IPO 承認取消し (株)テノ.ホールディングス

9/18 「当取引所は、(株)テノ.ホールディングスの新規上場を承認しましたが、同社の「コーポレート・ガバナンス及び内部管理体制の有効性」(有価証券上場規程第214条第1項第3号)について新たに確認すべき事項が生じましたので、当該承認を取り消すことといたしました。」(以上東証HPから引用)

かなり珍しい上場承認取消し

9/20上場予定で、9/18夕方の新規上場承認取消しとはまた随分キツいですねぇ。当取引所とあるのは東証ですが、東証マザーズに加えて福証QーBoardに上場予定だったようです。

取引所はサラっと他人事のように通知してますが、普通に考えると、証券会社での募集・売出しは既に終わって、顧客からも入金(払い込み)済みのはず。これシャレにならんでしょう。約定の取消しやら、払込金の返戻やら、証券会社は大変ですよ。

にも関わらずこのタイミングで

よほどのことがあったんだろうかとちょっと調べてみましたら、JPX(日本取引所グループ)のホームページに、「新規上場申請者の上場適格性に関する情報受付窓口」ってのがありました。

「このページは東京証券取引所に上場申請を行っている会社に関する粉飾決算その他の上場適格性に重大な影響を及ぼす事項についての情報を、申請会社の役職員やその他の関係者の方から幅広くご提供いただくための受付窓口です」(以上引用)

これですかぁ。このタイミングでのちゃぶ台返し、これくらいしか考えられませんね。内部者からの通報で、目論見書で公表している情報に事実と異なるモノがある。みたいな感じですかね。

久し振りのコンビだ

主幹事証券は国内最大手証券さんで、相方は東証。この組み合わせ、今年2月、元本の96%が一晩で吹き飛んだ、例のVIXインバースETN以来のお騒がせ・珍事じゃないですか。どういう問題があったんでしょう。知りたいですね。公表されるのかな。前回と同じで、何もなかったことにしちゃうのかな。

ガバナンス 企業統治実務指針の改定案

9/19付け日本経済新聞の記事。経済産業省が進めている企業統治実務指針の改定案を紹介していました。まだ正式には公表されていませんが。

社外取締役らによる指名委員会を設置し、次の社長や最高経営責任者(CEO)をどう選ぶのか早い段階から計画をつくり、選考過程の議事録を文書で残すよう企業に求める。後継者に求める資質を明確にし、社内で透明な議論を進められるようにする。

この企業統治実務指針というのは、東京証券取引所と金融庁が運用を始めた、コーポレートガバナンス・コードの原則を経営に取り入れる際に、実務的にどんな対応が望ましいのか各論を示す内容で、金融庁なども交えて作成している、らしいです。

第9回コーポレート・ガバナンス・システム研究会

9/5に開催されたこの研究会での資料が開示されていたので、中身を覗いてみました。ガイドライン本編で5ページにわたり、社長・CEOの後継者計画について触れています。また、別紙4として後継者計画の策定・運用の視点なる20ページの資料も添付されています。

確かにコーポレートガバナンス・コードでも後継者計画の策定や後継者候補の育成について書いているんですが、企業統治実務指針の方は少しやり過ぎな感じですね。後継者の指名に客観性と透明性を、についてはその通りだと思いますが。

違和感ありあり

「基本的には、社長・CEOが就任したときから、次の社長・CEOの後継者計画に着手するべき」であるとか、「将来有望な人材を若手の段階(30代~40代)から早期に選抜し、随時入れ替えを行いながら、十分な時間をかけて育成」とか。まぁ、いろいろと大きなお世話って感じです。

社長に就任したときから次の社長のこと考えるって、これ現実的ですかね。30代とかからの選抜・育成、今でも一次選抜組みたいなのって多くの会社であると思うけど、これもねぇ。

この世代から選抜して入れ替えして、育成するって、多分人事部の仕事になるんですよね。今の大企業で一番機能してないのが人事部だと思うんですが、更に後継者育成とかやらせちゃうんですね。部分的に見れば最適なのかもしれませんが、全体最適ではないんですよね。役所の考えることはだいたいこのパターンです。

書き物としては素晴らしいし、おっしゃるとおりって内容なんですが。ステークホルダーのために、もっと言うと物言う株主のために、ここまでやらなきゃならないんでしょうか。というのが第一印象でした。

日本の企業には副社長、専務、常務っていう取締役がいるわけで、後継者の順位も常に意識されていると思うんですが、ここまでやりますか。イーロン・マスクの気持ちが分かるような気がします。

ESG投資

ESG投資とは、従来の財務データによる分析に加え、環境(E)、社会(S)、ガバナンス(G)の観点から投資対象を評価しようというものです。今回はこの手法についてもう少し詳しく見ていきます。

そもそもの前提

「社会や環境を意識した投資は、同時に財務リターンも高く、投資リスクも小さい」という大前提があります(kuniは前者について、やや疑問視してますが)。社会や環境を意識した経営戦略は、企業利益や企業価値向上に繋がると言われています。

国連のPRI(責任投資原則)

そこに国連のPRI(責任投資原則)が導入され、世界中の機関投資家がこれに自主的に署名し参加したわけです。その6つの原則を見てみましょう。

  1. 私たちは投資分析と意志決定のプロセスにESG課題を組み込みます
  2. 私たちは活動的な所有者となり、所有方針と所有習慣にESG課題を組み入れます
  3. 私たちは、投資対象の主体に対してESG課題について適切な開示を求めます
  4. 私たちは、資産運用業界において本原則が受け入れられ、実行に移されるように働きかけを行います
  5. 私たちは、本原則を実行する際の効果を高めるために、協同します
  6. 私たちは、本原則の実行に関する活動状況や進捗状況に関して報告します

ほぼ世界中の機関投資家たちがこんなことになってるのです。新興宗教の教義みたいですが、かなりのインパクトがありそうです。

ESG投資の種類

では、具体的にどうやって投資対象を決定したりするのか。GSIAという機関によると、7つの投資の種類があるそうです。

  1. ネガティブ・スクリーニング
  2. 国際規範スクリーニング
  3. ポジティブ・スクリーニング
  4. サスティナビリティ・テーマ投資
  5. インパクト・コミュニティ投資
  6. ESGインテグレーション
  7. エンゲージメント/議決権行使

ネガティブ・スクリーニングというのは、武器やたばこ、原子力、ポルノ、ギャンブル、化石燃料といった宗教的倫理観に反するものや、環境破壊に繋がるような業種を投資対象から除外するという方法です。最初から投資対象から除外されるというのはかなり厳しいです。

逆にポジティブ・スクリーニングというのは、ESGに優れた銘柄のみ選抜して投資対象とする手法です。このようにいろいろな角度からESGに照らして企業を分析し、投資対象を選んでいき、7のように、株主となった後には、物言う株主として議決権を行使していくんですから、投資対象となる企業も他人事ではいられません。

当然、企業としてもESGを意識し、それの実現に向けて、具体的なアクションを網羅しているSDGsを進めて行かざるを得ません。

個人投資家にとってのESG

どうでしょう。株式投資におけるESGの重さについて、実感できたでしょうか。今なお折に触れ報道される人権侵害や、各種ハラスメント等の事件。たった一つの事件であったとしても、機関投資家の投資対象や保有対象から除外するアクションに繋がりかねないということです。

逆に、ESGに関して、大きく貢献できる事業分野を見出していく企業にとっては、猛烈な追い風になります。我々一般投資家もこの目線は持っておかなければならないということですね。

ESGとSDGsの関係

ESGって何?

ESGとは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字を取ったもので、企業の長期的な成長のためには、ESGが示す3つの観点が必要だという考え方です。

ESGの観点は、上場企業に投資する機関投資家の間で急速に広がってきています。銘柄選定において、従来のように業績等の財務情報だけを重視するだけでなく、ESGに対する企業の取り組みも評価するスタイルを「ESG投資」と呼んでいます。

ESG投資は国連責任投資原則(PRI)により裏付けられており、世界1,500機関以上のアセットオーナーや運用会社などが署名しています。世界最大の年金基金である日本の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)も2015年9月に署名をしました。

つまり、国連が主導する形で世界の運用のプロたちがPRIに賛同し、ESG投資を積極的に推進しているということです。今この記事を読んでくださる方には、一旦「ESG」は「ESG投資」として理解しておきましょう。正確ではありませんが、あとで説明する「SDGs」との関係が理解しやすいと思います。

SDGsって何?

SDGsとは、「Sustainable Development Goals」(持続可能な開発目標)の略です。これも国連を中心として生まれた基準で、ちなみに読みは「エスディージーズ」が正解です。SDGsでは17の目標が掲げられており、それらを達成するための具体的な169のターゲット(目標を具体化した項目)が設けられています。

簡単に言うと、世界を良くして行くためにこの17項目を共有し、各国で取り組んでいくことにしたわけです。そのため政府はもちろん、これに取り組んでいくわけですが、民間企業にも積極的な取り組みが要求されています。投資との兼ね合いでもう少し明確に言うと、上場企業はこの17の目標に向けて取り組まなければならないわけです。

「SDGs」は上場企業が取り組んでいかなければならない、社会課題の解決に向けた世界共通の目標と言えるでしょう。

ESGとSDGsの関係

以上をまとめると、

企業はSDGsに積極的に取り組むことにより社会の課題を解決していき、世界の機関投資家はそうした企業を見極め、ESG投資により積極的に出資して支援していく。

という関係性で理解し、記憶しておくのが良いかと思います。次回はこのESC投資で投資の世界がどんな風に影響を受けるのか、について書いてみたいと思います。

金融庁 NISA

金融庁ついででもう一つ。金融庁のお墨付きのNISA、投資にかかるコストが低いことでお勧めのETFと並んで、一押しですね。しかし、ちょっと警鐘を鳴らしておきたいのが積み立てNISAです。実はETFにも金融庁の大失態があったんですが、これはまた後日書く予定です。

忌まわしい記憶しかない制度商品

積み立てNISAは毎月同額を同一銘柄に投資していく手法と、非課税が売り物で、それなりに残高は増加しているようです。ただ、取り扱う金融機関にとっては収益性も低く、真剣に取り組んでいる大手金融機関は皆無と思われます。

金融機関では、この手のお上主導で導入される商品のことを制度商品と呼びます。古くは株累投やミニ株など、毎月積み立てで買い付けていく商品がありましたが、これには証券会社は手を焼きました。もの凄いコストが掛かってしまう割りに収益はほとんどなし。やっとこの制度商品を廃止できたと思ったらNISAが登場したわけです。

積み立てNISAは儲かるのか

毎月同額を買い付けるというのは、投資における買いのタイミングを分散させ、平均的な買い付け単価にしてくれるというメリットがあります。また、積み立てNISAの場合は買い付け時手数料がかからない(かなり安い)、信託報酬も非常に少なくてすむというメリットもあります。金融庁もそこを最大限アピールしていますね。

しかし、一方で認識しておかなければならないのは、20年にわたる投資期間には非常に高いリスクがあるということです。戦後の高度成長期やバブルがはじけた以降のマーケットは基本的に長期に投資していれば勝つことができました。

実はkuniが業界に入った頃に始めた持ち株会(これも毎月同額を買い付けていく商品です)は、30年たっても報われませんでした。要するにその長期間、それなりに成長してくれる投資対象を選ばなければ意味がないわけです。今の日本、全産業が20年間確実に成長していくとは思えません。投資信託の銘柄選定はとても難しいと思います。

加えて、現在の株価水準は相当高いところにありますし、日銀が一生懸命ETFを買い付けることで、株式市場は下駄を履かされている状態です。いずれ何かしらの形でバブルがはじけ、長期投資のメリットを帳消しにしてしまうでしょう。

マーケットが一旦壊れてからのスタート

日銀のETF買い付けやNISA、積み立てNISAの積極推奨により、現在は相応に高い水準と考えてください。20年間というリスクを抱え続けるよりは、最初の5年間を捨てたつもりで、暴落場面を待って投資を開始するのがよろしいかと。

実体経済の50倍もあると言われる金融経済。まさに、犬の尻尾が胴体を振り回すのが当たり前になっている世の中ですから、バブルは必ず来ます。必ず大きく下げる場面があります。長期投資はそこからスタートでも遅くはないと思います。もちろん、自己責任ですよ。