本 晃 氏

今年6月に取締役として招聘された方で、伊藤忠でスタートし、ジョンソン・エンド・ジョンソンやカルビーの社長、会長を務められた方ですね。入社歴からすると既に御年70歳くらいでしょうか。この方のコメントがなかなかいけてます。「会社に入った時は、おもちゃ箱のような面白そうな会社だと思ったが、壊れたおもちゃもあった。修繕しないと今後困ることになる」。

「さらなる成長のため、ここは一度M&Aを凍結しよう」という松本氏の進言を瀬戸社長が受け入れ、拡大路線からの転換を発表するに至ったとのこと。「この決断は松本さんがいなかったらできなかった。100%感謝している」とも言ってるようです。

ここまで強気で突っ走ってきた社長が、自分の父親ほどの先輩経営者にバトンを渡すというのはどんな感じなんでしょうかね。ガバナンスを強化するにあたっての単なるキャスティングでしかないのか。やる気をなくして丸投げしてしまうのか。これほどの立場に上り詰めた人にしかわからない感覚です。

しかし、松本氏を招聘する前から、それなりにキャリアのある取締役や監査役揃っているように見えるんですが、これまでこうした守りの見直しについてアドバイスできる人っていなかったんでしょうかね。松本氏とほかの取締役等との関係性も含め、今後のRIZAP、壊れたおもちゃをどう片付けていくのか、注目です。

KYB 新たな不正

10/16に不正を初めて公表してから1か月。公表後、外部調査委員会を立ち上げ、調査をしてきたところ、「追加の調査、事実確認を行うべき事項があることが判明した」とのこと。

検査工程等における不適切行為(追加事象)

KYBが公表した文書を読むと、不適切行為(追加事象)という表現をしており、「オイルダンパー検査工程において、係数補正以外の不適切行為が行われていた疑いがあることが判明しました」と説明されています。ん~、これでは何のことやら良く分かりません。

これまでに判明していた不正については、「性能検査記録のデータの書き換え」と説明されてきたので、突然「係数補正」といわれてもですねぇ。これって同じ意味で使われてるんだろうなぁ。

あった、あった。一番最初の公表資料に添付されてるパワポの補足資料7ページのこれね。検査結果が定められた範囲に収まらなかった場合、前工程に戻して調整しなおすべきところ、係数を補正して範囲に収まるようデータの書き換えをしていたっていうことね。もう少し親切に説明しないとわからないと思いますよ。

内部通報制度で発覚

このところ発覚している企業の不正・不祥事の多くが外部告発であるのに対して、KYBの場合は、製造を担当する子会社における内部通報により事態を把握しているんですね。自ら発見して公表したというところについては、世間も一定の評価を与えているように思います。内部通報制度、やはり重要です。

不適合オイルダンパーを使用した建築物の公表

また、この不適合品等を使用した建築物の公表に関しても、顧客から同意を得られた案件だけを慎重に開示しています。なかなか全容が解明しないため、批判も浴びていますが、公表されることでその建物が危険だとして資産価値が下がったり、敬遠されることで集客力が落ちたりといったことにも、配慮しているんだと思います。しかし、この事実を知らされることなく成立した取引や賃貸の契約って、あとで問題になりそうですけどね。

寡占企業が失う生産能力はどう代替するのか

実はこの問題が一番重要だと思います。KYBはすべてのオイルダンパーを交換すると表明していますが、2~3年かかるとか。その間新しい製品の供給が途絶えてしまうことの影響は甚大です。国が後ろ盾となり、メガバンクにも支援させるなどしてKYBの生産能力の増強を図るとか、同業他社への協力を求める、といった政府主導の対応はできないもんですかね。まさに国としてのBCPが問われます。

日本航空の副操縦士が英国の警察当局に逮捕された件

基準値を大幅に超えるアルコールが検出され、日本航空の副操縦士が英国の警察当局に逮捕された問題に関連し、日航が新型の感知器を導入した昨年8月以降、19件で基準値を超えるアルコールを検知していたことが15日、同社への取材で分かった。このうち12便で乗員などの手配のために遅延が発生していたことが明らかになっている。という日経の記事です。

アルコールを検知して遅延が発生したのは、いずれも新型の感知器が配備された国内の空港ということで、旧型の感知器しかない海外について問題視しています。大勢の命を預かって空を飛ぶお仕事ですから、速やかに新型を導入してほしいものです。

航空業界は失敗から学習できる組織

航空業界は、このような失敗や課題を見つけて、それを改善していくという対応が非常に優れていると言われています。平成29年交通安全白書によると、平成28年の航空事故は13件発生しているものの、大型飛行機による航空事故は、乱気流等気象に起因するものを中心に年数件にとどまっているといいます。

また、特定本邦航空運送業者(客席数が100または最大離陸重量が5万キログラムを超える航空機を使用して航空運送事業を経営する本邦航空運送事業者)における乗客死亡事故は、昭和60年の日本航空123便の御巣鷹山墜落事故以降発生していないそうです。なんと30年以上乗客死亡事故なしです。

最近、日本の代表的な企業で不正・不祥事が後を絶ちません。それも長年にわたり行われてきたものが、ここへきて一気に噴き出している感じです。これに対して、航空業界は劇的に異なると言われてるんですね。「失敗の科学(失敗から学習する組織、学習できない組織)」:マシュー・サイド著 で詳しく書かれています。kuniの超お勧め本です。

その中で航空業界について、「失敗と誠実に向き合い、そこから学ぶことこそが業界の文化なのだ。彼らは失敗を「データの山」ととらえる」と、主に医療業界との対比で語っています。事故やミスをしっかり隠蔽させることなく開示させ、それを徹底的に分析し、分析結果を業界全体にフィードバックする仕組みが出来上がっているということです。

そのような業界であるにもかかわらず、なぜ海外には旧型の感知器なのか。今のところ詳しい情報はありませんが、今回の失敗を受けて、日本航空や航空業界がどのような対応をしていくのか。楽しみにしたいと思います。