厚生労働省 毎月勤労統計 失敗の隠蔽

勤労統計の不適切調査

厚労省が所管する、賃金や労働時間の動向を示す毎月勤労統計が世間を騒がせています。本来とるべき方法とは違う方法で調査(全量調査するべきところを抽出調査していた)を継続していたというもので、なんとその期間は15年にも及んでいたようです。

加えて、この不適切な方法で調査を続けていた間、当該不適切な方法で調査してもよいという文章が、当時の「調査方法の手引き(マニュアルみたいなもの)」に堂々と書かれていたとか。つまり、楽な方法で不適切に調査しただけでなく、マニュアルの方も書き換えて、不適切ではないように偽装工作までしていたということです。

厚労省は昨年裁量労働に関するデータでも不適切な扱いがあり、メディから酷く叩かれていた時期がありました。問題ある統計が見つかって、咎められた。普通は他のデータは大丈夫なのか?と、横展開して調査を実施し、同様のミスや不正がないことを全力で確認するはず。厚労省の場合はそれができなかっただけでなく、勤労統計においては隠蔽工作までやっていたわけです。

膿を出し切ることの重要性

これまで当ブログで取り上げてきた上場企業の不正・不祥事においても、「あの時に十分調査して一掃しておいたら、ここまで酷い状況にはならなかったのに」と考えさせられる事例が少なくありませんでした。足もとで判明した事態を解決するだけでなく、他にも類似した行為が行われていないか、膿を出し切ることが重要です。

出し切ると言うと簡単なようですが、見えていないものを探す訳ですから、膨大な労力と時間を要します。それでも全社員が経営層の持つ危機感を共有して,その作業に当たることだけでも非常に有意義だと思います。これをやらなければ、従業員たちは経営層のその場限りの危機感を見切ってしまうことになるのです。

失敗の共有

優れた企業は失敗を見付けたら、それをすぐに組織で共有し、修正します。もちろん組織として発見できるように、その方法についても態勢(発見統制)を整備し、「失敗は咎められることなく会社に役立てられる」という企業風土も浸透させています。

前にも一度書いたことがありますが、マシュー・サイド著 「失敗の科学」という書籍がこの辺りに詳しいです。コンプライアンス業務に就いてらっしゃる読者には、是非読んでおいていただきたい一冊です。