以前、金融審議会の資料から、金融庁が現在検討している金商法の改正案のうちの一つとして、契約締結前交付書面を紹介しました。今回はもう少し詳しく書いてみます。
金融審議会 市場ワーキンググループ資料
資料では「契約締結前交付書面について、顧客に対して重要情報を提供するという趣旨を損なうことなく、顧客利便や環境への配慮等の観点から交付の合理化・効率化を図るとともに、複雑な商品等については顧客本位の説明等が確保されるようにする」
「併せて、本書面や広告等の記載事項や方法を工夫し、より認識・理解しやすいものにするなど、情報技術の進展等に対応した顧客への情報提供のあり方について、市場関係者と連携しながら検討していく」と書かれています。
顧客利便や環境への配慮等の観点
この表現の中で笑えるのが「環境への配慮等」というところ。何のことやら意味不明だと思います。おそらくこれは証券会社が全顧客に一斉送付する契約締結前交付書面集のことを指していると思われます。数種類の商品の契約締結前交付書面を冊子にし、その他リーフレット等も一緒に封入して、年に1回送るのが通常で、ほぼすべての総合証券会社が行っています。
冊子は20ページから30ページにもなり、家族で口座開設していたらその家族分が自宅宛てに送られてきます。これを顧客はほとんど読むことなくそのまま廃棄している。つまり、環境に優しくない。ということをやっと理解したということなんですね。使用する紙の量は半端ないです。総合証券会社ですと顧客数は数十万件以上。大手証券だと100万件を超え、用紙の手当て、印刷、郵送の費用を合計すると、数億円を浪費するのです。
合理化・効率化の内容
金融庁はこの1年に1回一斉送付することで交付したとする現行の方式を認めていますので、これを環境に配慮して合理化、効率化するとすれば、以下のような改正ではないかと考えます。
- ネット上での閲覧を希望する顧客には、契約締結前交付書面の交付を不要とする
- 口座開設時に交付していれば、その後は重要情報の変更があった場合のみ交付すればよい
- 書面に記載すべき項目を大幅に見直し、簡略化する。その代わりに顧客が要求する場合は詳細版を別途交付できる体制を作らせる
- 顧客にとって重要なリスク等の情報を、証券会社自身が商品ガイドのような形で提供することで可とする。
kuniのおすすめ
kuniのおすすめは4番です。顧客本位の業務運営(自分たちで考えて各社が実行します)をあれだけ求めてきているわけです。投信のラインアップや保有期間など、各社の取り組みが比較できるような枠組みも出来上がりました。契約締結前交付書面に関しても、最低限のリスク項目だけを指定し、その表現やその他の事項をどこまで取り入れて商品ガイドにするかを証券会社に考えさせればいいと思います。そのうえで、各社の取り組みとして比較可能にすればいいでしょう。
商品ガイドはネット上で閲覧を可能とさせ1番や2番と組み合わせるのもありですね。どうでしょうこんなんで。書ききれなかったので続きは(その2)で。