昔から人気のあったコラムですが、この日の大機小機はいただけません。
架空預金証書の記憶
スルガ銀行の不正融資事件が、1991年日本興業銀行が大阪の料亭の女将に2000億円超の資金を貸し付けた事件に酷似しているかのような書きぶりになっています。女将とは、尾上 縫(おのうえ ぬい)のことですね。55歳以上の金融関係者であれば知らない人は居ないと思います。分からない人は聞いてみてください。
たしかに架空預金証書に基づく巨額の融資という点は似ているかもしれませんが、この預金証書を偽造したのは当時の東洋信用金庫の支店長であり、日本興業銀行ではなかったと記憶してます。偽造であることは承知の上で融資していたという指摘なんでしょうかね。
リスクを取ることと、たがが外れてモラルがゆがむこととの境界はあいまい
「リスクを取ることと、たがが外れてモラルがゆがむこととの境界はあいまいだ。そして、モラルのゆがみがバブルを生むことを我々は経験的に知っている。デフレを止め、雇用情勢を改善したと称賛されるアベノミクスのもう一つの断面である。(原文そのまま引用)」
企業経営において「リスクを取ること」と「モラルがゆがむ」ことはまったく別のものです。「リスクを取ること」と「リスク感覚が麻痺すること」の境界線は確かにあいまいかもしれません。しかし、これらにより行われた行為と「法令・諸規則に違反する」行為は、明確に区別されるべきであり、法令に違反する行為により引き起こされてしまった結果に対する経営責任の重さは、別の次元で検討されるべきです。
要するにここで書かれている境界線は明確なのです。よって、「モラルのゆがみがバブルを生む」のではなく、「リスク感覚の麻痺がバブルを生む」のであり、「バブルの中で非常に卑劣な、法令に違反してでも儲けようとする輩が現れる」のです。それがスルガ銀行なんです。