金融庁長官 遠藤俊英氏 

金融行政のあり方を大きく変化させた森長官のあとを引き継ぎ、7月、遠藤俊英氏が長官に就任しました。「金融財政事情」にインタビュー記事がありましたので、感想やら何やら。

前任の森信親長官が残したもの

史上最強といわれ、これほどまでに金融機関が振り回された長官は過去に居なかったと思われます。地銀の再編に注力し、フィデューシャリー・デューティー(顧客本位の業務運営)を金融機関に求め続けました。金融機関との対話にも力を入れ、従来の金融機関に対する検査を、大きく変えたのも彼の考え方によるものと言われます。

しかしながら、長期政権といわれた3年間、何もかも成し遂げることなく、後任に残したままの退任となりました。中でも「仮想通過」と「スルガ銀行」に対する甘い読みは、後に大きな傷跡を残すことに。森長官自身が仮想通貨に対して相当柔軟な姿勢で対応したことや、スルガ銀行のビジネスモデルを「地銀のお手本」と称賛してきたことは有名な話です。

第10代長官 遠藤俊英氏

検査局長や監督局長を歴任し、金融行政に精通していると言われる遠藤氏。インタビュー記事では「金融庁では広範な行政テーマや課題を設定してきたが、」と前置きし、前長官が理想に燃えて拡げてしまったテーマや、失策により炎上させてしまった課題に対し、「具体的に実行していくステージ」と表現しています。

確かに気の毒ではあります。本人の言葉としても「(前長官時代に)金融行政のあり方を大きく見直した。様々な議論を重ねた結果、金融行政としてかなりウィングの広い枠組みとなっている」と説明しています。

「顧客本位の業務運営」、「金融機関に対するモニタリング」などについて答えているのですが、いずれも前長官時代に聞かされてきた話で、目新しいものはありません。唯一、この人が色を出せるとしたら、金融機関トップとの対話(記事のタイトルにもなってます)でしょうか。地域金融機関トップとの対話には、こちらもトップが出て行かないと、相手も真剣に議論する気にならないだろうと言ってます。

それでも踏み込みが甘いスルガ銀行

スルガ銀行の件については、「個人的には忸怩たる思いがある」と言ってますが、「現場に一番近い内部監査や経営陣が問題を十分把握していない段階で、監督当局である自分たちがそれを察知するのは難しい」という逃げ口上。

金融庁が作成した資料でも、スルガ銀行の収益性は他行を大きく引き離しており、違和感があったはず。少なくとも民間の金融関係者はそう思ってました。金融庁の方針の中に「ベストプラクティスの共有化」なんてワードが何度も踊ってましたし、そうしようと思ったらスルガ銀行のビジネスモデル調べるでしょ。長官が手放しで称賛しちゃったりする前に。その権限こそが金融庁が持つ金融機関への検査権限でしょ。

就任のタイミングの悪さには同情するものの、これからの金融庁もあまり期待できそうじゃないなぁ、って感じでした。